再送:〔焦点〕国内企業の公募増資が過去最高の年間7兆円に迫る、買い手増加や過剰流動性が背景に
*この記事は12日午後5時55分に送信しました。
[東京 12日 ロイター] 2009年の国内企業の公募増資が増加傾向をたどり、年間ベースで過去最高規模の総額7兆円に迫る勢いとなっている。金融危機後に傷ついた財務基盤を強化する企業の動きが加速しているためだ。未曾有の増資ラッシュにもかかわらず順調に消化されてきた背景には、これまでの増資で利益を上げた投資家が資金の回転を効かせ応じていることや、海外の投資家にも買い手が広がっていることで、消化能力が高まっている構図がある。また、主要国の中央銀行による超金融緩和の実施で、かつてないほどの過剰流動性がグローバルに存在し、増資を吸収できるマネーが潤沢に存在していることも見逃せない。ただ、今後もこうした好循環が続くかどうかは、公募に踏み切る企業が成長シナリオを達成し、市場の信認を得られるかどうかにかかっている。
<11月までの公募増資は3.6兆円>
日本企業が2009年1月から直近11月6日までに実施したエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達、第三者割当増資を除く)は3兆6230億円。トムソン・ロイターによると、すでに08年(1兆5180億円)、07年(3兆0114億円)の実績を上回る。年間ベースで過去最高のエクイティファイナンスが行われたのは、06年の7兆9186億円だった。
複数の証券会社の引受担当者は、これから公募増資が予想されるのは金融のほか、電機や化学などの製造業で「年内にあと約2兆円、年度末までには約3兆円のファイナンスがあっても不思議ではない」と予想する。
国内企業が大規模な資本増強に踏み切るのは、1)一般事業法人の場合、業績悪化によって毀(き)損した財務基盤を増強する、2)金融機関では、世界的な金融規制強化の流れの中で自己資本の増強を迫られている──などの理由からだ。
金融規制の流れを意識した動きとして、保険のT&Dホールディングス(8795.T: 株価, ニュース, レポート)が11月5日、1200億円を上限とする新株の発行登録を行い、3月以降、2度目の公募増資実施に向け準備を整えた。すでに野村ホールディングス(8604.T: 株価, ニュース, レポート)が今年3月からわずか半年で2度の公募を実施したこともあり、金融機関は前回の公募増資から間を空けずに踏み切るところがあっても不思議ではない情勢だ。
<市場には好循環が存在、順調に消化>
今のところ、マーケットは大規模なファイナンスを順調に消化している。過去10年間、日本企業のエクイティファイナンスの金額は平均で年間約4兆3200億円。それを大きく上回る規模を吸収できるのは、1)これまでの公募銘柄を買った投資家のほとんどが収益を上げており、新たな公募株を買う際に前回の株式を売却して応じる回転が効いている、2)米国の投資家を含むグローバルオファリングを実施する大型増資が多く、新株の販売先が国内リテール偏重から幅広い投資家層に広がっている──などの見方が有力だ。
昨年末の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T: 株価, ニュース, レポート)の増資以降、500億円超の公募13件を検証すると、オリックス(8591.T: 株価, ニュース, レポート)の株価は公募価格を割れず推移。野村HDも、1度目の公募価格417円と2度目の568円を上回っている。
株式相場の調整を背景に、公募価格を割り込むようになったのが三井住友フィナンシャルグループ(8316.T: 株価, ニュース, レポート)、大和証券グループ本社(8601.T: 株価, ニュース, レポート)、全日本空輸(ANA)(9202.T: 株価, ニュース, レポート)、みずほフィナンシャルグループ(8411.T: 株価, ニュース, レポート)など。
しかし、どれも一時は公募価格を5─20%を上回っており、市場関係者の間では「汚名となるような失敗案件がない」と評価されている。
投資家層の面では、従来、日本企業が発行する新株の買い手は7─8割が国内のリテール顧客だったが、大型増資は日、米、欧の投資家にも販売されるグローバルオファリングとなるケースが多い。この場合、国内外の配分の比率は5対5が一般的だ。ある引受担当者は「このうち国内分の約8割がリテール(個人投資家)、2割は機関投資家。結果として全体に占める国内リテールの投資家の購入比率は4割程度」と明かす。国内リテールの資金源としては「預貯金のマネーも予想以上に入ってきている」(同)という。
<過剰流動性と海外投資家の動向>
リーマンショック後に、米・欧・日の金融当局が超金融緩和に踏み切り、かつてないほどの過剰流動性が世界のマーケットを駆けめぐっている。こうしたジャブジャブの資金を利用して、利益水準を回復させていると言われる海外のヘッジファンドも注目の存在だ。
ヘッジファンドは、公募増資に踏み切りそうな日本の銘柄を予想し、希薄化による株価下落を見越して増資決議の前に空売りを浴びせる傾向がある。増資決議を経て新株の配分先が決まる段階で、予想外に自身への新株の配分がないと分かると、空売りしていた分の株式を調達しなければならなくなり、マーケットに現物株を買いに来る。結果として、増資決議後の株価がボリュームを伴って大幅高になり、公募増資が投資家に好感されているようにも映る。
こうした投資行動を活発に行うシンガポールのヘッジファンドの運用担当者は、海外投資家の日本の公募銘柄に対する見方は「企業のエクイティストーリーを好感する買いではなく、単に価格の安さや流動性の豊富さを後ろ盾にした投資行動にすぎない」と指摘する。彼らにとっては「日本株を持たざるリスクを意識した消極的な買いにとどまる」とも明かす。
<多大な希薄化、数年後に明暗も>
これまで日本企業の増資では、20%を超える希薄化を伴う発行規模は市場に受け入れられないという暗黙の了解があった。しかし、最近の公募増資は30%の希薄化が当たり前になりつつある。マーケットからの資本調達が企業の生命線となっているためだ。証券会社の引受担当者の多くは「昨年後半の金融危機が起きた後だけに、リカバリーに向けてかなり思い切ったファイナンスをやることが許されるようになった」と口をそろえる。
ただ、この好循環がいつまでも続く保証はない。ある引受担当者は「公募割れが続くような銘柄をマーケットに連れて来ないような注意が必要だ」と指摘。「発行体から発信する説得力のあるエクイティストーリーが絶対条件になる」と強調する。成長シナリオなき案件は、マーケットを崩してしまうリスクもはらむ。野村総合研究所の大崎貞和・主席研究員は「増資が実を結んだか否かは、いずれ株価という通信簿に表れる」と話している。
記事中の企業の関連情報は、各コードをダブルクリックしてご覧ください。
(ロイターニュース 江本 恵美、編集:田巻 一彦)
© Thomson Reuters 2009 All rights reserved.



日本
米国