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コラム:英独取引所合併破談、真の敗者は経営陣のみ
2017年3月30日 / 04:46 / 6ヶ月前

コラム:英独取引所合併破談、真の敗者は経営陣のみ

 3月29日、ロンドン証券取引所グループとドイツ取引所の合併計画が、EU欧州員会から正式に却下された。写真は記者会見を行うベステアー委員。ブリュッセルで撮影(2017年 ロイター/Yves Herman)

[ロンドン 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ロンドン証券取引所グループ(LSE)(LSE.L)とドイツ取引所(DB1Gn.DE)の合併計画が、欧州連合(EU)欧州員会から正式に却下された。これによって多くの人々が悲しみにくれているようだ。

合併を認めなかった当の欧州委員会は、LSEが傘下のイタリア債券取引プラットフォーム「MTS」売却を拒否したことを嘆かわしく思っている。MTS売却で競争上の懸念が和らぐと期待していたからだ。逆にLSEとしては、欧州委が最初からMTS売却に固執したのが残念でならない。一方、ドイツ取引所は、欧州最大となる時価総額約300億ドル規模の取引所誕生がなくなったことが悲しい。

合併が破談になったのはだれの責任かを正確に解明するのは難しいが、LSEのロレット最高経営責任者(CEO)にはその一部が帰せられる。欧州委のベステアー委員(競争政策担当)が、LSEが当初申し出ていた清算機関LCHクリアネットの売却だけでは競争問題解決に不十分だとの考えをはっきり示していたのに、ロレットCEOはMTS売却を断った。LSE側の重要資産を手放すには時間が足りないという主張にはある程度根拠があるとはいえ、乗り越えられない壁ではなかったはずだ。

だが結局のところ、破談になったからといって涙する必要はない。計画が進んでいれば相当なシナジー(相乗効果)を生み出すことが可能だった。しかしドイツの規制当局や政治家は、統合後の本社をロンドンに置くという決定をまるで相手にしなかった。ドイツ取引所のケンジェターCEOにインサイダー取引の疑いで捜査の手が伸びた点に関して、LSEが懸念を抱いていなかったとすれば奇妙な話になる。さらにブレグジット(英国のEU離脱)問題があった。

ブレグジットの影響は、両社の雇用削減についてのすべての決定に影を落とし、コスト節約の取り組みは損なわれるだろう。同じ理由で「清算取引を行う顧客が差し入れる証拠金を減らす好機」という合併計画の本来のアピール要素も、実現の可能性がどんどん減少しているようだ。恐らくは、LSEのLCHクリアネットとドイツ取引所のユーレックスはどちらかがどちらかに事業を譲る必要が出てくる。

このように合併に伴うマイナス材料がそろっているからこそ、破談を受けて両社の株価は小幅ながらも上昇した。投資家は、シナジーなど達成できないとずっと前から判断していたのだ。合併を発表した2016年2月直前と比べると、いずれも株価は上がっている。株主が数百万ユーロを手数料の形で支払うという事実を別にすれば、今回の件で真の敗者と言えるのはロレット、ケンジェター両CEOとそれぞれの経営陣だけだ。彼らは、初めから明らかだったリスクに目を向けようとしなかったのだから。

●背景となるニュース

*欧州委員会は29日、ドイツ取引所とLSEの合併計画を正式に却下した。

*欧州委は、合併で債券商品の清算事業が事実上独占状態となり、決済や証券保管、担保管理などにも影響が波及すると指摘。LSE傘下の清算機関LCHクリアネット売却提案については、個別株デリバティブを巡る懸念を払しょくできるが、債券清算に対する問題解決にはならないとの見解を示した。

*また欧州委は、MTSの売却という提案が実現しても、LSEは統合後の収入や時価総額に比べて失う資産は小規模だったと付け加えた。

*LSEは声明で、2億ポンドの自社株買い計画を発表した。

*ドイツ取引所は、欧州委の決定により欧州を拠点とする世界的な市場インフラを提供する機関が生まれる機会を失ったことに遺憾の意を表明した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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