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コラム:順風満帆の黒田日銀、死角は米国債デフォルトリスク
2013年10月4日 / 10:20 / 4年前

コラム:順風満帆の黒田日銀、死角は米国債デフォルトリスク

10月4日、黒田日銀の歩みは「順風満帆」と言えるが、米財政協議の難航を起点にした米国債デフォルトリスクなどが死角になる可能性がある。写真は会見する黒田総裁(2013年 ロイター/Issei Kato)

田巻 一彦

4月4日に異次元緩和を打ち出して以来、消費者物価(除く生鮮、コアCPI)は順調に上昇し、経済環境は全般に好転して、黒田日銀の歩みは「順風満帆」と言えるだろう。ただ、米財政協議の難航を起点にした米国債の債務不履行(デフォルト)リスクなど海外要因が死角になる可能性がある。

もし、異変が起きた場合には、黒田総裁の国際金融における経験と俊敏な判断力が生かされる展開になると予想する。

<黒田緩和の半年、自己採点は100点満点か>

黒田総裁の目から見れば、この半年の日銀のパフォーマンスは100点満点に近いのではないかと予想する。きょう4日の会見でも、株価の上昇や長期金利の低位安定、予想物価上昇率の上昇による実質金利の低下を推進力に「民需を刺激していると思う」と指摘。「量的質的金融緩和はその効果を着実に発揮している」と述べた。

また、さらに最大の目標である2年で物価を2%上げるという点でも、8月のコアCPIが前年比0.8%上昇まで上がってきていることに触れながら「今後、さらに上昇していく見ている」と断言。「2%の物価安定目標の達成に向けて想定される道筋を着実に進んでいると思っている」と、目標達成に自信を示した。

さらに懸案のポートフォリオリバランスについても、大手銀が海外の貸し出しを伸ばすなどリスク資産を増やしていると評価し、地銀を含めた金融機関全体についても「徐々に進んでいっているし、今後も進んでいくだろうと思っている」と前向きの評価を下した。

こうした黒田総裁の自信にあふれた会見での自己評価をみていると、半年前に比べ「黒田緩和」の目標達成への可能性が高まっているように見える。

<立ちはだかる米財政リスク>

ただ、順調に言っている時ほど、視野から欠落したリスクに足をすくわれる可能性に注意するべきではないか。「好事魔多し」という表現が、すたれることなく残っているのは、そうした理由があるからだと考える。

黒田総裁にとって、隠れた大きなリスクはやはり米財政問題を起点にしたドルと米国債のリスクだと考える。米議会における財政協議が難航し、米政府機関の閉鎖は4日目に入った。このまま2-3週間と閉鎖が長期化すれば、米国の国内総生産(GDP)を0.3─0.5%下押しするとの試算も出ている。

黒田総裁も「こういう状況が長引くと、かなり深刻な影響が米国経済、ひいては世界経済に及ぶ恐れがある」と指摘した。

<危機回避に注目されるハスタート・ルールの非適用問題>

マーケットは米政府機関の閉鎖長期化だけでなく、その先に待ち受ける米国債デフォルト・リスクにも神経質になってきた。

市場関係者が心配しているだけでなく、米国債発行の責任者である米財務省が、デフォルトした場合には「2007年─09年よりも深刻なリセッションに陥る恐れがある」と警告。「信用は市場はまひし、ドルは急落、米国の金利は急上昇しかねない」と分析した。

オバマ大統領と与党・民主党は、いわゆるオバマケアの予算執行を1年延期すべきという野党・共和党の主張に妥協しないと明言しており、今のところ決着の見通しは立っていない。

米政界に詳しい識者などの話を総合すると、1)米下院共和党のベイナー議長が、共和党議員に党議拘束を求める「ハスタート・ルール」の適用をやめれば、下院で民主党案が可決される、2)オバマ大統領が憲法修正14条を根拠に大統領の権限で債務上限を引き上げる──などの道があるという。

このため米市場関係者の中では、最終的に米国債のデフォルトは回避されるという楽観論が今でも支配的なようだ。

<懸念されるテールリスクの現実化、リーマン危機と酷似>

だが、私には5年前のリーマンブラザーズ破綻のケースが目の前に浮かんでくる。あの当時も、リーマンを破綻させる際のリスクと回避で得られる利益を考えれば、破綻の選択はありえない、という見方が事前には圧倒的に多かった。

しかし、現実は全くの別の展開をたどった。今回も上記に示したようなデフォルト回避の道は、いくつも残されているが、土壇場における米政界の大立者の判断次第では、「まさかのデフォルト」も可能性がゼロではない、と思われる。

黒田総裁は、この日の会見で、最悪の事態に陥った際の日銀の対応について「一般論としては、中央銀行はどこでもどんなことにも対応できるような能力がある」と述べた。

「万が一」の事態が発生した場合は、7カ国財務相・中銀総裁(G7)による緊急の対応を含め、あらゆる措置が実行され、中銀は日銀を含め、流動性の供給に万全を期すことになるだろう。その際には、黒田総裁の国際金融における長い経験が発揮されるに違いない。

米債務の上限が来る今月17日を前に、米議会での妥協がないまま時間だけが経過していく事態になった場合、ある時点でいきなり市場の緊張感が急上昇し、株式、債券、外為の各市場が大変動に直面することも予想される。

現在は、テールリスクに過ぎないものの、世界経済は「カチカチ」となる時限爆弾を抱えながら、不安な時を過ごすことになる。

[東京 4日 ロイター]

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