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焦点:アベノミクスが活性化する企業投資、資金は海外へ
2013年9月26日 / 05:34 / 4年前

焦点:アベノミクスが活性化する企業投資、資金は海外へ

9月26日、安倍晋三首相が掲げる「アベノミクス」は、大手自動車2社が相次いで生産能力拡大のための大規模投資計画を打ち出したことで、早速その成果が示された。写真はバンコク郊外にあるフォード・マツダの合弁会社の工場。17日撮影(2013年 ロイター/Chaiwat Subprasom)

[香港/バンコク 26日 ロイター] - 安倍晋三首相が、日本の産業と経済の活力復活のために自ら青写真を描いた政策「アベノミクス」は、大手自動車2社が相次いで生産能力拡大のための大規模投資計画を打ち出したことで、早速その成果が示された。

ただしこれには1つの難点がある。マツダ(7261.T)とホンダ(7267.T)が発表した工場の新設や拡張は日本国内ではなく、2000マイル以上も離れたタイで実施されるのだ。

実のところ、安倍首相が昨年12月の就任以降に行ってきた刺激策をもってしても国内における民間セクター投資の退潮傾向にはほとんど歯止めが掛かっていない。逆に日本企業のアジア諸国における投資を驚くほど加速させている。

今年前半の日本国内の設備投資は前年同期比で4%減少。これに対して日本貿易振興機構(JETRO)によると、日本企業のアジア投資は22%も増えた。

HSBC(香港)の日本担当エコノミスト、デバリエ・いづみ氏は「日本における製造業投資はなお縮小が続いている。各企業は海外に投資しているからだ」と指摘した。

日本政府による財政支出や円安の進行も、製造業が依然として国内の人口減少や高コスト、規制面の障壁などに見切りをつけて、急成長を続けてより経済が若々しいアジア諸国になびいているという事実を隠しようがない。

ゴールドマン・サックス・アジアの元副会長で現在はスターフォート・インベストメンツ(香港)を率いるケネス・S・カーティス氏は「日本企業の国内投資に対するインセンティブは圧倒的に小さい。長期的な人口動態には大きな問題があり、円の価値とともに自らの力が弱まることへの恐れが海外投資をますます促している」と述べた。

<資金は国内投資に向かわず>

東南アジア諸国に対する日本企業の直接投資は今年前半に約3倍増えて60億ドル程度になった。この地域への邦銀の融資額は過去最高に達し、日本企業による合併・買収(M&A)金額も今年、最高ペースとなっている。

日本政府はアジア諸国との関係強化などの理由で投資を積極的に促進し、こうした海外投資が円安の一因となって輸出企業の利益を押し上げてる面もある。

しかし企業の増益が日本経済に資するのは、それらの利益が投資拡大や賃金引上げに使われた場合に限られる。ソシエテ・ジェネラル証券東京支店の会田卓司チーフエコノミストは「デフレを脱却するためには、われわれにとっては企業の貯蓄率がマイナスになることが必要だ。企業は設備投資の実行を求められている」と強調する。

日銀の資金循環統計からみると、日本企業は昨年6月から今年6月までに約1440億ドルを貯め込み、手元流動性の総額は2兆24000億ドルになった。これはつまり企業が純利益を1円増やすごとに、その4分の3が銀行に預金される計算だ。さらにHSBCによると、企業の既存設備の償却は、設備更新を上回るペースで行われている。

<遅い決定>

日本企業の経営陣は保守的で大きな決定をするまでに何年もかかるというのは有名であり、マツダが1月に発表したタイで2億6200万ドルを投じて工場を拡張する計画も、安倍政権誕生前の昨年初めに採択した東南アジアで販売台数を約3倍に増やすことを狙った経営戦略の一環だった。

このため一部のエコノミストは、アベノミクスの効果を反映した形の投資が出てくるのは数年先になる可能性があると話す。また過去3カ月間は1ドル=95─100円のレンジで推移している円がまだ十分に弱くなっていない点に着目する向きもある。

ソシエテ・ジェネラルの会田氏は「日本企業が現在、活発に海外投資を行っているのは円がなお強過ぎるからだ。円はもっと安く、恐らくは110円ぐらいになる必要があり、来年それが実現するケースもあり得る」と述べた。

それでもかつての製造業大国だった英国や米国が教訓を得てきたように、製造業の海外シフトがいったん始まれば、通貨安にその流れを逆転させる十分な力はない。

<邦銀の融資やM&Aも活発化>

HSBCによれば製造業の賃金は、タイでは日本の10分の1にとどまる。だからこそホンダの国内生産比率は過去10年で半減して22%となったのに対して、東南アジアでは3倍以上も高くなって約11%に達し、その大部分をタイが占めている。ホンダは今年2月、同国で過去最大規模の6億3400万ドルを投資する方針を表明した。

ただ、コストはいくつかある要因のうちの1つにすぎない。ホンダのタイ部門のPitak Pruittisarikorn副社長は投資理由について「労働コストが低いからでなく、タイには熟練労働者の存在をはじめとする多くの面で潜在的な力が備わっているためだ」と説明した。

東南アジアはまた、日本には提供が不可能なプラス材料を持つ。それは中間層人口の拡大だ。日本では4人に1人が65歳以上高齢者で、総人口も昨年は28万4000人減って1億2750万人となった。

JETROハノイ事務所の西川壮太郎所長は「われわれは高齢化社会に直面している。もし日本だけに投資しているなら、今後生き残ることはできない」と言い切った。

日本から東南アジアに投資しているのは事業会社だけではない。国際決済銀行(BIS)によると、邦銀の東南アジア向け融資額は今年第1・四半期末までに約8%増加して1528億ドルになった。タイ向けが17%、フィリピン向けが27%それぞれ増えて全体を押し上げた。

邦銀にとってこれらの融資は取引先企業の進出に合わせるという面だけでなく、実質ゼロ金利の国内よりも利ざやが稼げる利点がある。

M&Aの主役も邦銀だ。今年これまでの日本企業による東南アジアでのM&A金額は既に過去最高の82億ドルに上っている。これを引っ張ったのは三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)が57億ドルを投じて行ったタイの大手商業銀行アユタヤ銀行(BAY.BK)の買収だった。

こうした投資は、インドネシアルピアの急落のような事態にはあまり効果がないが、もう少し経済規模の小さい国にとっては資金流出に伴う打撃を緩和する役割を果たしている。

例えばタイは第2・四半期に証券投資が45億ドルの資金流出となったが、JETROによると日本企業からの投資によって12億ドルが戻ってきたという。

(Wayne Arnold、Orathai Sriring記者)

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