〔焦点〕ジャスダック内部の混乱で大株主・日証協に抵抗、大証<8697.OJ>との統合協議進まず
村井 令二記者
[東京 3日 ロイター] 大阪証券取引所(8697.OJ: 株価, 企業情報, レポート)とジャスダック証券取引所の統合協議が迷走したまま、ゴールテープを切れないでいる。72.6%の株式を保有しジャスダックの大株主である日本証券業協会は、大証に50%超の株式を売却する方針をあらためて決めたものの、ジャスダック取締役会が大証とのシステム一本化案を否決。大株主の意向に反旗を翻すとも受け取れる行動に至ったことで、ジャスダック内部の混乱が表面化した。長期化すれば無駄な投資コストが増大し、ジャスダックの企業価値がき損されるリスクも高まってきており、日証協内部には、大株主の意向を無視するようなジャスダックの取締役解任を求める声もくすぶっている。
<ジャスダックの否決に「官」OB取締役の存在>
「ジャスダックの役員は何を考えているのか。発行体が株主を選ぼうとするのはおかしいのではないか」と日証協関係者は声を荒げる。
ジャスダックは3月24日の取締役会で、大証とのシステム一本化案を否決するとともに「新興市場のあり方」とする声明文を公表。新興市場の運営主体である取引所は公共性が高いとの理由で「特定株主の意向で左右される」ことに懸念を示し、大証の傘下入りを拒否するとも受け取られる見解を示した。
企業は株主を選べない―。これが上場企業の原則だが、その上場企業を管理する取引所が、自ら株主を選ぶその姿勢は、証券関係者に波紋を広げた。ジャスダック株には「公益性」の観点から譲渡制限が付いており、売却にはジャスダック取締役会の承認が必要だ。
否決されたシステム一本化案は、大証との実務者協議の末に日証協が間に入り、ジャスダックの筒井高志社長も了承した最終合意案だ。しかし、関係者によると、8人の取締役のうち藤原隆会長を含む6人が反対に回った。大証に支払うシステム賃借費用とともに契約のあいまいさが指摘されたという。
日証協の首脳も「システム統合案の不備は、直す必要がある」と認めているが、ジャスダック取締役会の否決が、純粋にシステムだけにあるとはみていない。ジャスダック取締役会8人のうち、社内取締役は、野村証券出身の筒井社長と金融庁から転じた藤原会長の2人だけ。社外取締役の6人の出身は、金融庁、警察庁、日銀、証券界など幅広く、とりわけ取引所の「公益性」を重視する「官」の出身者が多い。日証協は、官僚OBの取締役らが中心に「効率性」を追求する大証との統合に抵抗しているとみている。
<日証協は株売却を確認、資産査定めぐり混乱も>
日証協は8日の理事会で、大証にジャスダック株の過半数を売却する方針を正式に決議する。正式な売却株数と売却価格は、日証協がゴールドマン・サックス証券、大証が野村証券を財務アドバイザー(FA)とし、ジャスダックの資産査定を通じて詰める。大証は、ジャスダック株の51%以上で、可能なら全株の取得を求めているが、日証協は、今後もジャスダックの経営に発言権を確保するため、譲渡株数はできるだけ過半数近くに抑えたい考えだ。株数と価格が決まれば、大証はジャスダック株をTOB(公開買い付け)して子会社化し、約1年3カ月のシステム統合の期間を経て、2年後にも大証傘下のヘラクレスと統合する計画。
ただ、統合の実務作業はほとんど進んでいない。価格交渉の前提となる資産査定は、これまでジャスダックが「株の売却が決まっていない以上、守秘義務のかかった内部資料の提出に応じることはできない」(広報)としてきた。株売却は8日の理事会で正式決定するが、関係者によると、ジャスダック取締役の中には「取引所の資産査定の守秘義務契約は、通常のM&Aより厳格にすべき」として内部資料の提供に難色を示す声もあり、依然として混乱の火種は残る。ジャスダックは独自にFAとして大和証券SMBCを採用しており、企業価値を自ら算定して日証協と大証の株の価格交渉に加わる構えでいる。
<長期化でジャスダックの企業価値はき損、大証は静観の構え>
ジャスダックは中断していた独自システムの開発を再開するため、追加で7億円弱の投資も決めた。大証との統合協議がなければ来年10月の稼動を目指したシステムで、計画投資額の54億円のうち、すでに30億円近くを投じている。独自システムの開発中止を正式に決定すれば、30億円弱は特別損失として計上され、開発中止の決定が遅れれば遅れるほど損失が膨らむ。ジャスダックは株式市況の低迷で2008年3月期に16億円の最終赤字を計上する見込み。収益体質のぜい弱さが目立っている中での特別損失の計上は、ジャスダックの企業価値を大幅に引き下げる要因になる。
日証協は、ジャスダックの企業価値がき損されて、売却価格が下がることを懸念し「7億円以上の追加負担は絶対に許さない」(首脳)考えだ。現在のジャスダック取締役は今年6月末で任期を迎えるが「そこまで長引かせる考えはない」(同)として早期の問題解決をねらう。
ジャスダック株売却には取締役会の承認が必要だが、筆頭株主として取締役を解任できる権限もある。しかし、日証協の首脳は、取締役の出身母体の官庁や証券界への影響の大きさから「慎重であるべき」として、これまでのところ強硬手段には否定的な見解だ。同首脳は「筒井さんは社長なんだから責任を持ってまとめてもらわなければ困る」として、ジャスダック自身による事態収拾を求めている。
日証協が期待するTOBの早期開始に向け、ジャスダック取締役会が次に開かれる4月28日が節目になりそうだ。その際、筒井社長が、複雑なメンバーで構成される取締役会をまとめることができなければ、取締役解任の強硬論が日証協の内部で広がる可能性もある。
「これはジャスダック救済だ。株主にはそう説明してあるし、関係者はそれを認識しなければいけない」──。大証の首脳は、ジャスダックとの統合協議の本格化を前にこう話し、ジャスダックの経営改革の必要性を強調していた。ジャスダックの「抵抗」について同首脳は「大証が嫌なら嫌と言えばいい」と突き放す。協議継続は受け入れるが「交渉は日証協とやっている」として、ジャスダック内部の混乱の収拾は日証協に委ねる考えだ。同首脳は「事態が長引いて困るのは日証協とジャスダック。大証は買収価格が安くなるだけで困らない」として静観する構えを示している。
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