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焦点:PB黒字化先送りへ、景気後退と重なるリスク 日銀緩和長期化も
2017年10月5日 / 08:14 / 17日前

焦点:PB黒字化先送りへ、景気後退と重なるリスク 日銀緩和長期化も

[東京 5日 ロイター] - 衆院選の争点の1つになりそうな消費増税をめぐり、増税分の使途変更を掲げる自民党、増税凍結を訴える希望の党のどちらが多数派を形成しても、2020年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標の先送りは避けられない情勢だ。ただ、その間に景気後退局面に入れば、PB黒字化の達成は一段と難しくなり、日銀の超緩和策もさらに長期化するとの観測が専門家の一部から出ている。

 10月5日、衆院選の争点の1つになりそうな消費増税をめぐり、増税分の使途変更を掲げる自民党、増税凍結を訴える希望の党のどちらが多数派を形成しても、2020年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標の先送りは避けられない情勢だ。写真は都内で2013年2月撮影(2017年 ロイター/Shohei Miyano)

安倍晋三首相は衆院選の争点として、自民・民主(当時)・公明の3党合意で示されていた消費増税の使途を変更し、教育無償化などの財源に2兆円程度を振り向ける考えを表明した。

19年10月に予定されている8%から10%への税率引き上げによる5兆円超の増収分のうち、財政再建に回す分を充当する。

安倍首相は20年度までのPB黒字化は「不可能になった」としたが、具体的な達成時期は自民党の公約に明記されていない。

一方、希望の党代表の小池百合子東京都知事は「消費を冷え込ませる」と増税自体に慎重な立場。同党が立候補希望者に提示した「政策協定書」には、「19年10月の消費税の10%への引き上げについては、凍結を容認すること」と盛り込まれている。

このため自公連立の継続でも、希望中心の政権でも、20年度のPB黒字化は困難で、先送りは必至となっている。

第一生命経済研究所の首席エコノミスト、熊野英生氏は、PB黒字化目標の先送りは「財政再建のレッドラインを越えることになる」とし、「当座の財政規律が失われ、しばらくは財政拡張に歯止めがかからなくなる」と予想する。

また、日本経済の景気循環との関連から、警鐘を鳴らす声もある。富士通総研のエグゼクティブ・フェロー、早川英男氏は、今の景気拡大局面が20年度以降も続くとみるのは「現実的ではない」と述べる。

ある程度のショックが発生するような景気後退に直面した場合、発動余地がほとんどない中で「財政を出さざるを得なくなる」とし、一段の財政構造悪化を懸念する。

早川氏は、安倍首相が増税を主張していることに一定の評価を示しつつ、「消費税は10%で終わりではない」と指摘。教育財源への活用のように国民にメリットがあることを訴え、「10%以降の消費増税の必要性に理解を求めていくことが重要だ」と主張する。

米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスのシニア・クレジット・オフィサー、クリスチャン・ド・グズマン氏は、使途変更とPB黒字化の先送りに関して「中長期的に財政健全化にコミットしていれば、具体的にいつ目標が達成できるかは、それほど重要ではない」とし、日本の格付け見通しは「上方修正、下方修正、いずれのリスクも均衡している」と述べ、信用急落への懸念を退けた。

ソシエテ・ジェネラル証券のチーフエコノミスト、会田卓司氏は、安倍首相の打ち出した使途変更を評価し、「高齢化に向けた財政赤字におびえた守りの緊縮から、全世代型社会保障制度の創出とデフレ完全脱却によるさらなる成長を企図する攻めの緩和へ明確に転じることになる」と分析している。

これに対し、経済官庁のある幹部は、使途変更について「増税分で支出を拡大してしまっては、財政再建の本気度を疑われても仕方ない」と嘆く。

一方、PB黒字化の先送りは、政府から日銀への超緩和策継続への圧力を強めかねないとの懸念もある。緩和策の長期化が、利払い費の抑制につながるからだ。

財務省統計によると、12年度末の国債発行残高は705兆円。16年度末は831兆円と100兆円超の増加だが、利払い費は12年度の8兆円から16年度の8兆2000億円とほぼ横ばい。

別の経済官庁の幹部は「日銀が金融政策の正常化に向かう際、財政健全化で市場を安心させる姿勢を政府が示せなければ、金利が急上昇する懸念がある」と話す。

また、財政健全化に対して市場が疑念を抱いている状況では、「客観的に見て金利引き上げを抑制する圧力が働きやすく、日銀の出口は一段と難しくなる」と指摘する。

早川氏は、現在のような「好景気と低インフレの共存が、いつまでも続くわけがない」とし、将来的な景気後退局面入りに備え、本来は今のうちに財政を緊縮的にすべきだったと主張する。

だが、不幸にもPB黒字化の前に後退局面に入った場合、「ある種のヘリコプター・マネー政策に突き進む懸念がある」とみている。

先の経済官庁の幹部は「ヘリマネかどうかは別にしても、金融抑圧的な政策が一段と強まらざるを得ないだろう」と話す。

自民や希望、公明、共産など主要政党の公約に「ヘリマネ」の文字はどこにもない。しかし、耳を澄ませば、ローターのごう音が接近しているのを感じることができるのではないか。

伊藤純夫 中川泉 編集:田巻一彦

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