コラム:「ギリシャ」と「橋下ブーム」をつなぐリスクシナリオ
田巻 一彦
[東京 30日 ロイター] ギリシャ債務交渉と橋下徹大阪市長の政治的躍進─。一見、何のつながりもないような二つの出来事が、実は日本のとるべき道を決める複雑な数式を構成している。世界経済がかつてない危機に直面する中、橋下勢力の拡大に揺れる国内政局は一段と混迷の度を深めつつある。政権延命をかけた解散に踏み切るか、それとも緊急経済対策を優先するか。野田佳彦首相は、解が導きにくい難解な連立方程式に取り組まねばならない。
日本国内の政治情勢は、消費税率引き上げ法案の取り扱いをめぐり、解散含みの展開が予想されているが、ギリシャ危機が最悪の展開になれば、首相は解散よりも緊急対応策の策定を優先すべきだろう。もし、ギリシャ政府と民間金融機関との債務削減交渉がまとまらなければ、ギリシャの債務不履行(デフォルト)をきっかけとした金融市場の大混乱への懸念が高まる。
<ギリシャ問題、真の焦点はファンド勢の動向>
実際にその最悪シナリオは現実味が増しており、ギリシャ債務問題は、30日になっても決着の見通しが立っていない。1月中の決着という観測が何回か出てきているが、先行きは予断を許さない展開となっている。
交渉こう着の理由は、現在の国債を新しい国債に乗り換える際の表面利率にあるとの報道が多いが、本当の問題は別のところにありそうだ。ギリシャが発行した約2600億ユーロの国債のうち、欧州中銀(ECB)が保有している約550億ユーロを除いた約2050億ユーロが民間保有分とされている。複数の市場関係者によると、このうち700億ユーロはヘッジファンドなど非銀行勢が保有。その中の500億ユーロ分を保有するヘッジファンドなどは、新国債への乗り換えに反対しているとみられている。
ギリシャ政府と民間債権者の代表を務める国際金融協会(IIF)との交渉が合意に達したとしても、この約500億ユーロ分を保有するヘッジファンドなどがデフォルトを宣言し、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のトリガーを引く決断をすれば、これまで封印されてきたギリシャ国債のCDS請求権がCDSの売り主である欧米投資銀行などに発動されることになる。となれば、銀行側に膨大な保証金支払い義務が生じる。
その際に国際金融市場で、どのようなことが起きるのか。政策当局を含めて、現段階で正確に予見できる者は皆無だろう。CDSトリガーの発動に消極的だった銀行勢が、トリガー発動に傾く可能性を否定できない。それだけ"危ない橋"を欧州連合(EU)とギリシャは渡ろうとしていると言えないだろうか。 続く...

