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コラム:国内経済は「黒田日銀」の目論み通り、懸念はチャイナリスク
2013年6月11日 / 10:48 / 4年前

コラム:国内経済は「黒田日銀」の目論み通り、懸念はチャイナリスク

6月11日、日銀の黒田東彦総裁は会見で、4月4日に打ち出した「量的・質的金融緩和」の効果が発揮され、日本経済は当初の目論み通りに「オントラック」で推移していると指摘した。写真は2011年、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

田巻一彦

[東京 11日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は11日の会見で、4月4日に打ち出した「量的・質的金融緩和」の効果が発揮され、日本経済は当初の目論み通りに「オントラック」で推移していると指摘した。

私も日本経済はこれまでのところ順調に回復していると考える。だが、順風のコースに死角はないだろうか。黒田日銀にとって、大きなリスク要因は海外経済であると指摘したい。中でも注視が必要なのは、国内経済に変調の兆しがみえる中国だ。中国経済への依存度が高い日本企業が多い中、「チャイナリスク」がうごめき出せば、日銀による何らかの対応が必要になる事態も出てきそうだ。

<日本経済はオントラック>

黒田総裁は、「量的・質的金融緩和」の3つの波及ルートに関連し、「イールドカーブ全体に働きかける効果やポートフォリオリバランスの効果、期待を通じた効果であるとか、それぞれに影響・効果を持っている」と指摘した。その上で足元の日本経済は、日銀が想定した軌道に対し「オントラック」で推移しているとの見方を示した。

確かに10日に発表された2013年1─3月期の実質国内総生産(GDP)2次速報値は、1次速報値から上方改定され、年率換算で前期比プラス3.5%から同4.1%になった。堅調な個人消費に加え、民間設備投資も上方修正され、日本経済の体温は高まっている。

<米出口の思惑、日本経済の横風に>

ただ、「黒田日銀」にとって、想定外だったのは、株価や為替などが大きく振れたことではなかったか。中でも米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和第3弾(QE3)に対する出口戦略発動の思惑が、世界の主要市場の価格変動を増幅させたことは、日本経済にとって“横風”のような圧力となった。

黒田総裁も、この日の会見で、マーケットのグローバル化によって、株や長期金利の市場が、相互に影響を与え合う関係にあるとの見方を示した。

私は、米欧日の超緩和的な金融政策の結果、グローバルに流動性がうねっている中で、米国の出口戦略発動という思惑が、流動性の圧縮を想起させ、リスクマネーのシフトアウト現象を招いたとみている。その中で、相対的に短期筋のマネー流入が多かった東京株式市場とドル/円大きくなったのではないかと指摘したい。

<株価下落なら、期待にも悪影響>

株価が下落すれば、「黒田緩和」の3つの波及ルートの1つである期待を通じたルートに影響が及び、所定の効果を発揮させる上で障害になることがあるだろう。実際、内閣府が10日に発表した5月景気ウォッチャー調査では、足元と先行きの判断DIがともに低下し、エコノミストからは株価下落の影響が出ているとの指摘が出ていた。

その意味で、QE3の出口戦略に対する思惑に端を発した市場の変動は、「黒田緩和」の効果や日本経済の先行きに影響を与える要素として、今後も注視が必要であると考える。

<不気味な中国経済>

ただ、日本経済に大打撃を与え、「黒田日銀」にとって大きな試練となるケースは、想定外のリスクが顕在化した時だろう。そのリスクは国内ではなく、海外経済の中に潜んでいるのではないだろうか。特にキナ臭いと感じるのが、足元で通常でない経済データが目につく中国だ。

8日に発表された5月中国貿易統計では、輸出が前年比プラス1.0%と前月の同14.7%から伸び率が急減。輸入は前月の同16.8%から前年比マイナス0.3%に急降下した。

輸出に関しては、貿易決済を装った人民元の投機取引に対する当局の取り締まりの結果、実態に近いデータが公表された可能性がある。しかし、輸入に関してはそうした事情がなく、中国経済が生産活動を中心に足元で、急速に勢いを失っている可能性をにじませているように見える。

こうした内需の動きとは、非整合的な価格変動が上海短期金融市場でも起きている。短期金利が急上昇し、上海銀行間取引金利(SHIBOR)翌日物は、前週末に9%台と過去最高水準に上昇した。

経済活動が低調になれば、金利には低下圧力がかかりやすくなるが、逆の現象が出てきていることに対し、中国の一部銀行の資金繰りへの懸念や、海外勢の資金流出の影響を指摘する声が、市場関係者から出ている。

黒田総裁は会見の中で、中国経済のファンダメンタルズは7─8%の経済成長の経路に乗っていると指摘。中国経済が大きなショックに直面するとは見ていないとの見方を強調した。

<ショック発生時、日本版LTROが効果発揮か>

私は、黒田総裁の見通しのように中国経済が何事もなく、足元での調整を乗り切ってほしいと考えている。ただ、テールリスクがいとも簡単に顕在化するのは、欧州債務危機で何回も目にしてきた。「チャイナリスク」が「チャイナショック」に変わる危険性について、予め頭の中で問題点を整理しておくことは、無駄にならないと考える。

もし、不幸にして大きなショックが発生した場合、金融システムの動揺を最小限に抑制する方策として、今回の決定会合で導入が見送られた「日本版LTRO」が、その効果を発揮するのではないかと予想する。

こうした外的ショックが発生しないまま、今年後半へと時が経過していけば、「黒田緩和」は消費者物価指数(CPI)のプラス転化を伴って、その効果を市場にアピールする時が来ると予想する。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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