コラム:格差是正は喫緊の課題=ローレンス・サマーズ氏
ローレンス・H・サマーズ
[20日 ロイター] 欧米経済が向こう数年間に直面する根本的な問題は、需要減を背景とした生産の落ち込みだ。需要増は収入の増加や生活水準の向上、信頼感の高まりにつながることから、貧富の差を問わずすべての国民の収入押し上げには、これに勝るものはないといえる。
景気回復が今よりも加速すれば、社会全体に広がっている失望感や将来に対する懐疑的な見方が、少なくとも部分的には消えることだろう。
しかし、われわれが抱える問題は景気循環に伴うものだ、とか、マクロ経済的な手段によって解決できる、などと考えるのは大きな誤りだ。農業経済から産業経済への転換が社会に広範囲な影響を及ぼしたように、産業経済から知識経済への転換に伴う影響も、同様に大きなものになる。
現在みられる構造的なトレンドは、大恐慌以前から存在するものであり、景気回復が実現した後も長く存在し続けるだろう。なかでも最も重要なものは、全国民が受ける恩恵と比べ、特定の個人への富の集中が加速したことだ。米議会予算局の最近の調査によると、米国では、全国民の上位1%の収入は1979年から2007年の間に275%増加した(インフレ調整後)。一方、中間層(同調査では、所得分布で中央の60%と定義)の所得の伸びは40%にとどまった。雇用情勢はさらに悲惨であり、職を見つけられない人、または求職を断念した人の割合は上昇した。1965年には、25歳から54歳までの人で20人中1人が働いていなかった。循環的な景気回復が実現したとしても、2020年末までには、働いていない人の割合は、6人中1人となる見通しだ。
別の観点から見てみよう。ある調査によると、所得分布が1979─2007年に変化しなかったとすれば、上位1%の収入は今よりも59%(78万ドル)少なく、下位80%の収入は21%(1万ドル)超多かったはずだ。
こうした現状を見ても動じない人、富裕層に偏った減税やそれに伴う格差拡大を望ましいと考える人は、例えばこう主張するかもしれない。人の生涯の間、そして世代間でみてモビリティー(移動性)がある限り、「一時的な格差」は問題ではない、と。現実には、このどちらもほぼない。生涯収入の格差は、すでに、単年度の格差よりも若干小さいだけだ。さらに悲劇的なのは、米国の世代間のモビリティーは、国際的な標準でみても小さく、おそらく米史上初めて、改善の動きもとまった。
もう1つ別の統計を見てみよう。収入分布の下位4分の1の層出身の学生が大学全体に占める割合が、前世代と比べて低下する一方、富裕層出身者の割合は上昇した。リセッション(景気後退)に伴い、大学が、経済的な支援の必要な学生の受け入れを減らしたため、とされている。 続く...








