〔金利ウオッチャー〕長期金利0.8%台視野に、欧州債務問題を警戒した資金流入
[東京 16日 ロイター] マーケットでは10年最長期国債利回り(長期金利)が0.8%台に低下することを視野に入れ始めてきた。スタンダード&プアーズ(S&P)がフランスを含むユーロ圏9カ国の格付けを引き下げたことや、ギリシャの債務交換交渉が難航していることなどから、欧州債務問題の深刻化を強く意識した「質への逃避」が米独債同様に円債にも進んでいるためだ。ただ日本自身も財政に問題を抱えていることから金利低下幅は限られるとの見方もある。
欧州中央銀行(ECB)が昨年12月に初の3年物流動性供給オペを実施して以来、欧州の国債入札は全般にわたって順調に消化されていた。2月末にも3年物オペの実施が予定されており、基本的に欧州債務問題は収束の方向になるとの見方が一部に出ていたが、今回のS&Pによるユーロ圏9カ国の格下げによって、その方向性は修正せざるを得ない局面となった。フランスやオーストリアなどのトリプルA格の引き下げは、「EFSF(欧州金融安定基金)の保証能力低下やコスト増加につながる。また、各国の金融機関の格下げリスクを通じて、欧州金融市場にネガティブに働くだろう」(ドイツ証券・山下周チーフ金利ストラテジスト)との見方が強まっている。
ギリシャの債務交換交渉が難航していることも懸念材料だ。PSI(債務削減)の交渉が中断し、ギリシャが訴求的な集団行動条項(CACs)の導入に関する法案を議会に提出するとの観測が出ている。市場では「PSIが目標に届かない場合に、非自主的な債務再編につながる可能性が徐々に高まりつつあることは事実。今後1、2週間の動きには注視が必要だ」(JPモルガン証券・山脇貴史チーフ債券ストラテジスト)との指摘が出ていた。
こうしたなか市場では欧州債務問題の深刻化を強く意識した「質への逃避」が今後も進むとの見方が強まっている。世界的なリスクオフの状況が続いており、米独債同様に比較的安全とされる円債への投資が加速することが想定できるとの声が多い。また、欧州債務問題の「即効薬」は期待薄で、欧州の銀行のバランスシート調整圧力が世界景気を下押しする可能性もある。
実際、週明け16日の円債市場では、昨年来の低水準にあった長期金利にさらに低下圧力がかかった。長期金利は2011年の最低水準0.940%を更新し、2010年11月8日に付けた0.935%まで一時低下。マーケットでは、2010年10月29日以来、約1年3カ月ぶりとなる「0.8%台への金利低下も視野に入れ始めている」(ドイツ証券・山下周氏)との指摘も出てきている。
金利の先行きを占ううえで注目されているのが、あす予定の30年利付国債(7000億円、2041年9月20日償還、クーポン2.0%)だ。「これまで超長期ゾーンの利回りがあまり下がらず、長期金利の低下を阻んできた側面があり、あすの入札が順調なら、その阻害要因が一つなくなる」(JPモルガン証券・山脇氏)という。
「金利水準自体に高い妙味は見出し難いが、入札前に相場調整が進む場面は生保勢などの絶対値バイヤーの投資需要を喚起しやすいと考えている。無難な入札が見込まれる」(クレディスイス証券・バイスプレジデントの海老原慎司氏)との声が出る一方、日本も財政問題を抱えており、超長期ゾーンは重いとの見方もある。「日本の経常収支が赤字になる不安や、政治の混乱から債務問題がなかなか解決しないという懸念が残る限り、超長期ゾーンは重たくなる可能性がある。入札そのものに大きな波乱はないが、入札の好不調を示すテールはやや広がることも考えられる」(外資系証券)という。
(ロイターニュース 伊藤武文 編集:伊賀大記)
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