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コラム:キプロス経済の苦境を長引かせる資本統制
2013年5月28日 / 07:43 / 4年前

コラム:キプロス経済の苦境を長引かせる資本統制

5月27日、厳しい緊縮財政に苦しむキプロス経済を、資本統制がゆっくりと締めつけている。写真はキプロス・ポピュラー(ライキ)銀行の看板を持つ男性。2日撮影(2013年 ロイター/Andreas Manolis)

[ロンドン 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] キプロスは流動性問題を抱えている。バンク・オブ・キプロス(BOC)BOC.CYとキプロス・ポピュラー(ライキ)銀行CPBC.CYの2大銀行の預金者が、10万ユーロ(12万9278ドル)を超える預金について60%から100%の損失を通告されてから、まだ2カ月。

しかし首都ニコシアの街頭で暴動は起こっておらず、銀行も目に見えるパニックの犠牲になってはいない。痛手はもっと破滅的なものだ。ただでさえ厳しい緊縮財政に苦しむ国内経済を、資本統制がゆっくりと締めつけている。

このことは、一見しただけでは分からない。3月以来、資本統制は段階的に緩和されてきた。企業は現在、書類を提出しなくてもキャッシュレスの支払いが30万ユーロまで認められるようになった。ある銀行から別の銀行にキャッシュレスで資金を振り替える際の上限は、家計が1万5000ユーロ、企業が7万5000ユーロに、それぞれ引き上げられた。

しかし主要な問題は水面下に潜んでいる。自動車部品を製造する架空のキプロス企業、「アフロディーテ・オート」を想像してみよう。ベイルイン(債権者負担)が実施される3月半ばの直前に、この企業がバンク・オブ・キプロスの口座に110万ユーロの預金を持っていたとしよう。これは、キプロスにおいて大半を輸入に頼っている原材料の価格が高騰するなど、不測の事態に備えるための予備の資金だ。

ベイルイン後、アフロディーテ・オート社は窮地に陥る。預金保険の対象だった10万ユーロはまだ口座にある。しかし保険対象外の100万ユーロは今や10万ユーロに減ってしまった。37万5000ユーロは、評価額は未定ながら間違いなくバンク・オブ・キプロスに差し出される運命で、さらに22万5000ユーロもベイルインに回る可能性があり、残る30万ユーロも即時凍結されたからだ。

これだけでも悲惨なのに、アフロディーテ社は理論的にアクセス可能な20万ユーロ全額を引き出すことさえできない。この半額が、6月に満期を迎える1年物の定期預金だとしよう。満期が来ても、現在の資本統制下では2万ユーロしか引き出せない。残る8万ユーロはロールオーバーするしかない。

これは大問題だ。アフロディーテ社が取引する輸入業者の多くはもはや銀行システムを信用しておらず、入手困難になった現金での支払いを主張するからだ。小切手で支払えば、2銀行が関与するとして決済に5日間を要する。企業も個人も、他の銀行への新口座開設によってこうした問題に対処することを禁じられている。

ハードデータ無しにこうした影響をすべて定量化するのは難しいが、多くの健全企業が最終的に破綻するのは目に見えている。キプロス雇用者・実業家連盟(OEB)によると、資本統制が長引けば長引くほど、流動性危機による企業への打撃は大きくなる。キプロスのビジネスマンによると、消費者は不安になって消費を控えており、需要は崖を転がり落ちている。

キプロス中央銀行は、BOCを救済手続きから脱出させることで、泥沼から一歩前進しようと試みることが可能だ。進展の兆しはある。事情に詳しい関係筋によると、財務省は新たな経営陣を任命し、数日内にBOCをユーロシステムに再び接続させて低コストの資金調達を可能とする計画だ。中銀のデータによると、保険対象外の預金の60%についてベイルインが実施された場合、新生BOCの狭義の中核的自己資本(コアTier1)比率は有に15%を上回る可能性がある。これが将来の損失に十分耐え得る比率であるなら、BOCは保険対象外預金の30%の凍結を解除できる。

恐らくそうした展開は起こらないだろう。中銀は、独立した第三者がBOCの資産をおそらく数カ月間かけて評価し終わるまで、BOCを救済手続きから外すことに及び腰だ。それに資本統制が緩和されたとしても、腹を立てた預金者が資金を引き出し、BOCは破綻する可能性がある。

マリオス・ザチャリアディス氏らエコノミストは、キプロスはBOCから引き出した資金の国外移転に懲罰的税金を課すことで、大量の引き出しを抑えられると提案している。例えば25%の一時的課税を実施し、資金の国外退避を思いとどまらせるという案だ。より長い期間、キプロス国内に資金を留めた者や、あらかじめ決まった期間、資金を国内に還流させた者には税率を引き下げる。

しかしこの案は、現行の資本規制を別の資本規制に置き換えるだけのように見える。BOCから引き出された預金は、他のキプロスの銀行に移されるかもしれない。欧州中央銀行(ECB)は緊急の流動性支援に同意する可能性があり、キプロス中銀は他の国内銀行が銀行間市場を通じてBOCに資金を貸し戻すことを期待できるかもしれない。しかし両方とも大きな法的・実務的リスクを伴う。

最も可能性の高いシナリオは、資本統制がゆっくりと緩和される間、BOCの保険対象外預金が凍結されたままになることだ。そうなれば、第1・四半期に前年同期比4%超も減少したキプロスの国内総生産(GDP)はさらに落ち込むだろう。国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)欧州委員会、ECBの「トロイカ」が信用収縮の解決に手を差し伸べない限り、8.7%のマイナス成長というキプロス政府の2013年GDP見通しは結局、楽観的過ぎたということにになるだろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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