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コラム:中国で金融危機が起きない理由=カレツキー氏
2014年2月26日 / 05:29 / 4年後

コラム:中国で金融危機が起きない理由=カレツキー氏

2月24日、金融改革に取り組む中国共産党には、世界最大の貿易黒字や3.5兆ドルの外貨準備高など、金融システム安定維持のための手段がいくつもある。写真は人民元紙幣。上海で2011年1月撮影(2014年 ロイター)

[24日 ロイター] - アナトール・カレツキー

中国経済の急減速は、世界経済が今年直面する最大リスクの1つとみられている。20日発表された2月のHSBC中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が7カ月ぶり低水準だったことも、こうした懸念に拍車をかけた。

しかし本当に重要なニュースからは、中国経済が正反対の方向を向いていることが見て取れる。同国銀行による1月の新規人民元建て融資は、多くのエコノミストの予想に反し、前月の水準の約3倍に拡大し、2010年1月以来4年ぶりの高水準となった。

このことは、向こう数カ月の間、中国が世界経済にブレーキをかける可能性は低いことを意味している。さらに、中国で信用危機や金融危機が起きるとの予想は誤りか、少なくとも時期尚早であることを示唆している。

銀行融資の拡大を歓迎することは、同国債務が国内総生産(GDP)成長率の2倍のペースで増加することは持続不可能であり、最終的には抑制が不可避ということを否定するものではない。中国当局がそのように考えていることは明らかだ。政府と中国人民銀行(中央銀行)は、債務の伸びを抑制し、不透明な「影の銀行(シャドーバンキング)」が、適切な監督が行き届いた近代的銀行に取って代わることを望んでいる。

ただ中国政府は債務抑制のほかに、それと同等もしくはより重要とみなす経済的目標を2つ掲げている。

昨年11月の「三中全会」(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)では、最優先すべき3つの改革が明確に打ち出された。

1つ目は、インフラ投資や輸出に過度に依存する経済から、消費を増やして内需主導型の経済に再編すること。

2つ目は、多くの専門家が最も重要と指摘するものだが、共産党政権の存続を脅かしかねない深刻な経済減速という危険を冒さずに、秩序を保ちながら改革を成し遂げることだ。中国政府は具体的に、2014年の経済成長率目標を7.5%に設定している。

3つ目が、融資の仕組みを改革し、過剰な債務を抑制することだ。

中国の指導者やエコノミストが長い間認めたがらなかった問題は、この3つの目標が衝突した場合に何が起きるかだ。

もし債務の抑制が深刻な景気減速を引き起こしたらどうなるか。シャドーバンキングの規制が、民間企業の成長への運転資金を枯渇させたらどうなるか。また、積極的な産業構造改革が金融の安定と両立しなくなったらどうなるのか。

この数カ月で、こうした疑問への答えは明確になりつつある。中国指導部は、産業構造改革、経済の安定性、金融改革という3つの目標に取り組む一方で、この3つ全ての同時進行は不可能かもしれないと認識している。

したがって、政策には優先順位をつける必要がある。金融改革は、構造改革と成長維持に比べて優先度は落ちることが判明しつつある。

中国は可能な限り、3つの目標をすべて前進させようとするだろう。だが、そこに深刻な衝突が発生するなら、適切な成長率を維持することの方が、債務抑制や金融改革に勝るだろう。

これは中国にとってだけでなく、依然として経済成長が物足りない世界にとっても賢明な優先順位と言えるだろう。とはいえ、たとえ中国が経済成長の維持と信用危機の回避を固く決意しているとしても、実際にそれは可能なのだろうか。

米政府は、投資銀行の破綻を現代史で最悪となる金融危機へと発展させた。中国ならもっとうまく対処できるとなぜ期待できるのだろうか。

米国政府は金融危機を本気で回避しようとしなかった。それどころか、米財務省はリーマン・ブラザーズを破綻へと追い込み、政府による銀行救済には限りがあることを示した。中国の当局者、特に中銀当局者のなかには最近、同様の声明を発表し、無謀な融資は規制して「モラルハザード(倫理の欠如)」を阻止しなくてはならないとする者もいる。

これは、中国も「リーマン破綻」を許し、優先すべき政策の順位を変える可能性があることを意味するのだろうか。つまり、経済成長よりも金融改革を優先させることはあるのだろうか。

この点が中国の政策をめぐる議論で実に興味深く、また複雑なところでもある。

中国はどれほど重要な問題でも1つの意見しか通らない一枚岩の権力国家とみられているが、経済政策においては実のところ、時には米国のケインズ主義者と通貨主義者の論争と同じくらいオープンに議論が交わされている。

その結果、中国からは矛盾するようなメッセージが常に発信されてくる。特に、セントラルバンカーを政治家よりも権威的だと直感で判断してしまう金融関係者には理解しづらい。

しかし中国においては、これは完全に間違っている。なぜなら、中国人民銀行は独立性がなく、政治指導部の承認なくして重大な決定を下すことはできないからだ。

西側諸国で教育を受け、独立性を切望する人民銀当局者がたまに度を超して、政府の承認なしに論議を呼びそうな決定を下すことはある。先月にシャドーバンキングにからむデフォルト問題がパニックを引き起こしそうになったときのように、人民銀の行動が危機につながる恐れがある場合は常に、共産党が再び威勢を振い、政府による救済策を用意することになるのだ。

ここで、中国がもし真剣に望めば、金融システム安定維持のための手段を持っているのかという疑問に再び戻ってくる。その答えは、ほぼ間違いなく「イエス」だ。中央政府の手足である国有銀行が支配する比較的未発達な金融システムは実際、市場主導型で複雑な民間金融機関のネットワークよりも安定させやすい。

国有銀行は資本配分では非効率的かもしれないが、政府が破綻しない限りは破綻に追い込まれることはない。そして、中国政府はおそらく世界で最も支払い能力のある「金融機関」なのだ。

中央政府は、破綻した銀行や地方政府の救済を引き受けるには十分過ぎるほど頑強な財政を有する。さらに重要なことには、中国が世界最大の貿易黒字国であるだけでなく、海外への資本移動を完全にコントロールしているほか、3.5兆ドルの外貨準備高があることだ。

中国の金融システムにリーマンショックのような危機が起きると賭けるなら、3.5兆ドルを用意しておくべきだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*アナトール・カレツキー氏は受賞歴のあるジャーナリスト兼金融エコノミスト。1976年から英エコノミスト誌、英フィナンシャル・タイムズ紙、英タイムズ紙などで執筆した後、ロイターに所属した。2008年の世界金融危機を経たグローバルな資本主義の変革に関する近著「資本主義4.0」は、BBCの「サミュエル・ジョンソン賞」候補となり、中国語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル語に翻訳された。世界の投資機関800社に投資分析を提供する香港のグループ、GaveKalDragonomicsのチーフエコノミストも務める。

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