〔焦点〕機械受注反転で設備投資に底入れの兆し、投資の海外シフトが不透明要因
中川 泉記者
[東京 11日 ロイター] 輸出や生産の持ち直しを背景に9月機械受注統計が予想以上の強さを見せ、先行き増加に転じる見通しとなった。このため、設備投資が来年から回復に向かうとの見方が、エコノミストの中で浮上してきた。ただ、企業は鳩山由紀夫政権の温暖化防止に向けた具体策がはっきりしない上に、最近の外為市場でのドル安/円高傾向も踏まえ、生産拠点の海外シフトを検討する可能性もあり、設備投資が順調に回復するかどうか不透明要因も大きいとみられている。
<機械受注は7四半期ぶり増加へ>
9月の機械受注統計に関し、民間エコノミストからは「ポジティブサプライズ」との声が相次いだ。内閣府が発表した7─9月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は当初見通しを上回り、前期比0.9%減となった。6期連続の減少とはいえ、減少幅は昨年4─6月に減少が始まって以来、最も小幅にとどまった。業種別にみても増加業種の数が減少業種を大きく上回った。
さらに機械メーカーへの受注状況の聞き取り調査をもとに、内閣府が発表した10─12月の受注見通しは、前期比1.0%増と7四半期ぶりの増加に転じることとなった。
背景には、輸出・生産の増加傾向がある。金融危機直後から企業が設備投資を控え、設備廃棄や工場の操業停止など生産能力圧縮を図った一方、危機後のショックが一巡した後には生産が順調に回復。稼働率が今年3月以降上昇し始め、8月時点の稼働率指数は79.0と08年11月以来の水準まで回復した。機械受注は稼働率との連動性が高いため、稼働率上昇を背景に持ち直し傾向に転じたと見られる。
<設備投資に底入れの兆し>
設備投資の先行指標としての意味合いを持つ機械受注が、下げ止まりから反転に向かうことがうかがえる内容となったことで、大幅に落ち込んだ設備投資にも持ち直しの兆しが出てきた。
鉱工業生産統計を見ても、設備投資と関連性の高い資本財出荷が8、9月と2カ月連続で前月比6%台の上昇となり、回復傾向が鮮明になっている。
エコノミストの間からは設備投資について「機械受注に比べて3カ月から半年遅行するGDPベースの設備投資は、来年度以降に回復基調となることが期待される」(大和総研・シニアエコノミスト・熊谷亮丸氏)といった見方が浮上してきた。
<政策不透明感で、企業の投資行動の決断に遅れも>
ただ、設備投資が底入れしたとしても、先行きには不透明要因が多く、力強い回復に向かう可能性は低いと見られている。
農林中金総合研究所・主任研究員の南武志氏は「各種の政策効果の息切れや経済政策運営の変更に伴う空白期間の発生、今冬の賞与水準の大幅削減などにより、景気が足踏みしてしまうリスクも意識される状況」と指摘。企業の設備投資動向にも影響を与える実質金利は、物価下落によって大きく上昇している点も見逃せないとみている。
こうした状況下では、世界経済の回復が日本の生産・輸出を押し上げ、それが設備投資にもつながるという展開に頼らざるを得ないが、アジア新興国を中心に景気が一段と回復傾向を強めた場合でも、日本国内での生産に結びつくとは限らないという指摘がある。
日銀は、今回の展望レポートでわざわざこの点について言及している。「グローバルな生産立地については、先進国から新興国への需要シフトや、為替相場の動向などを踏まえつつ、多くの企業が戦略を探り続けている段階であり、不確実性が大きい」と予測した。
政府の政策が定まらないために、企業が投資行動を慎重化させている面もある。東芝の西田厚聰会長は10月下旬に開催された討論会で「温暖化対策には投資も必要。政府は具体策を一刻も早く立ててほしい。それがないと、投資判断もできない。国内で立ち上げ予定だった工場を海外に移転する可能性もある」と述べていた。
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(ロイター日本語ニュース 編集 田巻 一彦)
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