〔アングル〕JAL<9205.T>は7422億円の債務超過と作業部会試算、問われる生き残りの可能性
[東京 12日 ロイター] 日本航空(JAL)(9205.T: 株価, ニュース, レポート)の実質債務超過額が742
2億円に上っていると国土交通相の直轄組織「JAL再生タスクフォース」(作業部会)
が最終報告書の中で明記していることが明らかになった。JALは現在、公的機関である
企業再生支援機構の下で資産査定が行われ、同機構の支援で再建を図るかどうか検討され
ているが、巨額の債務超過額を解消するには、大規模な公的資金の注入が不可避とみられ
ており、仮に注入が決まれば、再建後の新JALが存続可能なビジネスモデルを提示でき
るのかどうかが大きなポイントとして浮上しそうだ。
<キャッシュフロー勘案した債務超過は2447─2793億円>
作業部会は前原誠司国交相の直轄組織として発足し、資産査定を行ってきたが、10月29
日付で同相に最終報告書を提出して解散した。
ロイターが入手した報告書によると、JALグループの中核企業であるJALと日本航
空インターナショナル、JALキャピタルの3社の資産合計は今年6月時点で1兆696
7億円とされてきた。だが、年金の未認識債務や航空機関連の評価損、不動産の含み損な
どを考慮すると、実質債務超過額が7422億円にのぼると試算している。
具体的には、航空機の退役もしくは売却した場合の評価損が合計2477億。機種別で
はボーイング「747─400」型機が1671億円、ダグラス「MD─90」が584
億円などとなっている。退役・売却予定の航空機リース取引に関する評価損も498億円
ある。社宅や研修センターなど保有不動産も418億円の含み損を抱えている。
ただ、金融機関への有利子負債が約7000億円にのぼる中で、7422億円と巨額な
債務超過額を金融支援の必要額とみなすのは現実的でない、としてキャッシュフローベー
スの債務超過額を試算。将来予想されるキャッシュフローから有利子負債を差し引いた形
での債務超過額を2447億円─2793億円と算出。この金額を前提に再建計画を作成
している。
JALグループの主力3社向けの金融機関の債権残高は、9月30日時点で総額606
6億円。うち主力5行の残高は4684億円で全体の77%を占める。金額で最多なのは
日本政策投資銀行だが、担保によるカバー率は77%。みずほコーポレート銀行の30%、
三菱東京UFJ銀行の26%、三井住友銀行の21%などメガバンクと比べて担保によ
るカバー率が高くなっているのが特徴だ。
さらに農林中央金庫は残高80億円に対して担保がわずか1億円など、非メーン金融機
関の担保率が、軒並み低水準なのも目立っている。
直近の資金繰りでは、JALの経営に必要な現預金残高を400億円とした上で、11
月中にも資金不足となり、来年3月末までに1800億円の資金調達が必要としている。
内訳は燃油の支払い933億円、人件費889億円など。
以上を踏まえたタスクフォースによる再建計画では、2014年度までの5年間で、輸
送能力を20%削減するなどのスリム化を進め、2688億円の営業損益の改善を図る。
低収益の国際16路線、国内29路線の合計45路線から撤退し、アジアの観光需要向
け路線は、今後参入が予想される海外の格安航空会社(ローコスト・キャリア)との提携
も視野に入れる。
この結果、営業損益ベースでは、燃油費に関連して価格変動をヘッジするためのデリバ
ティブ契約を見直すことなどで934億円、路線撤退で699億円、ボーイング747─
400など老朽化した大型・中型機を小型機に切り替えることで334億円の改善を見込
んでいる。
現在は110社ある子会社、関連会社のうち24社を売却、26社を統合、14社を清
算することで46社まで圧縮し、約8400人を削減する。
このため新型航空機の導入などの設備投資で5500億円、人員削減や年金改革、事業
撤退などのリストラ費用が1700億円必要と見込む。
金融機関に対しては、債権放棄を2200億円、債務の株式化(DES)を300億円
を求めることで有利子負債を約7000億円から約4500億円へ削減。年金制度では現
行4.5─5.5%の給付利率を1.5─6.0%に見直すことなどで、未認識退職給付
債務3042億円を927億円に圧縮する。
必要となる金融支援の総額は、つなぎ融資1800億円および資本増強3000億円で
計4800億円となるが、仮に会社更生法を申請した場合は、つなぎ融資の必要額が60
00億円に膨らみ、金融支援の総額が9000億円にのぼるとしている。
ただ、最大の懸案事項である年金の給付率引き下げは、年金加入者である社員OBの同
意取り付けが難しく、企業再生支援機構の下での再建でも、この問題の解決なしには具体
的な再建計画の実施が難しいとされている。
さらに大ナタをふるってJALを再建させても、新生JALが本当に存続可能なのか、
政府部内にも疑問の声が多い。「問題は年金でない。国交省が日本の空にどのような絵を
描くかだ」(財務省幹部)として、航空自由化による競争激化が進む中で、JALと全日
本空輸(9202.T: 株価, ニュース, レポート)による大手2社体制の見直しの必要性を強調する向きもある。
企業再生支援機構主体による再建では、大規模な公的資金の注入が不可避とみられてい
るが、注入後に新会社の経営が行き詰った場合、鳩山由紀夫政権の責任が問われかねない。
財務的なアプローチだけでなく、生き残りが可能なビジネスモデルの構築が、JAL再
建には欠かせないとの見方が政府関係者の中からも出ている。
JAL、日本航空インターナショナル、JALキャピタル向け債権残高:(単位:百万円)
日本政策投資銀行 275,803
国際協力銀行 20,140
みずほコーポレート銀行 75,936
三菱東京UFJ銀行 73,459
三井住友銀行 23,101
信金中央金庫 10,000
住友信託銀行 14,500
三菱UFJ信託銀行 10,000
農林中央金庫 8,012
新生銀行 5,010
千葉銀行 4,754
肥後銀行 5,000
伊予銀行 3,000
全国共済農業協同組合連合会 3,063
百十四銀行 3,000
山梨中央銀行 3,000
横浜銀行 3,000
日本生命保険相互会社 10,000
明治安田生命保険相互会社 10,000
富国生命保険相互会社 8,096
第一生命保険相互会社 8,000
三井生命保険 8,000
大同生命保険 5,000
住友生命保険相互会社 5,000
東京海上日動火災保険 500
損害保険ジャパン 500
シャイニングパートナーズリミテッド 5,400
UBSセキュリティーズジャパンリミテッド 3,356
沖縄振興開発金融公庫 1,233
群馬銀行 38
大阪府信用農業協同組合連合会 345
長野県信用農業共同組合連合会 345
32社合計 606,597
*2009年9月30日時点。100万円未満切り捨て
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(ロイターニュース 竹本 能文記者:編集 田巻 一彦)
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