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焦点:コアコアCPI下げ止まり、「デフレ脱却宣言」残る条件は
2013年10月25日 / 04:59 / 4年前

焦点:コアコアCPI下げ止まり、「デフレ脱却宣言」残る条件は

10月25日、政府がデフレ脱却判断に向け重視している「コアコア指数」が、4年半ぶりに下げ止まった。「デフレ脱却宣言」へ向け一歩前進したかたちだ。今月24日、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 25日 ロイター] - 政府がデフレ脱却判断に向け重視している「コアコア指数」が、9月消費者物価指数(CPI)で前年比ゼロ%となり4年半ぶりに下げ止まった。エネルギーや食品以外でも物価が上昇しつつあることを示しており、「デフレ脱却宣言」へ向け一歩前進したかたちだ。

ただ、政府部内には消費増税後の消費動向や円高リスクを勘案して慎重に判断するべきとの声があり、コアコアCPIが少なくとも0.5%以上になるまでは安心できないとの見方がある。また、政府と日銀が掲げている2%のコアCPI(除く生鮮)上昇の目標達成まで見送られるとの声も出ている。

<値上げの秋、コアコアのプラス定着へ>

コアコア指数は、生鮮食品のほか、石油製品や電気料金といった変動の大きい項目、天候に左右されやすいコメ、診療代や介護料金などの公共性の強いサービス料金などを消費者物価から差し引いて出している。

政府は、CPIの安定したプラス基調を「デフレ脱却宣言」の条件としているため、物価の基調的な動きを示すコアコア指数を注視している。

9月は前年比0.0%(連鎖基準)となり、09年4月以来続いてきた下落傾向から脱した。今年2月の1.0%の下落を底に、マイナス幅は一直線に縮小している。ニッセイ基礎研究所・経済調査室長、斉藤太郎氏によれば、9月はまだ上昇品目よりも下落品目の数がやや多いが、上昇品目数は5カ月連続で増加している。 円安に伴う輸入価格の値上がりと、その分の価格転嫁の動きが目立っているほか、物価下落の大きな要因だったテレビ、パソコンの値下がりが止まってきたことが、コアコア下げ止まりの大きな要因として浮上している。

家電量販店によれば、テレビやパソコンは安値競争の余地が無いほどに下落し、売れ筋商品が高機能機種にシフトして、価格低下傾向に歯止めがかかったという。 政府関係者は「10月以降、さらに上昇の可能性がある。自動車損害保険料の値上げをはじめ、いくつもの製品、サービスで値上げが控えており、プラス幅は拡大していく」とみている。

自動車の損害保険料をめぐっては、高齢化などによる事故率の上昇を背景に、保険金の支払いが増加。収益悪化をカバーするため昨年から値上げが相次いぎ、消費者物価の押し上げ要因の1つとなっている。 また、消費者のインフレ期待の上昇も影響している可能性がある。消費動向調査では、9月調査で物価上昇を予想する世帯の割合が88%近くまで上昇している。

<黒田日銀総裁、「幅広い品目で改善」>

異次元緩和でインフレ期待に働きかけてきた黒田東彦日銀総裁は、こうした値上げの動きについて、コストプッシュ要因だけではないとの認識を示している。

24日の参院予算委員会では「確かに最近の物価上昇の背景をみると、円安による輸入レートを含めエネルギー関連の押し上げが一定の効果を持つことは事実だが、それ以外にも需給ギャップ改善を受けて、幅広い品目で改善の動きが見られる」との考えを示した。

民間エコノミストからも、9月コアCPI(除く生鮮)におけるエネルギー関連品目の上昇が頭打ちとなる一方で、耐久財関連が上昇するなど、「コストプッシュ型からディマンドプル型への移行が見られる」(農中総合研究所・主席研究員の南武志氏)との見方が出ている。多くのエコノミストは、コアCPIが年末に向けて1%前後に上昇する可能性が高まっていると見ている。   <デフレ脱却宣言、消費増税の影響・円高リスクを勘案>

ただ、政府がデフレ脱却宣言に踏み切るには、物価下落に後戻りしないというハードルをクリアする必要があり「コアコアCPIのプラス基調が、ある程度続くことが必要になる」(内閣府幹部)としている。コアコアCPIでみて少なくとも、0.5%以上のプラス幅がなければ、押し下げ要因の「ノリシロ」を確保できないと見ている。

また、米財政問題や量的緩和の出口をめぐる不透明感によって円高を招けば、物価上昇基調が崩れるというリスクシナリオを懸念している。

さらに来春の消費増税に際して、生活防衛的な行動が強まれば、小売価格の値引きによる物価下押しの動きが表面化するリスクもあると政府関係者の1人と指摘。「少なくとも、消費税増税後の景気や物価の動向を見極めるまで、デフレ脱却宣言は困難」との見通しを示している。

今後の展開を予想する上で、政府がかつて「デフレ脱却宣言」を検討した2007年のケースが参考になりそうだ。

コアコア物価の上昇率は、08年7月にプラス1.0%まで上昇したが、資源価格高騰などで日用品の値上がりが広がったが、賃金が伸び悩んでいた点を考慮し、宣言を見送った。

元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブフェローは、物価上昇にはインフレ期待に加え、賃金の上昇も必要と指摘する。

政府が賃上げへの協力を産業界に要請し、来年の春闘では一部企業でベースアップが実現する可能性も出てきた。

だが、雇用者数の増加により賃金総額が増加しても、1人当たり賃金が増加することは難しく、消費増税による物価上昇すらカバーしにくいとの予想が、多くのエコノミストから出ている。

三菱UFJモルガンスタンレー証券・シニア・マーケットエコノミスト、戸内修自氏によれば、1%のベアが実現して春闘賃上げ率が1%上昇した場合、コアCPIをプラス0.5─0.6%ポイント程度押し上げ、相応のインパクトが期待されると試算する。

ただ、「現段階では、そうした大幅な春闘賃上げ率は展望しにくい。1%のベアが実現した春闘は、最近では1994年以来なかった」と述べている。

<2%達成まで、宣言先送りの可能性も>

さらに、ある一定の幅のコアコアCPIプラスが定着したとしても、「デフレ脱却宣言」は難しいとの見方もある。ニッセイ基礎研の斉藤氏は「安倍首相自身が初めに2%の物価目標を掲げ、日銀もそれを目標にしている。2%達成前のデフレ脱却宣言を真剣に議論している感じはしない」とみている。 2%の物価目標を掲げている日銀は、物価がプラス転換しても単なる通過点に過ぎないとの見方を取っている。物価を測る基準はあくまでコアCPIであり、エネルギー価格なども消費者の生活コストに含まれている以上、それも含めて2%達成を目指すとの立場だ。

安倍政権は、早期のデフレ脱却に向けて全力で取り組むとしているが、「デフレ脱却」をいつ宣言するかは、いくつも存在する要件や内外情勢を踏まえ、最終的には消費増税と同様に安倍首相の判断に委ねられる可能性が高い。

中川 泉 編集;田巻 一彦

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