再送:〔焦点〕急激に進行する円高・原油価格上昇で、一段と強まる景気後退入りへの懸念
*この記事は13日午後6時59分に送信しました。
[東京 13日 ロイター] 13日の外為市場でドル/円JPY=が一時、1995年11月以来となる100円割れとなり、民間エコノミストの間では、原油価格高騰などの悪材料も加わって、日本経済の景気後退局面入りの可能性が一段と強まるとの懸念が台頭してきた。
<足元の円高・原油価格水準続けばGDPを0.7%押し下げも>
エコノミストの間では「日本経済は基本的に外需依存であり、サブプライム(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題による米国のスローダウンよりも、足元の円高が一番の懸念材料。景気後退局面入りの可能性は高まっている」(リーマン・ブラザーズ証券・チーフエコノミストの川崎研一氏)などの声が広がりを見せている。
内閣府の経済モデルによると、円高で輸出の減少と輸入の増加が起き、10%程度のドル安/円高で、日本の実質GDP(国内総生産)は当初の1年間で0.3%程度押し下げられる。政府経済見通しでは、2008年度の実質GDPをプラス2%程度と想定しているが、その前提は1ドル=111円程度。足元の為替水準はちょうど10%程度の円高に相当する。
個別企業がどの程度の為替レート水準で利益がでなくなるのか、という調査もある。06年度の内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」によると、日本の輸出企業の採算円レートは1ドル=106.6円となっており、現在の水準が続けば、輸出企業は採算割れとなる。
最も国際競争力が強い輸出企業とみられるトヨタ(7203.T: 株価, ニュース, レポート)でも、直近の想定為替レートを1ドル1=105円(08年1─3月期)としている。1円の為替変動で営業利益に350億円程度の影響があるとされ、1ドル=100円が続けば、利益が1750億円程度下押しされる計算となる。
さらに「急速な円高を嫌気した株安で、個人消費に悪影響が及ぶだろう。企業が前提としている為替レートは、堅く見積もっても1ドル=104─105円だが、足元のレートはそれを上回る円高水準で、収益見通しの下方修正ないし設備投資の抑制要因となる」(カリヨン証券・チーフエコノミストの加藤進氏)など、内需の2本柱への悪影響も懸念される。
円高に加え、足元の急激な原油高も日本経済の懸念材料だ。ニューヨーク原油先物(WTI)は1バレルあたり109ドル近辺の高水準で推移している。
川崎氏の試算では、1バレルあたり10ドル程度の原油価格上昇は、日本のGDPを0.2%程度押し下げるという。政府経済見通しの前提となっている輸入原油価格は83ドル程度だが、輸入原油価格が103ドル以上に上昇すれば、GDPは0.4%以上押し下げられることになる。
つまり、現状程度の円高と原油価格のダブルパンチが継続すれば、08年度のGDPは、単純計算でも、0.7%ポイント程度押し下げられることになる。
エコノミスト30数人を対象としたESPフォーキャスト調査(2月25日─3月3日)によると、08年度成長見通しは平均でプラス1.6%程度となっており、民間エコノミストは、こうした円高・原油高の動きを既にある程度織り込んでいるが、足元の急激な動きを受けて、来月調査ではさらに見通しが下振れる可能性がある。
<長期的には「悪い物価上昇」抑制効果も>
しかし、円高がもたらすのはマイナスの効果ばかりではない。「長期的にみると、交易条件を改善するプラスの効果もある」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主任研究員の小林真一郎氏)。原油など輸入原材料価格の高騰がこのところ、コストプッシュ的な「悪い物価上昇」を引き起こしているが、そうした悪影響を緩和する効果が期待される。
内閣府のモデルによれば、20%の原油価格上昇は向こう1年で民間消費デフレーターを0.2%程度押し上げるとされているが、10%の円高はそれを相殺する効果があるという。
最近の企業物価をみても、円高の物価抑制効果がみてとれる。2月の契約通貨ベースの輸入物価は前年比21%上昇したが、円ベースでは11%程度の上昇にとどまっている。川崎氏は円高で国内物価が下がれば、消費が増える効果も期待されるという。
しかし、短期的には円高は、マイナスの効果が勝ってしまうという。円高の輸出押し下げ効果は比較的速やかに出るのに対し、輸入物価の低下の国内物価への波及は遅いためだ。小林氏は短期的には、円高は輸出企業のマインド面でマイナス効果が大きいと指摘した。
今後の為替相場について、いったん100円割れとなったことで円高の動きが一服したとはいかないようだ。エコノミストからは「もう少し円高がありうるとみている」(小林氏)、「6月末にむけて1ドル=95円までの円高を想定」(川崎氏)などの予想が聞かれた。
(ロイター日本語ニュース 児玉 成夫記者、武田 晃子記者;編集:田巻 一彦)
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