再送:〔アングル〕民主党政権に不安と期待、市場に財政赤字の拡大懸念と予算合理化の思惑
*この記事は13日午後4時46分に送信しました。
[東京 13日 ロイター] 8月30日の衆院選が固まり、市場には民主党政権の誕生を視野に入れる声が広がってきた。そうした中で、複数のエコノミストからは民主党の経済政策では、財政赤字が拡大すると懸念する声が浮上。一方で、予算の合理化が進み、歳出の急拡大が抑制されるとの見通しも出ており、これから公表されるマニフェストの内容や論戦の行方に注目が集まっている。
エコノミストの見解は以下の通り(50音順)。
<大和住銀投信投資顧問 投資戦略部 チーフエコノミスト 大中道康浩氏>
政権交代の可能性を考えると、民主党の経済政策について財政拡大懸念と予算合理化の期待の両方がある。予算合理化については、とりあえずできるものを集めて掲げている印象もあり、本当にどこまで霞が関を主導できるか不安だ。一方で政策による歳出をすぐに拡大しようということではなく、高速無料化や子供手当てにしても2012年度をめどに打ち出しており、ゆっくりしたスケジュールになっている。予算合理化に時間がかかることもある程度踏まえている。政権交代後すぐに財政拡大路線が始まるということではなさそうだ。
したがって民主党政権への期待が高まるといっても、それによる目先の景気への影響はよくわからない。自民・民主ともに小泉改革路線からは距離をおいていることは共通しているし、景気対策の政策が途切れないよう今後補正予算を組むことも、どちらの政権になっても考えられる。
金融政策への影響は、予想以上にデフレ傾向が強まり、日銀が民主党の政策を見極める時間的余裕もできそう。経済情勢からすると、デフレ気味の景気の中でマネーがだぶついているため、資産価格上昇やどこかに行き過ぎが生じていないか目配りしての政策運営となるだろうが、リスク許容度の回復はまだまだなので、その点からも時間的余裕があるだろう。
<カリヨン証券 チーフエコノミスト 加藤進氏>
衆院選挙では従来の予測通り民主党が第1党の地位を占め、民主党政権が成立するとみられる。
民主党の政策は、より消費者向けのものになるだろう。従来の自民党政権は大企業向けの政策が優先してきたが、労働組合や消費者に立脚する民主党政権では、消費者に利するような政策が中心になるだろう。社会福祉優先、社会保障の充実、行財政改革など従来、自民党政権の手ではできなかった政策が実施に移される可能性が高い。
その結果として、これまでの輸出に過度に依存した経済から、個人消費中心の経済成長パターンになるだろう。金融市場はすでに民主党政権を強く意識しているが、今後は民主党の政策が浸透し、新たな動きを始めるとみられる。
現在の状況として立法府としての政府よりも官僚が支配する行政府の権力が肥大化しているという現実があるが、民主党が政権を取った際には、この現実が大きく変わる可能性が出てくる。
この可能性を強く示唆しているのが民主党の新代表となった鳩山由紀夫氏の言動だ。鳩山氏は持論として天下りの廃止を訴えており、さらに民主党が政権を取った際には各中央省庁の局長以上の官僚に辞任を求めるなど、脱官僚を強く前面に出している。最近では官僚に辞任を求めることは法律的に困難なことであるため、ややトーンダウンしているが、基本的な路線としては政治主導による政策の立案だ。
また、民主党は当面、消費税率を引き上げない方針であり、その代わりに財源として余分な歳出の削減と特別会計の余剰金を充てるとしている。特に特別会計に関しては使途が不明であり省庁の恣意的な支出の財源になっているとの批判がある。この面からも民主党が官僚制度改革を推し進めて、特別会計からの財源ねん出を可能とすれば、民主党が主張する政治主導への移行が実現することとなる。税金で賄われる特別会計の歳出がより明らかとなることで、国民の支持が高まってくることも考えられるのではないか。
<JPモルガン証券 チーフエコノミスト 菅野雅明氏>
総選挙後の経済対策について語るのは時期尚早だが、総選挙の結果にかかわらず、(民主党が勝利すればなおさらのこと)来年の参院選挙を目指して多額の財政支出がなされる可能性が高い。中長期的には財政悪化要因となるが、短期的には支出拡大が景気を下支えすることになりそうだ。
<ゴールドマン・サックス証券 チーフエコノミスト 山川哲史氏>
都議選の結果はほぼ予想通りとは言え、これで政権の求心力低下が決定的となる一方、衆院選での民主党優位が一段と明確になった。
民主党政権が誕生した場合、現状の衆参両院間における「ねじれ現象」が解消することもあり、民主党が主張する政策の実現可能性が一気に高まる展開となる。民主党は、政策綱領の一部となる「緊急経済対策」として、新たな調達を要する「真水」規模で、2年間にわたり21兆円(対GDP比率、2.1%/年)に及ぶ大規模な財政出動を提言しているが、実際にこれが実現した場合、少なくとも短期的には既に悪化傾向が鮮明となっている財政赤字拡大に拍車がかかる可能性が高い。
「緊急経済対策」は、子供手当、高等教育無償化、高速道路無料化等を通じ、家計を中心とした可処分所得を高める施策(14.1兆円;対GDP比率:2.8%/年)に主眼が置かれているほか、雇用保険拡充、個別所得補償制度を通じた農水業再生等、財源を特定化しない寛容な歳出拡大といった印象は否めない。
財政バランス赤字(既往債務に対する利払いを除くプライマリーバランス;対GDP比率)は現時点で実現している追加景気対策を織り込んだだけで、2009─10年段階で既に8─9%まで悪化することが見込まれているが、さらに民主党政権下では10%前後まで拡大する可能性が高い。
民主党政権が誕生し、既に5月の段階で成立している追加景気対策に加え、2010年以降発効する一連の景気対策が実現した場合、2010年前半に予想されていた景気失速(2009年後半に現状の追加景気対策が集中することに対する反動)はより浅いものに止まる。
当社では、2009年後半の成長率は、年率プラス3%前後と潜在成長率を一時的に上回るものの、2010年前半には反動で0%近傍まで減速すると予想してきたが、民主党による政策を前提とした場合、後者については少なくともマイナス成長への再転落は回避し得る可能性が高い。
ただし、一段の財政バランス悪化を背景に長期金利が高止まり、この結果、既に他の主要国と比べ引き締まり感が強い金融環境が一段とタイト化するリスクには注意が必要だ。
(ロイター日本語ニュース マクロ経済・調査G;編集 田巻 一彦)
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