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アングル:公的支援要請の中国熔盛、「大きすぎてつぶせない」のか
2013年7月8日 / 06:03 / 4年前

アングル:公的支援要請の中国熔盛、「大きすぎてつぶせない」のか

7月8日、民間造船会社で中国最大手の中国熔盛重工集団は先週、公的支援を要請した。昨年5月撮影(2013年 ロイター/Aly Song)

[香港/北京 8日 ロイター] - 民間造船会社で中国最大手の中国熔盛重工集団(1101.HK)は先週、公的支援を要請した。当局は、大手雇用主とその雇用を保護するのか、それとも、熔盛を破綻させ、過剰能力と受注減に悩むセクターへの圧力軽減を図るのか、厳しい選択に迫られている。

中国政府のスタンスが、投資主導の成長モデルの変革や、信用拡大のコントロールであることを考えると、熔盛を待ち構える運命は暗い、と思われるかもしれない。

しかし、熔盛がおよそ2万人もの従業員を擁し、当局との関係が深いことを踏まえると、アナリストらは、中国政府は熔盛が大きすぎ、またコネも強力すぎることから、経営破綻させるわけにはいかないとの判断に達するのではないか、とみている。

同時にアナリストは、熔盛を支援することは、中国の経済改革計画が頓挫することを意味するものではない、との見方を示している。そうではなく、改革が段階的に実行されること、また、政府が企業を選別して支援することを意味しているという。

UOBカイ・ヒアンのアナリスト、ローレンス・リー氏は「熔盛は業界の旗艦企業。このような企業が苦境に陥れば、政府は間違いなく支援するだろう」と述べた。

中国の造船業はここ10年で、建造能力でみて世界最大手に躍り出た。ただ海運業はこのところ世界的に低迷、中国造船業界の全体の新規受注は昨年、半減した。熔盛の場合、昨年の受注は目標の18億ドルに対して、5560万ドルにとどまった。

中国熔盛重工集団は先週末の5日に、政府に金融支援を要請。一部の従業員をレイオフしたことや、サプライヤーなどへの支払いが遅れていることを明らかにした。

熔盛はまた、株主に対しても支援を要請したほか、既存の信用枠の更新に向けて銀行などの金融機関と交渉していると明らかにした。2012年の年次報告書によると、熔盛の短期の借り入れは、同社が保有する現金および現金同等物の8倍に上る。

2012年通期は、5億7260万元(約9347万ドル)の純損失を計上し、過去最悪を記録した。2013年上半期についても、赤字の可能性を警告している。

年次報告書によると、熔盛は香港市場に株式を上場した2010年以来、政府の補助金を受けてきた。新規株式公開(IPO)の目論見書によれば、熔盛は、同社が本拠を置く江蘇省・如皋の市当局から、約5億2000万元の補助金を受けている。

こうした補助金は新タイプの船舶の研究開発に使われた。熔盛は補助金が支給された理由として「われわれが地域経済で重要な役割を果たしている」ことを挙げた。

熔盛は「今後も同様の補助金を受けられるのかどうか、確証はない。補助金を受けられなければ、当社の利益と利益率は大幅に落ち込む可能性がある」と指摘する。

熔盛が明らかにしたところによれば、2010年には8億3000万元、2011年には12億5000万元、2012年は13億元の公的な補助金を受けている。

中国経済が少なくとも14年ぶりの低成長に向かうなかで、熔盛のように苦境に陥る企業が増えている。関係筋が今年3月に明らかにしたところでは、同じく江蘇省を本拠とする太陽電池パネル大手、尚徳太陽能電力(サンテックパワー)STP.Nは、需要減退と供給過剰を背景に、政府による救済を待っている。政府は、同社の評判を汚すような見苦しい倒産を避けるべく、同社を救済する道を探っているという。

<夢のあと>

中国造船業の苦境は政策が招いた面もある。2008年以降の世界的な需要減退が、業界に打撃を与えたことは確か。しかし、一部産業で世界的な優位に立つことを夢見た中国は2000年代初頭、15年までに世界首位の造船国になると宣言した。

中国の造船会社の数は、政府による後押しを受けて急増。中国が主導する格好で、世界の造船業界はここ10年間で、新規の建造能力が3倍に拡大した、という。

中国船舶工業行業協会(CANSI)のデータによると、中国の造船所の数は2012年は1647に達した。うち60%以上が、熔盛が本拠を置く江蘇省にある。

一方、フランスの海運ブローカーのBRSによると、中国の主要なライバルである韓国と日本では、稼働中の造船所の数はそれぞれ10カ所、15カ所にすぎない。

世界的な海運の低迷と、生産能力の急激な拡大が今や、中国造船業に大きな打撃を与えている。造船協会のデータによると、中国の造船会社のおよそ5分の1が2012年に赤字を計上しており、その数は2011年に比べて倍近くになったという。

造船関連のある当局者が匿名を条件に語ったところによれば、江蘇省揚州市では、小規模な民間の造船会社のうち、最大80%が近年、経営破綻した、とされる。

中小造船会社の倒産で、どの程度の雇用が失われたのか、公的なデータはない。

こうしたなか、中国政府は相変わらず、業界への支援を行っている。アナリストは、業界における支配的な立場を理由に、熔盛に対しても支援を行う、とみている。

政策目標に沿って貸し出しを行う中国輸出入銀行は1月、中国の造船会社を支援するため、今年は船舶の購入・リース向け融資を約30億ドル拡大すると発表した。

新華社が運営する経済参考報が今月に入って報じたところでは、中国は昨年、15年以上使用している船舶を早期に廃棄する場合、コストの20%を政府が負担するという計画を考案したが、反対意見もあり、公には発表されなかったという。前政権が検討していたこの計画を、新政府が却下したのかどうかについては明らかでない。

<強力なコネ>

3月に発足した中国新政権は、投資主導の成長や輸出への依存度を減らし、より消費主導型の経済成長にシフトさせる方向での改革を推し進める姿勢を示している。

李克強首相は先週、過剰生産能力を抱える一部工場の秩序だった閉鎖を進める方針を発表。中国国務院(内閣に相当)の声明は特定の産業や企業には触れなかった。

アナリストらは、熔盛重工集団がその他の企業と違う点は、政府や国有銀行との関係だと指摘する。たとえば、年次報告書によると、熔盛の陳強・最高経営責任者(CEO)は中国国務院が支給する「特別な政府の手当」を受け取っているという。

熔盛はまた、IPO目論見書のなかで、中国輸出入銀行との間で2014年、15年までの期間5年の2件の資金調達で合意していることを明らかにした。中国銀行(3988.HK)との間でも、2009年から始まる10年の契約を結んでいる、という。

専門家らは、熔盛重工集団は強力なコネを持っているため、たとえ中央政府が支援しない場合でも、地方政府は同社を破綻させないだろう、との見方を示している。

結局のところ、熔盛が経営破綻した場合に最も大きな打撃を受けるのは、地方政府の財政だ。熔盛の2012年の繰延税金は、1億6800万元に達する、という。

世界的な海運サービスプロバイダーであるクラークソン・アジアのマネジングディレクター、マーティン・ロー氏は「最先端かつ真新しい設備を持つ、世界最大の造船所の1つが、造船を完全に停止するとは、非常に考えにくいことだ」と述べた。

Koh Gui Qing記者、Yimou Lee記者;翻訳 吉川彩;編集 佐々木美和

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