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10年ぶりの米利上げ:識者はこうみる
2015年12月17日 / 00:04 / 2年前

10年ぶりの米利上げ:識者はこうみる

[17日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は、16日まで開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標をゼロ━0.25%から0.25━0.50%に引き上げることを決めた。

利上げは約10年ぶり。米経済は2007━09年の金融危機よる打撃を概ね克服したとの認識を示した。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●米経済の霧晴れず、ドルの上値余地限られる

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

FOMCでの利上げ決定やイエレン議長の会見内容は総じて予想の通りということで、市場の安心感を誘い、株高・ドル高となった。

事前に関心を集めていたFOMC参加者による2016年末の政策金利見通しでは、予想中心値が1.375%と前回9月と変わらずだった。しかし、2017年、2018年末については下方修正しており、先行きについてFOMC参加者も確たる自信があるわけではないことが見て取れる。

インフレ目標2%のゴールに向けては、原油が下がり続ける環境で、その道筋が明らかではない。さらに、米雇用市場は構造的な変化を遂げているため、労働市場の完全復調をイメージするほどの改善は見込み難い。

海外の金融市場の反応は、米利上げが無事に実施されたことに対する安堵だろうが、米経済を覆う霧は依然晴れておらず、ドルについては今後、大幅な上値余地があるかどうか疑わしい。

年内のドル/円の上値メドは123.50円程度で、下値余地は120円付近まであるとみている。

●不透明感払しょく、ドル買われやすい

<外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也氏>

米連邦公開市場委員会(FOMC)後のドル/円のプライスアクションからは、あく抜け感が見て取れる。当局が利上げに踏み切り、先行きの見通しもはっきりと示したことで、不透明感が払しょくされた。年末にかけては日米金利差の拡大が意識され、ドルが買われやすい。

ただ、ここからは年末年始の休暇に入る投資家が増えてくる。手じまい売りも入ってきそうなので、一気にドルが上値を伸ばすのも難しそうだ。年内のドル/円は121─124円のレンジを想定している。

FOMCメンバーの金利予測の分布を示す「ドットチャート」は、来年4回の利上げを示唆している。市場の織り込みは2回か3回だったので、4回の利上げを織り込む過程で米国の長期金利も上昇しやすい。ドル/円は1月あたりに低迷するかもしれないが、2月に入り、3月のFOMCでの利上げ期待が出てくれば強含む展開になりそうだ。

●年4回の利上げペース、持続可能性に懸念も

<SMBC日興証券・金融財政アナリスト 末澤豪謙氏>

米連邦準備理事会(FRB)は、2016年に年4回のペースを想定して、利上げに踏み切った。しかし、その利上げペースは2004年利上げ局面(年8回)の半分。それも持続可能かどうかは、米国をはじめ海外経済の動向次第とみている。

海外経済に不透明要因も多い。FRBが金融引き締め方向、欧州中央銀行(ECB)と日銀が緩和方向で、各国金融政策の方向性が異なっている。中国をはじめとする新興国や欧州の経済に不安感もくすぶる。FRBによる利上げの影響が世界経済に波及して、最終的に米国経済に跳ね返ってくるリスクも否定できない。

前日の米株相場は大幅高で反応。FRBが年4回の利上げをできるほど米景気が回復しているとの見方が広がったのだろう。ドル高・円安を受けて、東京市場でも日経平均が続伸するだろう。日銀買い入れで需給が引き締まる円債市場は、金利が上がったとしても限定的ではないか。

●米金融政策に対する不透明感は薄れる

<第一生命経済研究所主任エコノミスト 藤代宏一氏>

やや予想外だったのはドットチャート(FOMC参加者によるFF金利誘導目標見通しの分布図)が、下方修正されず来年4回の利上げを貫いたことだ。労働市場が改善すればFRBは利上げをするというメッセージだろう。イエレンFRB議長の会見はタカ派的ではなかったが、数値にタカ派をうまく織り込ませたことになる。米金融政策に対する不透明感が薄れ、マーケットにはポジティブだ。結果的に緩やかなドル高/円安が進むとみている。株式市場にも追い風になる。あとは原油安をどうこなすかだが、豪ドル、鉄鉱石の市況を見る限り、徐々に原油離れの兆候もみられる。日経平均は来年3月ごろに2万0900円台の今年の高値を抜いてくるとみている。

