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焦点:日本株「利回り」に脚光、業績とかい離なら調整も
2016年2月3日 / 08:52 / 2年前

焦点:日本株「利回り」に脚光、業績とかい離なら調整も

 2月3日、日本株の「利回り」が脚光を浴びている。写真は東京証券取引所で昨年7月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 3日 ロイター]日本株の「利回り」が脚光を浴びている。 - 日本株の「利回り」が脚光を浴びている。円債金利の急低下で、株式の益回りや配当利回りなどの魅力が相対的に高まったためだ。運用難の中で、債券から株式への資金シフトを期待する声も多い。

しかし、利回りの元となる利益や配当への期待は、世界的な景気減速懸念が強まる中でむしろ低下。「裏付け」がないまま株高だけが進行すれば、大きな調整が起きるおそれも高まる。

<金利0.1%低下でPER1.6%上昇>  

日銀のマイナス金利導入で、円債市場では日本国債の利回りが急低下。わずかながらプラスを保っていた中長期ゾーンでも、残存8年付近までマイナスとなった。

10年債は0.06%、30年債でさえ1%割れが迫っている。「運用難が極まる」(国内生保の運用担当者)なか、注目度を高めているのが株式の「利回り」だ。

東証1部銘柄の配当利回りは約1.7%、株価に対して何%の利益が見込めるかという益回りは約7.5%だ。償還がなく、値下がりリスクもある株式ではあるが、債券との相対的な利回り比較における「魅力」は大きく高まっている。

メリルリンチ日本証券の試算によれば、リスクプレミアムが一定の場合、10年国債利回りが0.1%ポイント低下すると、リスクプレミアムと10年国債利回り(リスクフリーレート)の合計である益回りは同程度低下する。益回りの逆数であるPER(株価収益率)を1.6%程度押し上げる計算だ。

10年最長期国債利回りJP10YTN=JBTCは、日銀がマイナス金利導入を決定した1月29日以降、0.2%台前半から一時0.045%へと急低下した。今後、マイナス圏へと金利低下が進むにつれて、「比例的に日本株のバリュエーションは上昇し続ける」とメリルリンチ日本証券のチーフ株式ストラテジスト、阿部健児氏は話す。

実際、マイナス金利を日銀よりも先に導入した欧州では、欧州株のバリュエーションが上昇した。欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を導入した2014年6月以降、海外環境の悪化などで投資家のリスク許容度が低下する場面があったが、欧州株のバリュエーションは一進一退を繰り返しながら上昇基調となった。

メリルリンチの阿部氏は「ECBによるマイナス金利の導入は、投資家のリスクオフ時に株価の下げを限定させる効果があった」と指摘。日本株に対しても同様の効果が期待されると見込んでいる。

<企業業績が減速>

しかし、今は益回りを構成する1株当たり利益への懸念が強まっている。利益が減少してしまえば、益回りは低下。株式の相対的な魅力も薄らぐ。

佳境を迎えている日本企業の10─12月期決算発表では、中国を中心とする新興国経済の減速などを背景にファナック(6954.T)や日立建機(6305.T)、日本郵船(9101.T)などが相次いで今期業績予想を下方修正。デンソー(6902.T)も想定為替レートの見直しにより、今期純利益で一転減益見通しとした。

日経平均の予想1株利益は「昨年12月のピークから100円以上、低下している」(国内証券)と推計されている。債券との相対的な利回り比較で日本株が上昇したとしても、企業業績の支えがなければ、割高感の強い株高になってしまう。

ニッセイ基礎研究所の専務理事、櫨浩一氏は「マイナス金利導入によるリバランス効果は良し悪しだ。仮に株式市場に資金が流れたとしても、実体より株価水準が高ければバブルにつながる恐れがある」と警戒する。

<マイナス金利導入後の上げ幅削る>

「実質金利の低下効果を通じて、企業や家計の経済活動に好影響をもたらすことができる」──。日銀の黒田東彦総裁は3日、都内の共同通信社主催イベントで講演し、こう述べた。

しかし、皮肉にも3日の日経平均.N225は550円を超える大幅下落。前日の下落分と合わせ、マイナス金利導入後の株高約1000円の約3分の2を失ってしまった。「主力株に海外実需筋の売りが目立つ。バリュエーションを無視するような売りだ」(国内証券)という。PERが10倍を割り込む主力株が増えてきている。

ドル/円JPY=EBSも上昇幅の約3分の2を消している。いまの日本企業は総じて円安なしに業績期待を高めるのは難しい。

長期的な金利低下傾向のなか、益利回りと国債利回りのかい離が広がっているのは米国も同じだ。

しかし、米株は依然として軟調。1月月間ではダウが約5.5%安。S&Pは約5.0%安。ナスダックは7.9%安で10年5月以来の大きな下げとなった。

余剰マネーを設備や事業ではなく自社株買いに振り向けることで、1株利益を高めることもできる。そうすれば益回りも高くなる。

しかし、それでは持続的な利益成長という「先」が見えない。世界的な低金利は低成長の裏返しだ。株式の「利回り」が注目されるということは、株式市場にとって良いシグナルと言えない面もある。

杉山容俊 編集:伊賀大記

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