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コラム:次の金融危機、震源地は日本か=カレツキー氏
2014年3月17日 / 02:52 / 4年前

コラム:次の金融危機、震源地は日本か=カレツキー氏

3月14日、主要経済国のなかで、今年期待を裏切り、世界経済の回復基調をぶち壊すのに十分な金融危機を起こす可能性のある国はどこか。カレツキー氏は、最も怪しいのは日本だと指摘する。写真は安倍首相。ニューデリーで1月撮影(2014年 ロイター/Anindito Mukherjee)

[14日 ロイター] - アナトール・カレツキー

主要経済国のなかで、今年期待を裏切り、世界経済の回復基調をぶち壊すのに十分な金融危機を起こす可能性のある国はどこか。いつも名前が挙がるのは中国と南欧だが、筆者の考えでは、最も怪しいのは日本だろう。

日本は以前ほど多くの関心を引きつけることはなくなったが、今でも世界第3位の経済大国であり、国内総生産(GDP)はフランス、イタリア、スペイン、ポルトガルを合わせた規模と同等だ。日本の産業は米国、欧州、韓国の製造業にとっては一番の競合相手であり、日本には1997年のときのように、アジア全域で金融危機を引き起こすのに十分な地域的影響力がいまだにある。

さらに悪いことに、もし安倍晋三首相が推進する大胆な経済改革プログラムが失敗したとみなされるなら、バブル化している日本の国債市場は壊滅的なまでに崩壊する恐れがある。

筆者は初め、アベノミクスを大いに支持していたが、安倍首相が昨年10月に今年の4月から消費税を8%に引き上げることを決定して以降、日本の先行きを案じるようになった。消費税増税の実施が近づくなか、経済状況を直接感じようと筆者は日本を訪れた。自分の目で見たこと、そして、金融当局者や財界人たちから聞いたことは、筆者が抱いていた懸念をいっそう高めるものだった。

金融緩和、財政出動、成長戦略という「3本の矢」から成るアベノミクスは当初、デフレから脱却できない日本経済に風穴を開けるものだとして大いに期待されていた。

しかし昨年10月までに、3本のうち2本の矢がコースを外れてしまった。昨夏には、労働規制やコーポレートガバナンス(企業統治)、競争政策や年金運用における構造改革がすでに断念あるいは無期限に先延ばしにされた。財務省が長年訴えてきた消費税10%の要求を安倍首相がのんだとき、財政の「矢」はブーメランに変わり、2014年と15年に景気が加速するとの期待を脅かすこととなった。

このブーメランは日本を直撃する。消費税は4月1日からこれまでの5%から8%に、また来年10月からは10%に引き上げられる予定だ。財務省の未発表の予測に基づく国際通貨基金(IMF)の推計によると、消費増税によって、今年はGDPの約2.5%相当分、来年はさらにプラス同1%程度の財政引き締めになるという。そうなれば日本の経済成長伸び率は、2013年の2.5%から1.4%に減速すると予想されている。

だが、現実にはさらに悪くなる可能性を秘めている。財務省がまとめた民間セクターの予想成長率は今年わずか0.8%だが、多くの民間予測が、理論上、消費増税の影響を相殺するべく実施されるであろう、さまざまな成長促進対策への期待を見込んでいることを考えると、おそらくこれでも楽観的過ぎると言えるかもしれない。

そのような対策はおおまかに6つに分類できるが、いまやこれらすべてが、かなり見込みのないように思われる。

1.投資、生産性、雇用を刺激するための構造改革

女性の雇用促進からコメの生産調整まで、現在30以上の改革法案が国会で審議されているが、大半は期待を裏切るもので、向こう数年間の経済成長に大きな影響を与える可能性は低いだろう。

2.増税分を相殺可能な3%以上の賃上げ

春闘一斉回答の結果では、最も収益を上げている企業であるトヨタ自動車(7203.T)や日立製作所(6501.T)のベースアップ(ベア)でさえ基本給の1%未満だった。日本の多くの被雇用者は相当額のボーナスや年功序列型賃金を期待できるものの、基本給は個人消費の主な決定要因であり、これまでの経験からいうと、増税後は実質ベースで下がる可能性がある。

3.法人実効税率の引き下げ

投資を促進し、財政的歯止め(フィスカルドラッグ)を埋め合わせるために、法人実効税率の引き下げに関する議論が昨年活発に行われた。だが、以下の2つの理由から却下された。

第一に、法人実効税率引き下げが、歳入を長期的に拡大するという消費税増税の目的を無駄にする可能性があること。第二に、それほど信ぴょう性のない話だが、財務省と与党・自民党には、税金を最大限活用し、その金を公共事業に投入してデフレ効果を相殺する傾向があるということ。

4.約6兆円の公共事業費

2014年度の公共事業費は前年度当初比12.9%増となる約6兆円と発表されたが、これは単に2013年に増額・実行された公共投資を継続するにすぎない。増税後に景気が腰折れすれば補正予算が組まれる可能性はあるが、適切なプロジェクトの不在や建設労働力不足、セメントなどの資材不足などから、政府が公共事業にさらに金をつぎ込むことは難しい。

5.年金の運用見直し

日本株を上昇させ、消費者マインドを押し上げるためにさまざまな規制措置が可能だろうが、昨年6月に変更された年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用見直しからも分かるように、その余地は限られている。年金運用の基本ポートフォリオを国内債券から株式へと大きく転換し、日本株への需要が急増することが期待されていたが、GPIF内部の官僚的抵抗によってわずかな変更しかもたらされず、次は2015年まで見直されない見通しだ。

6.積極的な金融緩和

日本の景気が深刻な減速に見舞われた場合は、積極的な金融緩和が最後の頼みの綱となるだろうが、日銀はすでに2014年末までにバランスシートを2倍に増やそうとしている。また、単に債券購入を増やせば、経済成長に効果があるのかという点も全く不明である。株式市場を活性化させるための別の選択肢は、日銀が債券の代わりに株式を買うことかもしれない。ただし、株価の上昇が、本当に経済成長に寄与するかは別の話だ。

要するに、来月の消費増税で景気が落ち込んだ場合、日本には説得力のある選択肢が何もないように思われることだ。もちろん、そんなことが起きないことを誰もが期待している。

しかし、期待は戦略ではない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*アナトール・カレツキー氏は受賞歴のあるジャーナリスト兼金融エコノミスト。1976年から英エコノミスト誌、英フィナンシャル・タイムズ紙、英タイムズ紙などで執筆した後、ロイターに所属した。2008年の世界金融危機を経たグローバルな資本主義の変革に関する近著「資本主義4.0」は、BBCの「サミュエル・ジョンソン賞」候補となり、中国語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル語に翻訳された。世界の投資機関800社に投資分析を提供する香港のグループ、GaveKalDragonomicsのチーフエコノミストも務める。

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