〔IBウオッチャー〕MSCBをめぐり企業が開示を訂正、金商法と取引所で扱いに違い
[東京 3日 ロイター] 企業の資金調達手法の一形態であるMSCB(転換価額修正条項付転換社債)をめぐり、一部企業の開示に混乱が生じ、いったん公表した開示資料を訂正する事態に発展した。その要因の一つが、金融商品取引法と取引所ルールによって異なるMSCBの定義の違いだ。専門家からは、投資家にとって紛らわしい同様の事例が続くようなら、制度のあり方を見直す必要性が出てくるとの指摘がある。
MSCBとは、転換価格を一定期間ごとに修正する条項が付いた転換社債を指す。1990年代末から2000年代初頭にかけ、資金調達が困難に陥った企業を中心に発行が相次いだ。転換価額は見直し時点の株価より低い価格で修正される条項が盛り込まれていることが多く、株価の下落が転換価格の低下を招けば発行株式数が多くなり、1株当たり利益の大規模な希薄化を招くおそれがある「劇薬」(市場関係者)だ。
東京証券取引所や大阪証券取引所の上場ルールでは、転換価格の修正頻度が「6か月間に1回を超える」場合をMSCBと定義している。ところが、ある上場企業が8月末、転換価格の修正条項のついた転換社債の発行を発表した事例では、転換期間を7カ月ごととし、開示資料に「MSCBには該当しない」と記した。
しかし金融庁はこれを疑問視。この上場企業の転換社債が「金商法上のMSCBに該当する」と指摘した。金融商品取引法では、転換価格の修正について「一定の日または一定の期間」とだけ記しており、取引所ルールのような具体的な期間の要件を設けていないためだ。
証券界からも、転換価格の修正頻度が6カ月に1回でも7カ月に1回でも「実質MSCBであることには変わらない。わずか1カ月の差を後ろ盾にMSCBでないと主張するのはいかがものか」と疑問の声が上がっていた。
結局、この上場企業は9月3日に「(取引所ルールの)適時開示規則に定めるMSCBには該当しない」と、開示資料の文言を訂正した。同社は「上場ルールと金商法との間でMSCBの(開示上の)扱いが違うと承知していなかった」としている。
今後も同様に、MSCBを利用する企業側の誤解に基づいた開示によって、投資家を混乱させる事態もあり得る。大和総研資本市場調査部制度調査課の横山淳氏は、現在の制度について「(取引所ルールにもとづく)狭義のMSCBと(金商法にもとづく)広義のMSCBが併存している状況だ」と指摘。商品の質が近いものは広めの解釈の方が投資家にとってわかりやすいとし、今後、同様の事態が続くようならば「(制度のあり方をめぐって)取引所なりが何らかの対応を求めれるかもしれない」と指摘している。
(INVESTMENTVIEWS)
(ロイターニュース 平田紀之)
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