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コラム:円安予想が大きく後退した理由=熊野英生氏
2014年3月10日 / 09:48 / 4年前

コラム:円安予想が大きく後退した理由=熊野英生氏

年末年始には2014年内のドル円レート予想は105―110円だった。120円の大胆予想をする人もいた。しかし現在は、110円を超える円安予想は鳴りを潜めてしまった。

ひとつの理由は、投資家が米経済の力強さにあまり強い期待を抱かなくなったことがある。7日に発表された2月雇用統計は、前月比17.5万人増だった。「これでも上出来」という見方が、市場予想を少しだけ上回る結果を歓迎させた。

米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第三弾(QE3)縮小開始を決定した13年12月に比べると、雇用拡大が見劣りするペースでしか進んでいないことは認めざるを得ない。20万人に届かなくても失望度合いが小さくなっていることは、円安に振れにくいと同時に、円高にも巻き戻しにくいということでもあろう。

もうひとつの理由は、新興国不安である。米経済が力強く拡大していれば、そのけん引力が新興国経済を潤す。ところが、米経済の強さが期待したほどではなかったことで、新興国経済の過大評価もまた修正されることとなった。

1月のアルゼンチンペソ急落に始まる新興国通貨下落は、QE3縮小とともに弱い通貨が狙われたことが原因である。新興国通貨が売られて、ドル・円・ユーロといった主要通貨への資金シフトが円安の流れに歯止めをかけた。

加えて、3月はウクライナ問題という地政学リスクの顕在化で、安全志向の円買い圧力が生じたこともある。

第三は、日銀の追加緩和予想がいくらか弱まったことにある。13年4月に量的・質的金融緩和が始まったときには、2年間で2%の消費者物価上昇を達成するのは困難なので、追加緩和もあり得るという見方が強かった。しかし、消費者物価の伸び率は予想外に高まった。

現在でも4月以降の緩和予想は根強いが、黒田総裁は自律的に日本経済が改善する力で物価上昇が起こることを待つのではないかという見方が相対的に強まっている。量的・質的緩和が予想以上に効いていることが、追加緩和期待を一段落させていると理解できる。

<メインシナリオはドル102―105円>

ここまで年初と比べて、想定が違ってきている点をいくつか挙げてみた。逆説的に言えば、上記で示した状況が大きく覆れば、105円以上の円安に傾くだろう。

条件変更の最右翼は、1)米国経済の強さ、2)日銀の追加緩和観測の強さ、である。可能性があるシナリオは、米経済が毎月20万人以上の雇用増加を伴いながら成長していく場合だ。そのとき、新興国経済に多少の混乱があったとしても、米経済への自信によってドル安・円高要因には結びつきにくいだろう。

一方、QE3縮小は年内に粛々と進んでいくので、新興国からの資金流出が進んで、米経済の牽引力だけでは十分に景気拡大ができない可能性もある。

また、日銀の追加緩和が4月以降に実施されればそれなりにサプライズである。ただし、消費税増税の反動減が予想外に大きくなれば、実体経済の悪化によるリスク増大の円高圧力が生じる。景気情勢が逆風に変わってしまうと、追加緩和による円安への期待感も相対的に弱くなる。何よりも、13年4月のようにマネタリーベース残高を2倍に増やすような威勢のよいアピールは再現できそうにない。

以上のような思考実験を行ったうえで、やはりドル円のメインシナリオとしては当面102―105円のレンジで推移するという見方が妥当であると筆者は考えている。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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