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アングル:ドゥテルテ発言を米国は静観、「こけおどし」の声も
2016年10月5日 / 03:17 / 1年前

アングル:ドゥテルテ発言を米国は静観、「こけおどし」の声も

 10月3日、米当局者は、フィリピンのドゥテルテ大統領(写真)の「暴言」を受け流そうと努力しており、同大統領が発言を実行に移し、軍事協力を減らそうとはしていないことに安堵している。ダバオ市で9月撮影(2016年 ロイター/Lean Daval Jr)

[ワシントン 3日 ロイター] - 米当局者は、フィリピンのドゥテルテ大統領の「暴言」を受け流そうと努力しており、同大統領が発言を実行に移し、軍事協力を減らそうとはしていないことに安堵(あんど)している。

米国は、最近自身をナチス・ドイツの独裁者ヒトラーに例えたドゥテルテ大統領にさらなる暴言の口実を与えないよう努めると同時に、軍事などの分野でフィリピンと下位レベルの協力を推し進めようとしている、と米当局者は3日語った。

中国が一段と積極的な態度を見せる地域において、フィリピンとのあからさまな仲たがいは問題となるだろうが、同国への支援打ち切りといった報復措置を取ることについて真剣な議論がなされているわけではないと、米当局者2人が明らかにした。

フィリピン系米国人は推定300万人とされ、反植民地感情にも気を配っており、米当局者はドゥテルテ大統領が発言を実行に移す刺激となるようなことは何も言いたくないし、何もしたくないと考えている。

「まるでトランプ氏のようだ」と、東南アジア担当のある高官は、ドゥテルテ大統領について、米大統領選の共和党候補であるドナルド・トランプ氏に言及してこう述べた。「注目されたいと思っていて、注目されるほど、無法者になる。無視するのが最も賢明だ」

ドゥテルテ大統領は先月、オバマ米大統領のことを「ろくでなし」と表現し、ホワイトハウスは首脳会談を中止した。またドゥテルテ氏は自身をヒトラーになぞらえ、自国の麻薬使用者や密売人300万人を「喜んで」殺すと語っていた。

ドゥテルテ大統領はオバマ大統領について語るのにあのような言葉を使ったことを遺憾に思うと述べた一方、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を持ち出したことをユダヤ人に謝罪した。

最近では、米国に対する不満を語ったら、ロシアと中国から賛同を得たと、ドゥテルテ大統領は述べている。

一方、ドゥテルテ大統領は、米国軍との合同軍事演習は次回10月の演習が最後とし、フィリピン南部から米軍の特殊作戦部隊を撤退させ、2年前に締結した防衛協定を見直すことを公に示唆していたものの、これらのうちどれも実際には起きていないと米当局者は強調した。

<こけおどし>

米軍事当局者によれば、ドゥテルテ大統領の発言を十分承知しているが、フィリピン側の軍事当局者が今後も変わらないと安心させてくれたという。

「心配で眠れないという事態にはない」と、ある米防衛当局者は匿名を条件に語った。

「全部こけおどしだ」と言うもう1人の防衛当局者は、ドゥテルテ大統領の発言が「われわれの世界に波及していない」と述べた。

フィリピン軍報道官によると、ミンダナオ島サンボアンガ市には米兵約100人が駐留している。これは、同国のイスラム過激派集団アブサヤフとの戦闘に向け、フィリピン軍部隊を訓練するために当初派遣された米軍1200人と比べると、はるかに小さい規模である。

フィリピン軍報道官は、これら米兵を撤退させるいかなる計画も把握していないと語った。

米国とフィリピンは2年前、防衛協力強化協定(EDCA)を結び、これにより、米軍が海上安全保障や人道支援、災害対応のための作戦に使われる保管施設を築くことが可能となっている。

同協定の下、2週間にわたる軍事演習の一環として、9月25日からC130輸送機2機と米兵100人がフィリピン中部の空軍基地に駐留している。

米国防総省の報道官、ゲーリー・ロス司令官は、EDCAが国際協定であり、米国とフィリピンは国際法にのっとっていると説明。協定の文言を引用しながら、協定が有効な期間は10年間で、その後はどちらの側もその1年前に文書で通知すれば協定を解消することができるという。

<アジア第3位の軍事支援国>

フィリピンはオバマ政権が掲げるアジアへの「リバランス」政策にとって重要な要素であり、南シナ海で中国が領有権の主張を強めるなか、フィリピンと米国は合同パトロールを開始している。

フィリピンとの長年にわたる軍事的な結びつきを尊重しつつも、米当局者は、ドゥテルテ氏が3カ月前に大統領に就任し、麻薬撲滅運動に着手して以来、3100人以上が殺害されていることを懸念している。

「時には個人に関することには目をつぶり、国家との問題に対応しなければならない」。かつて米上院外交委員会の東アジアおよび太平洋地域担当の政策部長を務め、現在はモーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団の理事長であるフランク・ジャヌージ氏はそう語る。

「米国にはフィリピンを見限るだけの余裕はないので、人権政策には異を唱えつつも、この異端で不快な指導者を相手にする方法を見つけださねばならない」

米国議員はフィリピン大使館に対し、口頭で繰り返し懸念を伝えているが、フィリピンの外交官は、ドゥテルテ政権を代表しなければならない立場と、大統領の発言について懸念する彼ら自身の気持ちとの間で引き裂かれているという。

米国は近年、フィリピンに巨額の援助を行い、軍事支援や開発援助を行っている。米国から軍事支援を受けるアジアの国として、フィリピンは、アフガニスタンとパキスタンに次いで3番目に大きな国となっている。

影響力のある上院議員2人によると、米議会は今年度の支援を決めるうえでドゥテルテ大統領の政策を考慮に入れるという。

ドゥテルテ大統領を調子に乗らせていることをオバマ政権が心配する一方、政治的断絶が防衛面に影響することについてはそれほど懸念していないと、ある米当局者は話す。なぜなら、米国には他の選択肢があるからだ。

匿名を条件に語ったこの当局者は、そのような選択肢として、シンガポールにある米海軍の地域センター、ブルネイにある訓練施設、そしてベトナムでの海上アクセス拡大の可能性を挙げた。

(Idrees Ali記者、Arshad Mohammed記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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