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〔Market Views〕トランプ相場の調整、世界協調体制の「綻び」警戒も
2017年3月22日 / 07:46 / 6ヶ月前

〔Market Views〕トランプ相場の調整、世界協調体制の「綻び」警戒も

[東京 22日 ロイター] - 世界的な株安と円高が進んでいる。トランプ米大統領が掲げる政策の実現に時間がかかりそうだとの見方が広がっているのが一因だ。大型減税などの政策期待がはく落したわけではなく、調整の範囲内とみられているが、世界協調体制の「ほころび」を警戒する声も出ている。米経済など景気自体は悪くないものの、株価が高値圏にあっただけに、調整幅が大きくなる可能性もある。

識者の主な見方は以下の通り。

●赤字削減に拘泥する米国、行き過ぎれば株安をトリガー

<マーケット・ストラテジィ・インスティチュート 代表 亀井幸一郎氏>

前週末の20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、予想通りでサプライズなしとの受け止めが金融市場では多かったようだ。しかし、個人的には、トランプ政権の貿易赤字削減に向けた強い意志を最終確認したという点で大いに意味があるととらえている。

米政権は、貿易相手国との関係で、赤字が大きいケースを「不均衡」ととらえ、その背景には「不公正」な取引慣行があり、その是正に2国間交渉で臨むというスタンスだ。赤字の偏りとなっている理由を深く検証せずに、赤字=害悪と直線的なトランプ大統領の解釈を元にした行動を修正せずに国家を挙げて取り組み始めたのは驚きに値する。

こうした米国の取り組みは、世界経済にも金融市場にも良い話ではなく、米貿易赤字を基盤にしたドルの自動還流システムを阻害する試みであり、行き過ぎれば、高値圏にあるニューヨーク株は持たないのではないかとみている。

S&P総合500種とダウ工業株30種は21日、いずれも1%超下落し、昨年11月の米大統領選以降で最大の値下がりとなった。大幅安の後には、押し目買いという考え方をする人も出てくる。だが、米政策の実施が遅れることへの懸念が強まり、コアの支持層もトランプ離れするようになれば、本格的に期待先行相場のほころびが出てきて、債券は買い戻し、株は売り戻しとなるだろう。

為替市場では、欧州大陸でポピュリズムの広がりがあったとしても、ユーロ圏経済に深刻なダメージを与えないとの見方や、欧州中央銀行(ECB)の出口戦略など、ユーロ買い材料に新鮮味がある。このため1.1ドル以下のユーロは売られ過ぎであるとみている。ドル/円は米政治リスクから4―5月に110円を割り込む可能性があると予想する。

●トランプ相場の半値戻しドル109円台目指す可能性

<FXプライムbyGMO 常務取締役 上田眞理人氏>

ドル高が失速した背景にはいくつかの要因がある。第一に、トランプ政策について、その具体策も期日も見えず、市場参加者が政策の実現可能性に「危うさ」を感じ始めたことだ。オバマケアを廃止するのはいいが、その後どのような仕組みを考えているのか、大型減税の財源をどうするのかなど、米上下院で共和党が多数を占めている現状で、施行に向けて鋭意協議を進めていくかと思いきや、肩透かしをくらっている。

第2に、欧州の政治リスクが若干後退していることで、ユーロに買い戻しが入っていることだ。万が一、欧州で政治リスクが高まったとしても、弱いドルの地合いに鑑みて、リスクオフのドル買いとはならず、円買いが際立つことになるだろう。

第3に、原油価格の下落により、これまでは資源国・新興国通貨が売られ、その代わりにドルが買われていたが、現状ではドルへの資金還流はみられない。

第4に、米連邦準備理事会(FRB)は先の利上げを通過した後、ハト派的になってきていると感じられ、利上げ期待からドル買いという連想が働かないことだ。

以上から、ドルの上値が相当重くなっていることは確かで、大崩れはしないと思うが、テクニカルにはトランプラリーのピークから38.2%戻しを通過してしまった。ドルにポジティブな大きな材料がない限り、次に目指すのは50%戻しの109.92円になる。ドルに不安も期待もない状況で、期待で先行した部分が剥落していると言えるだろう。

●米政策期待は継続、日本株の高値更新には時間

<三菱UFJ国際投信 チーフストラテジスト 石金淳氏>

トランプ氏が米大統領に当選して11月以降、米国株は12月から1月にかけて横ばいとなった局面もあるが、3カ月以上にわたり上昇を続けてきた。調整局面に入るのはある意味当然だ。高値警戒感が出ており、バリュエーション的に見ても割高な水準にあった。

問題は今回の急落が米国株の上昇トレンドの終焉(しゅうえん)なのかどうかだが、そこはまだ判断できない。数日前まで米国に出張していたが、すでに現地では景気刺激策の具体化が遅れるのは当たり前との見方が広がっていた。

米国への政策期待についてはこの先、盛り上がったり、萎んだりを繰り返すこととなるだろう。ただ、減税やインフラ投資関連は、基本的には「やらざるを得ない」政策の部類に入る。米国民の多数から支持も受けやすく、時間がかかっても実行されていくとみている。

一方、国境税については、非現実との空気がワシントンでも広がっている。国境税が撤回された場合、その分減税幅が抑えられる可能性もあるが、撤回自体はマイナスの話ではなく、大きな失望を生み出すことは考えにくい。

(米上院銀行委員会幹部が大幅修正への不支持を表明した)ドッド・フランク法も、基本的には緩和の方向に向かうだろう。ただし作業量が膨大となるとされており、相当な時間が必要とみられている。

米国の政策は中長期的には期待が維持されるものとみている。だが円安基調と、しっかりとした米国株の両方がそろわない限り、日本株のさらなる上昇は厳しい。

もっとも国内企業業績自体は着実に改善しており、国内外の実体経済もそれなりに良好だ。日本株が高値を取るには時間がかかるだろう。反対に、下値も限定されるとみており、日経平均が1万9000円を割れたところは押し目買いが入りやすい。

●トランプラリーの調整、米経済は順調

<日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 神山 直樹氏>

トランプラリーの調整局面が到来したようだ。これまで株式市場は、トランプノミクスのポジティブな面ばかり織り込み、ネガティブな面を織り込んでこなかった。政策期待がはく落したわけではないが、政策の実現までには時間がかかりそうだという認識が広がってきたことが株安の背景となっている。

ただ、米経済はそうした政策を抜きにしても順調だ。政策の具体化が見込める今秋ぐらいまでは、相場はモタモタするかもしれないが、それ以降は景気拡大とともに、株高基調が戻ってくるとみている。

日本株はアベノミクスの追加策への期待が後退していることもあり、アンダーパフォームしているが、日本企業の業績に最も影響するのは世界景気だ。米国を中心として世界景気が拡大していけば、日本株も上向くだろう。日経平均.N225がいずれ2万円を超えていくというシナリオは維持している。

●短期的な需給調整、先行きはトランプ政策次第   <東海東京証券 機関投資家営業部部長 静間康禎氏>

主力株はすでに1月ごろから上値が重く、買い上がりにくい状態だった。ポートフォリオの中で株式のウエートが大きくなり過ぎたためだ。きょうは前日の米株安をきっかけに海外投資家を中心にウエート調整の売りが出たとみられる。期待先行で上昇したトランプ相場の反動とも言えるが、今のところ需給調整の範囲内だ。ここから本格的なリスクオフに入るかどうかはトランプ政策次第であり、今後の動向を見極めるまで積極的な買いは入れにくい。日経平均は当面1万8500円が下値めどになると見ている。 (伊賀大記 編集:田巻一彦)

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