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インタビュー:マイナス金利で緩和修正機会失う=福田東大教授
2016年2月2日 / 08:53 / 2年前

インタビュー:マイナス金利で緩和修正機会失う=福田東大教授

 2月2日、日銀が導入したマイナス金利について、東京大学の福田慎一教授は、資金供給量拡大の限界が意識されていた中で、金融政策の持続性を確保した点は評価できるとした。写真は日銀。都内で昨年4月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 2日 ロイター] - 日銀が導入したマイナス金利について、東京大学の福田慎一教授は、資金供給量拡大の限界が意識されていた中で、金融政策の持続性を確保した点は評価できるとした。ただ、金融市場では日銀中心の取引となり、市場機能の歪みが拡大すると指摘。

必要な時期に来ていた異次元緩和の枠組み見直しも先延ばしされたと述べた。従来と同様、円安・株高に依存した経路だけでは真に実体経済を活性化するには力不足だとの見解を示した。

インタビューの詳細は以下の通り。

━━マイナス金利の導入による金融市場や金融機関経営への影響をどうみるか。

「すでに金融マーケットは、市場参加者同士の取引が希薄になっていた。今回の政策で取引の相手方は日銀、という傾向がますます強くなるだろう。その意味で、市場機能の歪みが大きくなっていくだろう。日銀が国債を買い入れるだけで金利が大幅にマイナスとなる現象で金利の振れも大きく可能性がある」

「金融機関経営への影響はそれぞれのリスク管理次第だが、(マイナス金利下で)運用難が予想されるなか、人件費など固定費を賄うのは厳しいだろう。今後のマイナス金利幅拡大は、金融機関の経営を見極めながら考えていくことになる。現状の0.1%という金利は下げ余地はあるものの、当面は様子を見ることになるだろう。日銀当座預金が大幅なマイナス金利となった場合には金融機関は保有する国債を手放したがらないので、日銀のオペレーションが難しくなるほか、金融機関への影響が大きくなる」

━━評価できる点はどこか。

「マネタリーベースを80兆円から100兆円に拡大するよりは、持続性という点ではマイナス金利導入の方が効果的だ。今以上の量の拡大はそのうち限界が来るという見方が強まる中で、マイナス金利導入により、その点を回避できた」

「しかしそれは、本来短期決戦だったはずの異次元緩和政策を長期化させる姿勢とも見える。そもそも2%の物価目標に向けて異次元緩和するという政策自体、もはや見直すべき時期に来ているのに、その議論が十分なされずに先送りされた」

「確かに今の異次元緩和の下、エネルギーを除くコアコアでは1%程度まで物価が上昇し、ある程度の効果はあったが、(物価目標実現には)道半ばである。日銀は、中国景気や原油安のせいで実現が先に延びただけで、時間がたてば実現できると主張しているが、他の多くがそれは難しいと思っている」

━━日銀が目的として掲げたデフレ脱却への評価はどうか。

「先にマイナス金利を導入したECB(欧州中央銀行)もデフレ防止を目的として導入したが、マーケット環境は好転したものの、デフレ対策としては不十分で長期停滞を抜け出せていない。預金金利をマイナスにすることは困難なので、金融機関の経営にはマイナスとなっている。日本でも全く同じだとみている」  

「イールドカーブの低下やインフレ期待の上昇で設備投資が活性化するかと言えば、これまでの異次元緩和でもその効果はほとんどなかった。むしろ円安・株高というルートが企業収益の増加等により日本経済を下支えしてきた。日銀は表だってそれを認めないが、今回も波及ルートは円安・株高であり、従来とほとんど変わらない。実体経済の真の活性化は今までも実現できていないわけで、今回の政策でもその力があるのか疑問だ」

「米国の経済学では今、長期停滞には金融政策より財政政策の方が効果があるという論調が強まっている。しかし、日本は財政問題が深刻で、それは難しい状況。効果発現に時間はかかるが、構造改革が何よりも肝心だ。設備投資や賃上げに企業が踏み切ることができるよう、現実を見据えた目標を掲げ、改革に取り組むことが何より効果的だと思う」

─ECBやアジア諸国などとの利下げ競争への懸念はあるのか。

「利下げ競争というのはやや誇張し過ぎだと思う。米国の金利は世界経済に本当に大きな影響力がある。欧州の金利も世界経済にはそれほどでもないが、周辺国には大きな影響がある。それに比べると円は国際化されいるとは言えず、金利の影響も欧米に比べて軽微だ。異次元緩和導入時にはアジア諸国への影響に懸念もあったが、結局はさほど影響はなかった」

─国債金利の低下で財政再建には好影響だが、問題はないか。

「公的債務の解消には大きなメリットとなるだろう。最近では利払い費がかなり大きくなっており、それを抑制できれば財政再建に寄与する。日銀にとっては国債をかなり高い値段で買い入れることによる損失が発生するが、政府日銀全体で国の財政をみれば、日銀の国庫納付金の減少よりも国債利払い費が減るメリットの方が相当大きい。しかし日本の財政の大きな問題は、余裕ができると他の歳出を拡大してしまう点にある。規律を持って財政再建につなげることができるかどうかが最大の問題だ」

*インタビューは2月1日に実施しました。

中川泉 編集:石田仁志

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