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コラム:円安で競争力増の日本企業、高い米依存が先行きは有利に
2013年8月5日 / 04:42 / 4年前

コラム:円安で競争力増の日本企業、高い米依存が先行きは有利に

8月5日、2日までに決算発表した東証1部(除く金融)企業の2013年4─6月期経常利益は、前年同期比プラス48.6%と大幅に伸びた。円安効果で国際競争力が増し、収益の好転につながる企業が多かった。川崎市で昨年10月撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

田巻 一彦

[東京 5日 ロイター] - 円安効果で日本企業の業績が好調だ。2日までに決算発表した東証1部(除く金融)企業の2013年4─6月期経常利益は、前年同期比プラス48.6%と大幅に伸びた。円安効果で国際競争力が増し、収益の好転につながる企業が多かった。

ただ、新興国の経済減速が今年後半に鮮明になりそうな中、相対的に好調な米経済を背景に米国依存度の高い企業の業績が一段と好調になるなど2014年3月期の企業業績にコントラストが出てくる可能性がある。

<増益率、製造業が非製造業を引き離す>

みずほ証券リサーチ&コンサルティングのまとめによると、8月2日までに決算を発表した東証1部(除く金融)企業の2013年4─6月期の売上高は、前年同期比プラス8.1%、営業利益は同プラス40.0%、純利益は同プラス134.1%だった。

業種別に13年度第1・四半期の経常利益の水準をみると、鉄鋼が前年同期比プラス403.7%と突出して高く、次いで海運が同325.2%、電気機械が同250.7%と続く。高収益が予想されていた輸送用機器は、同42.9%と高水準ながら電機を下回っている。

全般的に素材型の収益回復が目立ち、素材産業が同178.9%と加工産業の同44.6%を大きく引き離した。製造業の平均は同60.6%。

非製造業(除く金融)は、水産・農林の赤字幅が拡大し、空運が前年同期比マイナス76.2%、鉱業が同26.9%、倉庫・運輸が同21.5%と足を引っ張り、平均で前年同期比プラス33.5%と製造業に及ばなかった。

<鉄鋼・海運・電機・輸送用機器が円安効果大きく>

この結果について、同社のシニアクオンツアナリスト、米澤忍氏は「前年同期はまだ東日本大震災の影響やタイの洪水被害の打撃が残っていて、発射台が低い点を考慮する必要がある。その上で言えることは、やはり円安の影響が各社の好業績に大きく影響しているということだ」と指摘する。

特に伸び率の高かった鉄鋼、海運、電機、輸送用機器の各業界は、円安の恩恵をフルに受けた構図が浮かび上がってくる。

他方、赤字の水産・農林や減益の空運、倉庫・運輸などは円安でエネルギーをはじめ各種のコストが上昇し、それを吸収できなかった傾向があるようだ。円安の効果と副作用が、企業決算の明暗を分けたと言えるだろう。

<企業は保守的な見通し、14年3月期は予想比小幅増益にどとまる>

ただ、円安効果がこの先も加速し、2014年3月期の予想経常利益が一段と膨れ上がるかと言えば、それを阻む要因もあるようだ。

米澤氏によると、8月2日までに決算を発表した企業の2014年3月期の経常利益見通しは、前年同期比プラス33.3%だが、全ての東証1部(除く金融)企業が発表した段階では「30%を少し切る水準に着地するだろう」と予測している。

この水準は、今回の決算発表前に企業が予測していた同26%を数ポイント上回るにすぎない水準だ。米澤氏は「想定レートと現実の為替レートにかい離があり、円安が増益になる余地はかなりありそうだが、企業側が保守的な見方を変えていない面がある」と分析。増益余地はかなりあるとの見方を示している。

<注視すべき中国リスク、対米販売比率高い企業が有利に>

しかし、その見方に冷水をかける要素がゼロでないことも事実だ。その中で最も大きな項目が、中国を含めた新興国経済の調整深刻化リスクと言える。

米澤氏も「鉄鋼の一部で、慎重な見方を示しているところでは、中国の業績を厳しめにみている。中国を含めた新興国の景気動向が、企業業績に与える要素は、今後も注視していく必要がある」と述べている。

私はさらに2つの点を指摘したい。1つは新興国とは対照的に米経済が堅調さを示しており、米経済の依存度が高い企業と、売上高に占める新興国の割合が高い企業との間に、業績の明暗がくっきりと出てくるのではないか。

新興国向けのシェアが高い一部の電機、機械メーカーは業績の下振れ圧力に直面する可能性が高いと予想する。

対照的に北米での販売の比重が大きい自動車メーカーには、今年後半の世界経済動向は、大きな追い風になるだろう。

もう1点は、シャドーバンキングや不動産取引に関連し、信用の破裂リスクがささやかれている中国経済の懸念だ。大きなイベントリスクが顕在化しなければ問題ないが、正確な市場データが公開されていないとの指摘が海外勢から数多く出ている中、想定外の展開が起きないと断言できない面がある。

欧米系金融機関の中には、中国における社債発行企業には、欧米基準では適格ではない企業が少なからず含まれているという報告書をまとめたところもある。

新興国でのリスクが顕在化した場合、リスクオフ心理が台頭して円高になるシナリオが考えられる。円高の進展は、現在の日本企業の明るい未来に大きな打撃を与えることになるだろう。その意味で、中国を含めた新興国のリスクには、注意し過ぎるということはないと指摘したい。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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