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コラム:東京五輪招致テコに「観光立国」宣言を
2013年9月13日 / 04:32 / 4年前

コラム:東京五輪招致テコに「観光立国」宣言を

9月12日、2020年の東京五輪招致が決まり、建設や不動産など開発関連の業種に注目が集まっているが、もっと大きな枠組みで日本経済の活性化に取り組むべきだ。写真は10日、都内で撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)

田巻 一彦

[東京 12日 ロイター] - 2020年の東京オリンピック招致が決まり、建設や不動産など開発関連の業種に注目が集まっているが、もっと大きな枠組みで日本経済の活性化に取り組むべきだ。そのツールは観光だと指摘したい。

東京や京都など海外観光客に知られた大都市だけでなく、地方のすみずみまで観光客を呼び込み、人口減少と経済の沈滞に歯止めがかからない「地方」の活力を復活させるべきだ。貿易立国から「観光立国」への転換を打ち出し、年間3000万人の外国人流入を目標に、安倍政権がヒト、モノ、カネを集中投資する政策を打ち出すよう提案したい。手本は、観光先進国・フランスにあると考える。

<海外観光客の流入、経済再生のツールに>

オリンピックというと、マーケットはすぐに関連した施設、インフラ整備に目が向く。2020年までに3兆円の経済効果があると試算されているものの、1年当たり数千億円で、それだけで日本経済を劇的に浮上させる効果はない。

オリンピック招致が決まっても、日経平均.N225が1万5000円を上抜けないのも、そうした直接的な投資分だけでは効果が限界的であると見見抜いているためだろう。

しかし、そこで思考が停止していては、56年ぶりのオリンピック招致という「好機」をみすみす逸してしまう。日本への関心が高まるこのチャンスを利用して、海外からの観光客を大量に呼び込み、日本を観光大国にするためのプランを作り、その経済的な効果を利用して、日本の経済再生を図るべきだ。

<富士山の世界遺産認定、海外からの観光客増加に一役>

日本の経済規模は、米、中についで第3位だが、2012年の外国人来訪者は835万人と33位に低迷している。1位のフランスが8301万人、2位の米国が6596万人、3位の中国が5772万人と上位の国々とは大差がついている。

ところが、富士山が世界遺産に認定されて以降、海外からの観光客は急速に伸びており、今年7月の来訪客は月間で初めて100万人を突破。今年1─7月の累計数も595万7700人と過去最高を記録し、小泉純一郎内閣当時に設定した2013年に1000万人達成の目標も、初めて現実味を帯びてきた。

オリンピックの東京招致決定は、この上昇ムードをさらに加速させるだろう。ここでせっかくの良い流れを一過性のブームに終わらせるべきではない。日本を「観光立国」に作り変える国家戦略が今、必要だと考える。

<フランス手本に組織づくり、観光省・大臣新設すべき>

私は具体的な対応策の1つ目として、政府をトップにした観光を主要産業にするための組織づくりを提案したい。

そのモデルになるのは、フランスだろう。観光関連は国内総生産(GDP)の6%程度を占め、約200万人が雇用されている。日本の自治体国際化協会の調べによると、政府機関をトップに州、県、市の各レベルに観光振興を目的にした組織があり、観光に関するあらゆる品質管理を行っている。

地方には美しい自然が残されており、海外観光客にも人気が出てきた温泉は、全国に点在している。だが、多くの海外観光客は、その存在を知らずに東京、京都、大阪などの大都市を駆け足でめぐって、空港から立ち去ってしまう。そうした各地方のPRも、こうした政府をトップにした組織が、インターネットを活用して、世界中に情報を発信するべきだ。

また、この組織を活用して、宿泊施設や各観光地の品質向上のため、格付け制度や認証制度などを導入し、観光サービスの質と量の拡充を図っていくべきだろう。さらに各省庁が縦割りの行政を行っている結果、観光に関する各種の規制が煩雑になっている。観光省と観光大臣を新設し、1カ所で規制をコントロールし、できる限り既存の規制を緩和して競争促進をテコに、サービスの向上を図ることが必要であると考える。

<観光地に不可欠な物語性>

2つ目は、観光地に「物語性」を付与することについて各地方が目覚め、海外観光客の注目を集める点だ。

例えば、兵庫県朝来市の竹田城跡では、雲海の出る日に城跡の石垣が雲の上に浮かび、「雲海の城」「天空の城」として、城郭愛好家にはよく知られ、日本のマチュピチュとも一部で呼ばれている。だが、海外観光客にはほとんど知られていない。この城にまつわる歴史と雲の上に浮かぶ映像を組み合わせて、独自の「ストーリー」を構成すれば、日本有数の観光地になると思われる。

<地方経済の活性化、観光が切り札>

3つ目は、人口減少と高齢化、産業の空洞化に悩んでいる日本の地方経済にとって、起死回生の策になり得るという認識を多くの関係者が認識することだ。観光関連のサービス業態は、高齢者でも就労可能な職種が多い。また、海外観光客を呼び込める観光資源があれば、大規模な資本投下がなくても、とりあえずの対応が可能であることも重要だ。

観光客を集める有力なツールとして注目を集める「B級グルメ選手権」は、発足させるまでにかなりの紆余曲折を経たようだが、各地の有志の創意工夫で「無から有を生み出す」ことができた典型的な例だろう。このような創意工夫を生み出す地方の「有志の意欲」が、地方の観光活性化に欠かせない要素だと考える。

2020年に東京オリンピックの開会を宣言するとともに、政府が「観光立国」を高々と宣言できるようになっていれば、日本は少子高齢化に直面しながらも、活気のある「おもてなし」の国として、世界中から注目を集めることができるだろう。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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ロイターニュース 田巻 一彦

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