〔焦点〕利上げ辞さぬ姿勢表明で追い詰められるECB、言行一致しなければ信認失うリスク

2008年 06月 6日 15:33 JST
 
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 [フランクフルト 5日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)は5日、早ければ来月にも政策金利を引き上げる姿勢を示し、金融市場関係者とアナリストを一様に驚かせた。ECBは現在、言行一致を迫る強い圧力にさらされている。

 アナリストはトリシェ総裁が会見で、確実ではないが7月に利上げする可能性があると言明した以上、来月3日の理事会で政策金利を4.25%に引き上げなければECBは信認を失う、と指摘する。

 3日の理事会で利上げが決定されれば、ユーロ圏の金利はここ1年余りで初めて引き上げられ、2001年9月の水準に戻る。

 ロイズのエコノミスト、ケネス・ブロー氏は「長い時間が経過している。ECBはここまできてためらうことはできない」と述べた。

 グローバル・インサイトのエコノミスト、ハワード・アーチャー氏は、インフレが記録的高水準にある中、ECBは構えを実行に移す必要があり、さもなければ反動が出るリスクがあると指摘。「早ければ来月にも利上げに踏み切ると警告したからには、信認を失うリスクを冒さずに利上げを見送ることができるとは考え難い」と述べた。

 日本時間5日午後9時半に始まった総裁会見は、ECBの真剣さが当初から如実に伝わってきた。

 トリシェ総裁は冒頭の発言で物価リスクの増大に言及、その抑制に「断固かつ時宜にかなった」行動をとるとの警告を復活させた。最後にECBがこの表現を用いたのは昨年12月で、成長に対する懸念の高まりにより中立姿勢を強いられる前だった。

 ECBが年内に金利を引き下げると予想していた大方のエコノミストにとって、トリシェ総裁のタカ派的論調はそれだけで驚きであり、大方の投資家にとっても予想以上に強いシグナルだった。

 しかし記者団との質疑応答の中で総裁はさらに踏み込んだ発言を行っていく。年内利上げに関する金融市場の観測についてコメントを求められた総裁は、通常であれば声のそろっている理事会内部で意見が分かれ、一部から利上げを求める声が出たことを明らかにした。

 総裁は「奥行きのある意見交換を行った。状況を注意深く分析した結果、次回会合で金利の小幅な変更を決定することができると考えた」と語った。

 総裁は利上げを事前に約束するものではないと強調はしたものの、先物相場は発言にただちに反応し、12月までに25ベーシスポイントずつ2回の利上げを織り込んだ。また、ユーロは対ドル<EUR=>で0.5%上昇した。

 

 <警戒意味する表現か、それより軽度の表現か>

 

 総裁会見を受け5日にユーロ圏の金利予想を急ぎ修正するアナリストの間でもう一つ話題となったのは、ECBのキーワード表現に新たに加わった「高度の用心(heightened alertness)」という言葉だった。

 これまでの利上げ局面では、ECBは利上げに先立って「警戒(vigilance)」という表現にシグナルの意味を持たせていた。

 総裁はこの表現について最近、理事会にとって依然何かしらを意味すると説明していたが、この日は「高度の用心」が理事会のスタンスを説明する最良の表現だと繰り返し表明した。

 ウニクレディトのダビデ・ストロッパ氏は「ECBが警戒を再び使い始めるのか、高度の用心が新しいシグナルとなるかは分からない」と語った。

 「警戒」という表現を用いなかったことで7月利上げの確率があいまいになり、予見可能であることに誇りを持っているECBに対し、来月にかけて経済指標が期待外れだった場合の逃げ道を与えるとの見方もある。バークレイズ・キャピタルのエコノミスト、ジュリアン・キャロウ氏は「(利上げが)確定的だとシグナルを送りたいのなら、警戒という表現を用いることも可能だった。そう考えれば、警戒までには至っていないと思う」と指摘。「ECBが警戒の表現を用いなかったことは重要だろう。警戒よりは裁量余地が幅広い」と語った。

 ただトリシェ総裁は、必要な援護射撃が得られることにかなりの自信がなければ、考えられ得る利上げ時期として7月を進んで口にすることはなかっただろうとの指摘も一方にある。

 ドレスナー・クラインオートのデービッド・オーウェン氏は「口にしたことにより、利上げを見送れば失望は大きいだろう。引き続き経済統計次第ではあるが、市場に利上げを織り込むよう語りかけ、なおかつ行動が伴わないというのは普通ではない」と述べた。

 ベテランECBウォッチャーらはまた、理事会の意見の不一致に関するトリシェ総裁の率直な表現に驚いている。総裁は一部メンバーが即時利上げを、一部が今後の利上げを、一部が利上げ見送りを望んだことを明らかにした。

 バークレイズのキャロウ氏は「大きな驚きだった。金利決定で理事会がこんなにはっきり分裂したケースを思い出せない」と述べた上で、「短期金融市場にまだ緊張が見られ、世界の景気サイクルの安定がはっきりせず、(市場)金利水準の上昇に対処しているこの特定の段階で、こんなにも大胆であることは間違いだと思う。今後数週間に金融市場と経済指標がどう展開するかに非常に多くがかかっている」と付け加えた。

 

 (Krista Hughes記者;翻訳 関佐喜子 ;編集 佐々木美和)

 
 

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