投資家のリスク資産保有姿勢、LTCM危機時の水準まで低下=日銀金融市場リポート
[東京 31日 ロイター] 日銀は31日、国際金融市場の混乱や2008年前半の国内金融市場の動向を分析した「金融市場リポート」を公表した。金融経済環境の不確実性の増大により、投資家のリスク資産保有姿勢が1998年秋のロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)危機時と同水準まで落ち込んだと指摘。これが市場流動性の収縮につながり、米ベアー・スターンズの経営が行き詰る事態にまで発展したとの見方を示した。
<リスク・アペタイトが急低下>
投資家のリスク資産保有姿勢は「リスク・アペタイト」という概念で示される。リスク・アペタイトは定義により、「投資家のリスク回避度」や「マクロ経済環境の不確実性」が高いほど低下。日銀の試算によると、2008年に入ってからその水準は急低下し、1998年秋のLTCM危機時と同程度にまで落ち込んだ。
日銀では「2008年入り後のクレジット資産に対する継続的な価格下落圧力には、金融経済環境の不確実性の増加に伴うリスク・アペタイトの低下も徐々に影響していった」と分析している。
リポートによると、リスク・アペタイト低下の背景には、米国で金融部門と実体経済の負の相乗作用が進んだことがある。証券化商品の価格調整(リスクの再評価)は当初、「緩んだリスク評価の修正」だったが、米国の景気減速に伴い、徐々に「裏づけ資産のパフォーマンス悪化の反映」に変化。これが、証券化商品の価格下落にさらに追い討ちをかけた。
こうした証券化商品の価格下落を背景に、銀行は与信スタンスを厳格化したほか、流動性の比較的高い債券(地方債や政府系金融機関が組成したエージェンシーRMBSなど)の売却も進めたことから、それを担保とするレポ市場にも波及。金融機関が資金流動性の制約に直面するようになり、市場流動性と資金流動性が相乗的に収縮する中で、ベアー・スターンズの経営が行き詰る事態にまで発展したとの見方を示している。
<インフレ懸念の高まりも拍車>
リポートでは、市場の不安定な状況に拍車をかけたものとして「インフレ懸念の高まり」も挙げた。商品先物市場にはかなりのテンポで投資資金の流入が続き、流動性が上昇。実需要因に伴う商品価格の上昇は、金融要因により増幅された可能性があるとの見方を示した。先行きについても「上下双方向にかなり不確実性が高い」として「商品先物投資が金融商品としてのプレゼンスを高めている以上、価格が大きく変動した場合には、他の金融市場にも相応の影響が及ぶ可能性がある」と警戒感を示した。
<国内は国債市場の流動性低下>
国際金融市場の混乱の影響は、日本にも波及。それが顕著に表れたのは、海外投資家の存在感が大きい中長期円金利市場とクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場だったとし、国債市場は資金流動性の制約に直面したヘッジファンドの急激なポジション巻き戻しや、証券会社のマーケットメーク力の低下により、流動性が低下。さらに世界的なインフレ懸念の高まりの影響もあり、ボラティリティ(価格変動リスク)が高い状態が続いたとの見方を示した。
もっとも、短期金融市場は翌日物金利が概ね安定的に推移するなど、全体としてみると「米欧短期金融市場の日本への波及は2008年入り後も限定的なものにとどまった」と結論付けた。
(ロイターニュース 志田義寧記者)
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