●来夏に日経2万1500円も

<パインブリッジ・インベストメンツ 執行役員 前野達志氏>

基本的には2つのシナリオが考えられる。米金利の上昇でドル高/円安となり、日本株が米国株に比べアウトパフォームするシナリオが1つ。もう1つはシンボリックに1回は利上げしたものの、その後のペースが緩やかになることへの受け止めから、ドル安となり、日本株が米国株に比べ若干アンダーパフォームするケースだ。

日本株に対して好ましく、かつ可能性が高いのは後者とみている。米経済がそれほど強くはなくても、流動性相場が続き、リスク資産は選好されることとなる。そもそも日本株だけが上昇することは考えづらい。

原油安については実需で語ることができず、投機筋の動きが背景にあるのだろう。ただ1─2年でみれば、原油価格は40─50ドルの間で推移するとみている。今のレベルは低すぎる。世界のCPI(消費者物価)に及ぼす影響は一時的とみており、ハイイールド債やエネルギーセクターなどへのネガティブな影響がさらに出ることはメーンシナリオとしては考えていない。

日経平均は年末に2万円ぐらいに達するのではないか。来年夏ごろには2万1500円ぐらいまで上昇するとみている。グローバルでの流動性が下支えとなるほか、年明け以降は中国への極端な悲観論が徐々に払しょくされると想定している。

●ドル高が利上げ継続の重しに、初回軟着陸でも

<みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>

初回の利上げに関しては、事前のコミュニケーションに気を配った成果が出たといえ、イベント後の相場反応は落ち着いている。市場ではハト派・タカ派の双方の受け止めが出ており、これは声明文の内容やイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の会見が引き続き両論併記でバランスの取れたものだったことを意味しているだろう。

今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、今後の利上げに対するファインティングポーズを解除しなかった。このため2回目の利上げへの思惑から1─3月はドル高基調が続きやすい。この局面でドル/円は128円あたりまで上昇し、それがピークとなるのではないか。来年のレンジは115─128円を予想する。

しかし、各種米経済指標にはドル高の悪影響が散見され始めており、利上げの正当性には疑問符がつく。過去2年のドル高の要因は、対米での金融政策の格差に基づいていた。来年は経済指標を見ながらこれが持続するかどうかが焦点になるが、イエレン議長は、あくまでこれから経済が良くなり、物価が上昇することを前提としており、緩やかといえども追加的な利上げを見通している。こうした前提は、利上げ自体がドル高を招くことによって危ういものになるのではないかと考えている。

●当局者の将来金利予想は意外に高め

<LPLファイナンシャル(サンディエゴ)の債券ストラテジスト、アンソニー ・バレリ氏>

結果自体は予想通りだった。やや意外だったのは、(FOMC参加者がFF金利誘導目標の見通しを点の分布図で示す)ドットチャートが、想定ほどは低く改定されなかったことだ。市場ではFOMC前、2016年と17年の予想金利が25ベーシスポイント(bp)下方修正されるとみていたが、そうはならなかった。この点は若干タカ派的だ。

●米金利上昇余地は限定的

<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

 12月16日、米FRBはFOMCで、FF金利の誘導目標を0.25━0.50%に引き上げることを決めた。写真は利上げ発表直後のニューヨーク証券取引所で同日撮影(2015年 ロイター/Lucas Jackson)

フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標をゼロ━0.25%から0.25━0.50%に引き上げたことは予想通りだ。

声明文の期待インフレに関する記述の下方修正の流れから見て、利上げ路線の一時停止も十分にあり得る状況と受け止めている。

仮に米利上げを加速した場合にドル高が進み米景気・物価がどこまで耐えられるかが問題で、市場は遅かれ早かれ意識すると思う。

今後の相場展開に関しては、米株は不安定な上下動、米金利については上昇余地は限定的とみている。為替相場ではドルの上値は重いとみている。

●イベント通過で日経2万円へ=いちよしAM 秋野氏

<いちよしアセットマネジメント 執行役員 秋野充成氏>

米連邦公開市場委員会(FOMC)では想定通り25ベーシスポイントの利上げが決定された。イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の会見でもマーケット・フレンドリーな発言が多く、波乱なく通過したことで調整していた米国株が上昇。日経平均もリターン・リバーサルで2万円に向かう展開とみている。

ただ、それ以上の上昇は難しそうだ。FRBは2016年末までに100ベーシスポイント引き上げる見通しを示したが、世界経済が下向く中で巡航速度の利上げができるのか疑問が残る。足元では原油価格の下落や高利回り(ジャンク)債市場への懸念などが市場センチメントを押し下げており、本格的なリスクオンにはなりにくいだろう。

