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オピニオン:トランプ不安、日本の「改憲」後押し=エモット氏
2016年11月13日 / 23:11 / 10ヶ月前

オピニオン:トランプ不安、日本の「改憲」後押し=エモット氏

 11月14日、英エコノミスト誌の元編集長でジャーナリストのビル・エモット氏は、米大統領選におけるトランプ氏(写真)の勝利は、安全保障上の理由から、憲法改正に向けて安倍政権の背中を押す可能性が高いと指摘。米ニューヨークで11月9日撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

[東京 14日] - 「AMERICA FIRST(米国第一主義)」以外、明確な政策アジェンダを持たない「トランプ大統領」の誕生は、安全保障上の観点から、憲法改正に向けて安倍政権の背中を押す可能性が高いと、英エコノミスト誌の元編集長でジャーナリストのビル・エモット氏は指摘する。

経済面については、「環太平洋連携協定(TPP)は死んだ」とし、日本がアジア太平洋地域の自由貿易協定作りでイニシアティブを取る必要があると説く。さもなければ、主導権は中国に移るだけだと見る。

同氏の見解は以下の通り。

<TPPは死んだ>

「トランプ米大統領」誕生が世界経済と国際政治に対して持つ意味は、端的に言えば、不確実性の著しい高まり、そして同盟国およびパートナーとしての米国の信用と信頼度合いの低下だ。

日本に対する意味合いとしては、まず「TPPは死んだ」ということである。つまり、日本は今後、アジア太平洋地域の自由貿易協定作りでイニシアティブを取っていく必要がある。さもなければ、中国が主導権を握ってしまうだけだ。

2点目としては、安全保障上の理由から、安倍首相が憲法改正への決意をより強めた可能性がある。日本が今よりも独自の行動を取りやすくするために、である。

TPP以外の経済政策面への影響については、トランプ氏が日本の通貨戦略や金融政策に対し、さほど強硬な態度を示すようになるとは思わない。トランプ氏が重視する経済政策は、自国の財政政策だ。また、そもそも日本はトランプ氏の貿易上の「敵」ではない。当面の「敵」は中国やメキシコになるだろう。

<軍事力誇示はあり得る>

前述した通り「トランプ大統領」誕生は、改憲に向けた安倍首相の決意を強める方向に働く可能性が高いが、現実にはトランプ次期政権は南シナ海や東シナ海の問題で、中国に対して強硬姿勢を示す可能性が高いと考える。場合によっては、今(オバマ政権時)よりも軍事力の誇示を伴うことが増えるかもしれない。

ただし基本的に、その対外政策は、危機が発生した際に迅速に対応するという形になりそうだ。トランプ氏に、「AMERICA FIRST(米国第一主義)」以外、明確な政策アジェンダがあるとは思えない。

その意味でも、貿易問題で中国を批判するとしても、米国経済が不況にでも陥らない限り、さほど激しくたたくことはないと考える。

とどのつまり、大統領選におけるトランプ氏の選挙公約のうち、重要な意味を持つのは対外的なものではなく、米国内に向けたものだ。よって、トランプ氏はまず財政出動の公約にこだわるだろう。医療保険制度改革法(オバマケア)についても、結局は廃止に向けて動く可能性が高い。

また、より厳しい移民制限を課すとともに、オバマ政権が(温暖化対策として)導入した「大統領気候行動計画」も白紙に戻すだろう。そして、メキシコと移民問題を議論する際には、(見直しを公約した)北米自由貿易協定(NAFTA)を交渉の取引ツールとして利用するはずだ。

*ビル・エモット氏は、英国のジャーナリスト。オックスフォード大学モードリン・カレッジ卒業後、同大学のナフィールド・カレッジを経て、1980年に英エコノミスト誌に入社。83年から3年間、東京支局長。93年から2006年まで13年間、同誌の編集長を務めた。「日はまた沈む」「日はまた昇る」など日本に関する著書多数。

*本稿は、ロイターの「米大統領選」特集に掲載されたものです。ビル・エモット氏への書面インタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

(編集:麻生祐司)

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