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コラム:イスラム国との戦い、大企業も参加すべき理由
2016年8月16日 / 01:21 / 1年前

コラム:イスラム国との戦い、大企業も参加すべき理由

 8月11日、フランスは世界で最も多くの観光客が訪れる国だ。しかし、7月に過激派組織「イスラム国(IS)」に触発された攻撃がニースで発生したことを受けて、旅行関連の株式銘柄は大幅に下落した。写真はISの戦闘員。モスルで2014年6月撮影(2016年 ロイター)

[11日 ロイター] - フランスは世界で最も多くの観光客が訪れる国だ。しかし、7月に過激派組織「イスラム国(IS)」に触発された攻撃がニースで発生したことを受けて、旅行関連の株式銘柄は大幅に下落した。

この下落は短期的な不測の事態なのか。それとも、テロリズムの標的となった国々において、持続的な株価下落は「新常態(ニューノーマル)」となるのだろうか。

テロリズムの本質は変化してきている。2001年の米同時多発攻撃のような、かつて少人数の集団が仕組んだ「大々的な攻撃」は、今では、誰でも、どこでも発生可能な現象となってきている。

こうした傾向の実例を、われわれは、ニース以前にもパリやブリュッセル、ダッカ、イスタンブールなど、かつては標的になるとは想定していなかった場所で目にしている。

明らかに、テロリズムへの対応は、もはや警察や特殊部隊にのみ任せておくことができなくなっている。新たな地域が影響を受けているなかで、ビジネス界を筆頭とする、他のセクターを巻き込んだ社会全体での取り組みを講ずる必要がある。

一般的に株式相場は、たとえテロ攻撃があっても、すぐに反発する。ただその反発力は、総体としての株式市場と、短期的な相場にのみ当てはまる。観光や交通などの関連産業は、より深刻な影響を受ける可能性がある。バングラディシュの衣料産業やトルコの観光セクターがその最たる例だ。英シンクタンク、経済平和研究所の研究によると、2015年にテロ攻撃によって世界経済が被った損害額は、1135億ドル(約11兆5800億円)に上る。

2006年に公表されたある研究の試算によると、企業を標的にした攻撃の場合、長期にわたる各企業当たりの損失額は、時価総額ベースで4億0100万ドルに及ぶという。2013年の研究では、大きな貿易相手国が攻撃に見舞われてから11日間以内に、小規模国の株価指数が2.5%下落しているのが分かった。

攻撃が日常茶飯事になると、北アイルランド紛争中に同地域で見られた経済的損害のような長期的な傾向が生じるかもしれない。すでにわれわれが目にしたように、テロ攻撃の恐怖が政治に及ぼす間接的な影響として、欧州での国境封鎖といった事態を招くこともある。

文化摩擦も、商業上の影響を与えることがある。例えば、米オハイオ州で伝統的な衣装を着たアラブ首長国連邦(UAE)出身者が銃で脅され、UAEが米国にいる自国民に旅行警告を出す。それが両国でビジネスをする多国籍企業にとって、何を意味するかを考えてみてほしい。

ISに触発された攻撃は今後3年から5年以内に日常茶飯事となり得る。メリーランド大学の研究者によると、テロ攻撃の死者数は2000年時と比べて、10倍に増えた。さらに2011年以降、100カ国以上から集まった3万6500人超の外国人戦闘員が、ISといったジハーディスト集団の戦いに合流するために、シリアやイラクに渡った。この中には西側諸国からの推計6600人も含まれている。

パリとブリュッセルで目の当たりにしたように、これらの戦闘員の多くが移民家庭の出身だ。彼らは帰国し、これまで影響を受けていなかった地域において、破滅的なネットワークを形成する。ISもまた、直接つながりのない個人を感化してISの名の下で殺りくを実行させようと、イラクとシリア以外でも世界的な支部を築いている。

多くの研究が示してきたように、攻撃は突然どこからともなく起きるものではない。

個人が殺人に至るずっと以前に、その人物が急進化する過程が存在する傾向がある。その急進化は、コミュニティ意識やカウンセリングなどの機会によって阻むことができたかもしれない。多くの場合、民間セクターがそうしたきっかけをつくるのに一番適している。

一部の企業、特にIT分野では、この課題に挑戦してきた。フェイスブック(FB.O)やツイッター(TWTR.N)、グーグルの親会社アルファベット(GOOGL.O)は最近、ネット上での過激派の主張に対抗するための投資を行っている。地域社会に謝意を示すために「安全と人権に関する自主的原則」を採用した企業は、後に続くかもしれない。

ISのような組織は、ソーシャルメディアといった商品を悪用し、それより酷くはないにしろ、サプライチェーンを寸断し、国際通商に損害を与えるようなやり方で、従業員やインフラを標的にする。

それでは、なぜ民間セクターは、過激主義を防ぐための資金提供を嫌がっているのか。おそらくそれが、組織的に彼らの業績に影響を与えるまでには至っていないからだ。ただ、それは変わってくるかもしれない。さらなる攻撃は、民間セクターに永続的な安全保障上のリスクや政治的なリスクをもたらしかねず、長引くリスクプレミアムを通じて、収益を押し下げるかもしれない。

こうした政治リスクを管理するためには、社会的責任プログラムを行う会社に対し、過激派集団の徴募活動が懸念される地域に重点的にプロジェクトを遂行するよう説得することが必要だ。こうしたアプローチは希望をもたらし、地元の人々に一体感を与え、暴力的な過激主義のリスクを軽減することができる。

新たな攻撃があっても、こうした投資は、リスクプレミアムを低下させ、産業へのショックを防ぐことができる。さらに、民間の取り組みは、政府の取り組みと同じような信頼性の負担が伴わないため、より効果的かもしれない。

オバマ政権は、急進化を防止し、インセンティブとまでは至らないにせよ、この分野における民間投資を奨励する取り組みを強化している。最近では、マディソン街とシリコンバレー、ハリウッドを意味する「マディソン・バレーウッド」に対して、とりわけ、その中でも感受性の高い若者が、米政府より気に入っている企業に対して、革新的な解決策を考え出すよう同政権は求めている。

しかし米議会は、防止の観点からこの課題に挑むために必要となる資金をほとんど与えてこなかった。既存の多くの官民パートナーシップは、始まったばかりか、実体のない表面的なものにとどまっている。

大企業は、無力な傍観者ではない。私たちは大企業に対し、暴力的な過激主義を育てる危険を有する地域社会に対して、実践的な援助をするよう求める必要がある。こうした援助は人命を救うだけではなく、大企業の利益を高めるものだ。

*筆者は社会的影響や政治リスクのコンサルティング業を手掛けるヴァサ・ストラテジーズの最高経営責任者(CEO)。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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