●健全な利上げ期待広がればドル高継続

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏>

政策金利見通しに変化はみられず、概ねサプライズはなかったといえる。米株価の動向がポイントだったが、これまで何度も避難訓練を重ねてきただけに、あく抜け感が出て上昇の反応となった。これをながめてドル/円もドル高/円安で反応した。

クリスマス利上げが勇み足だったか正しかったか、今後の経済指標で見極める展開になる。利上げの正当性は、ある程度、時間をかけないと評価できない。

ひとまず年明けの米雇用統計が重要になる。指標がしっかりした内容となり、利上げは正しい判断で「米経済が強いので利上げが可能になった」という「健全な利上げ期待」が広がるなら、ドル高基調は継続するだろう。

来年のドル・円は、2回目、3回目の利上げにかけて、ドル/円がオーバーシュート気味に推移すれば130円付近への上昇もあり得る。119.50─132.50円のレンジを予想している。

●保有債券の再投資で政策緩和継続

<シリコンバレー・バンク(カリフォルニア州サンタクララ)のシニア為替トレーダー、ピート・カラバトス氏>

金利正常化に向けた緩やかなプロセスになる。米連邦準備理事会(FRB)は保有する債券の元金と金利を再投資する。これはFRBがまだかなりの政策緩和を提供することを示している。

ドルについて全般的に強気な見方を維持する。米国が世界の他の国と比べてやや強い状況で、中銀の政策かい離が続く。

FRBはドルの強さを示唆している。ドル相場はインフレ抑制と原油価格の下落につながっている。インフレ率は最終的に2%に向けて上昇するだろう。

ドルは来年、対ユーロでパリティ(等価)を試す展開になる可能性があると考える。

●来年は四半期ごとに25bp利上げが基本シナリオ

<レイモンド・ジェームズ(フロリダ州)の首席エコノミスト、スコット・ブラウン氏>

今回の決定内容は、過去数カ月間言われ続けてきたことと変わっていない。すなわち、1)金融政策は当面、依然として緩和的、2)将来の政策行動は指標内容次第、3)経済状況は段階的利上げを正当化するような流れとなる見込み──だ。

FRBメンバーのいわゆるドット・プロット(今後の政策金利の推移を点で示したグラフ)にはある程度ばらつきがみられるものの、前回9月ほどではない。それによると、2016年は100ベーシスポイント(bp)の利上げが見込まれており、それぞれ3月、6月、9月、12月のFOMCで25ベーシスポイント(bp)ずつ利上げされる公算が大きい。想定外の状況になれば変更はあり得るが、これが基本シナリオと考えられる。

●異例に緩和的な引き締め局面に突入

<アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏>

米連邦準備理事会(FRB)は史上最も緩和的な引き締め局面に突入した。FRBは金利を「緩やか」な道筋にすることによって、市場を安心させることに尽力するだろう。これは通常の利上げサイクルとは異なり、異例に緩和的な引き締め政策となる。

●FRBが米経済に自信、不透明感後退を歓迎

<ITGの分析・セールス・トレーディング部門責任者、マイケル・マラル氏>

米連邦準備理事会(FRB)の来年の見通しについて極めて楽観している。FRBが経済に自信を示すことは、まさに市場が求めていたことだ。

FRBは来年実施することを説明しており、投資家は不透明感の後退を歓迎している。

●声明はハト派的、利上げペース緩やかとのメッセージ

<ジャネイ・モンゴメリの首席投資ストラテジスト、マーク・ルスチーニ氏>

声明には数回、段階的との表現が見受けられ、ややハト派的だったと感じた。FRBは投資家に対し、今後の利上げペースは急激なものにはならないとのメッセージを送ろうとしているようにみえる。

●リスクバブルの一部解消へ第1歩

<ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ニコロス・ベンディッティ氏>

2016年末には(フェデラルファンド金利)が基本的に1.40(%)となるだろう。短期的には、すべての債券ファンドの変動がやや大きくなる恐れもある。当初は若干の不安が生じる可能性もあるが、明日になれば日が昇り、快晴となるだろう。米金融業界では総じて過去数年間、債券トレーディング(規模)が相当圧縮されていた。

幅広い投資家が(投資)収入に依存している問題がある。過剰なリスクをとらないで、収入を獲得することは極めて困難だった。今回が、環境正常化につながり、これまで続けられた金利政策の結果、生まれたリスクバブルの一部を解消する第1歩となる。

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