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コラム:日本「復興の一年」

2012年 02月 17日 19:40 JST
 
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イアン・ブレマー 国際政治学者

福島原発危機をもたらした東日本大震災の発生から、間もなく約1年が経つ。日本は広島と長崎への原爆投下以来の危機を経験したといっていいだろう。

今回の震災では、特に津波により、1万を超える人々が犠牲になっており、最終的な死者数は、震災時に適切な医療を受けられなかった人たちを含めればさらに増える可能性もある。地震後には一時約40万人の大人と一緒に、多くの子どもたちが自宅を離れて避難生活を強いられた。福島第1原子力発電所の事故による放射性物質の影響を受けた地域では、がれきの除去作業などは始まったばかりだ。

こうした災厄はすべて、世界的経済危機や日本の産業減速の最中に降りかかったものであり、日本にとっては過去数十年経験したことのない出来事だった。

日本は現在、電力供給の柱だった原子力発電が事実上封じられているという事態に対処しなくてはならない。新しい原発建設という概念そのものが言下に退けられる風潮がある中で、電力インフラをどう再構築していくのか。また、いまだに自宅に戻れない多くの人たちの支援を国はどう続けていくのか。避難生活者の多くは、福島原発事故で警戒区域に指定された場所の住民だが、彼らには自宅に戻るという選択肢はないかもしれない。この国が直面している課題は深刻だ。

しかし、これまでの日本の震災への対応は見事と言うほかない。日本人はひたむきに復興に取り組んでおり、それは称賛に値する。自身を泥臭いどじょうに例えた野田佳彦首相が率いる政権もそうだ。日本政府は自衛隊と官僚組織を復旧活動に動員しており、私の知る限り、その取り組みは財界からも評価を得ている。

実際のところ、日本のビジネスリーダーたちは、私が過去何年も見たことがないほど楽観的だ。これから何年先もさらに不安定さが増していく中で、日本は自らが有利な立場にいること、つまりは最悪の事態への準備が出来ている事を知っている。日本経済は品質に力を注ぎ、細部にまで注意を払う。日本社会は老いも若きも大切にし、先進国としてでさえ驚異的な長寿を実現している。震災という大きな試練を経験し、日本のリーダーたちの間には、この国の衝撃に対する耐久力が証明されたという安心感がある。

国内外の一部には、人口減少の続く日本はもっと移民を受け入れるべきだという議論もある。しかし私は、日本ほどの同質的社会でなければ、震災に同じようには立ち向かえなかったのではないかと思っている。「占拠せよ(Occupy)」と銘打って始まった抗議運動は東京でも行われたが、私が見たときは六本木ヒルズに3人しか集まっていなかった。この国には暴動や略奪が起きやすい下地はないが、それはおそらく、その社会的構造によるものだろう。   続く...

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2月15日、福島原発危機をもたらした東日本大震災の発生から、間もなく約1年が経つ。日本が直面している課題は深刻だが、日本は社会構造のレベルで、こうした難問に対処する準備ができていると国際政治学者イアン・ブレマー氏は指摘する。写真は昨年3月、岩手県田老町で撮影(2012年 ロイター/Carlos Barria)

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