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焦点:同盟関係に亀裂入る米オバマ政権、中国とは接近
2013年11月5日 / 03:42 / 4年前

焦点:同盟関係に亀裂入る米オバマ政権、中国とは接近

11月3日、同盟国へのスパイ行為が明らかになり、中東をめぐる外交政策では関係各国の反発を買っている米国だが、中国との関係改善にはオバマ政権も多少の安らぎを見い出しているだろう。北京で昨年9月に代表撮影(2013年 ロイター)

[ワシントン 3日 ロイター] -同盟国に対するスパイ行為が明らかになり、中東をめぐる外交政策では関係各国の反発を買っている米国。多くの同盟国との関係に亀裂が入る中、オバマ政権が多少の安らぎを見い出しているのは、中国との関係改善だ。

習近平氏が中国共産党トップの総書記に就いて約1年が経ち、米政府高官からは、気候変動問題や北朝鮮核問題など、様々な分野で中国との協力が増えたとの声が聞かれる。また、2国間の軍事交流拡大は、不測の事態が起きた際の重要な安全弁になるという指摘も耳にする。

経済面では、11月9─12日に開催される中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)にオバマ政権の目は注がれている。そこでは、習近平国家主席が中国経済のさらなる開放に向けた道筋を示すと期待されているからだ。

習新体制下の中国は今年7月、米国との投資協定締結に向けた協議再開で合意。また9月には、金融、投資、貿易分野の大胆な規制緩和を進める上海自由貿易試験区(FTZ)を開設した。これら2つが進展すれば、年間3000億ドルに上る米国の対中貿易赤字が減ることにもつながる。

ただ、米中関係はすべてがバラ色という訳ではもちろんない。両国間には、人権問題をはじめとする深刻な溝が依然として横たわっている。欧米の専門家や中国の活動家たちは、中国政府による人権抑圧は、習近平政権下で一段と悪化しているとも指摘する。

また、中国が強めている海洋進出の動きも火種となる。中国は周辺国との領有権問題で「砲艦外交」とも批判される行動を見せているが、そこには日本やフィリピンなど米国の同盟国も含まれる。

しかし、米中の当局者はともに、両国が中国の言う「新たな大国関係」に進んでいると口をそろえる。習国家主席が繰り返し唱える「新たな大国関係」には、中国の国際的影響力が強まる中、米中の対立を最小限に抑えようとする狙いがある。

米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長ダニエル・ラッセル氏によると、オバマ政権にとって「新たな大国関係」のコンセプトは「強く安定して豊かな中国と、自由市場とルールに基づいた自由民主主義の代表者としての米国の共存」を意味する。米政府と中国政府には「新興勢力と既存の大国が必然的に衝突に向かうメカニズムを避ける」意図があるという。

中国との関係改善が最もよく分かる例として米当局者が挙げるのは、北朝鮮をめぐる問題だ。

北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの開発は、アジア地域の安全保障で最も深刻な脅威の1つとみられており、米政府はこれまで長く、北朝鮮への圧力を強めるよう中国に求めてきた。北朝鮮は今年2月、3回目となる核実験を強行し、米国と韓国に対して核攻撃も辞さないと挑発をエスカレートさせた。

ベン・ローズ米大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)は、ロイターの取材に「(中国は)北朝鮮への圧力に以前より前向きになっている」とコメント。その背景には、「春に起きた一連の挑発は地域の不安定化要因であり、最終的に自国の利益とは一致しないと中国が判断したことが理由にある」と分析している。

国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁をめぐって、米国などから実行力に欠けていると批判されてきた中国だが、先月には北朝鮮への輸出禁止対象となる技術や物資の詳細なリストを公表。リストには核および化学兵器の製造に使用可能な物資、原発の建設や稼働に使用できる技術が含まれている。

<重要問題>

北朝鮮問題で米中の距離が縮まったのは、6月にカリフォルニア州ランチョミラージュで2日間にわたり行われた米中首脳会談の重要な成果の1つだ。首脳間の信頼関係構築を主眼に開催された同首脳会議では、温室効果ガスの排出削減合意や、サイバー攻撃問題を定期的に話し合うワーキンググループの発足も決まった。

会談に同席したラッセル氏は、「米中が協力しているのは、実際にはどうでもいいような小さな問題ではなく、両国民や地域や世界にとって真に問題となる優先的かつ重大な課題だ」と述べた。

習近平氏は国家副主席だった2012年2月にも訪米しているが、その時はロサンゼルスやワシントンのほか、27年前にホームステイした中西部アイオワ州の小さな町も再訪した。ワシントンでは国防総省も訪れ、そこでは2013─14年の米中軍事交流の日程も話し合われた。米中間では長く、軍同士の関係が最大のウィークポイントだった。

<三中全会>

米中関係は過去にも、緊張と雪解けを繰り返してきた歴史がある。専門家らは、習近平氏の真意も三中全会が終わってからでないと明らかにならないと慎重だ。

ただ、経済政策については、習近平氏が1990年代以降、経済的に活気のある福建省や成長著しい上海で重要ポストを歴任し、党・政府内では「企業寄りな」指導者だったことから、米国は楽観の余地を見込んでいる。

在上海米国商工会議所のケネス・ジャレット会頭は、「(前任者の胡錦濤氏より)市場寄りアプローチが進むと楽観視できる理由は、習近平氏の過去の経歴がすべて物語っている」と述べた。

米財務省は10月30日に発表した為替報告書で、人民元が「大幅に過小評価」されていることが浮き彫りになったとしながらも、中国の為替操作国認定は見送った。為替報告書はこれまで中国の為替政策を批判することが多かったが、今回は中国よりもドイツに対する批判が目立ち、ドイツの輸出依存度の高さが欧州経済の安定を阻害し、世界経済に悪影響を及ぼしているとの認識を示した。

一方、人権問題や地域の安全保障問題では、中国の姿勢には疑問符がつく。共産党は4月に作成した対外秘の「第9号文書」で、憲政民主主義や普遍的価値、報道の自由、司法の独立性、市民社会など「西側の概念」を公に話すことをタブーとした。同文書は、習国家主席の考えを反映しているとみられる。

また、政府は反体制的なブロガーや弁護士、活動家らへの取り締まりを強化しており、身柄の拘束や逮捕に至るケースも多い。

オバマ米大統領は、今も人権問題を重視しているが、米中関係の死活問題にはしないと決めたように見える。

一方の習国家主席の外交政策について、米平和研究所のステファニー・クライネ・アールブラント氏は、中国の伝統的な受身外交とは一線を画していると指摘。習体制下の中国は、米国の同盟各国を試しつつ、オバマ政権が打ち出した外交面や安全保障面での「アジア重視」路線を押し返そうとしているという。

米当局者らは、中国が自国の経済成長を阻害するリスクを冒してまで、日本など周辺国との海洋権益問題をエスカレートさせるとはみていないようだ。

ある米政府高官は「もし習近平氏が、中華人民共和国建国100周年となる2049年までに先進国並みになるという夢を実現させたいなら、あらゆる混乱や障害を避けて行きたいはずだ」と語った。

(原文執筆:Paul Eckert、翻訳:宮井伸明、編集:橋本俊樹)

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