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コラム:米中間に大きな「ねじれ」、人民元下落めぐり認識ギャップ
2017年1月20日 / 09:55 / 9ヶ月前

コラム:米中間に大きな「ねじれ」、人民元下落めぐり認識ギャップ

[東京 20日 ロイター] - トランプ氏が20日、第45代米大統領に就任する。その前途には期待と不安が交錯しているが、私は米中間のある「ねじれ」が気になる。それは中国人民元をめぐる認識だ。元安誘導とトランプ氏は批判するが、直近の中国は元安を懸念し、「止め」に入っている。

 1月20日、トランプ氏が第45代米大統領に就任する。その前途には期待と不安が交錯しているが、私は米中間のある「ねじれ」が気になる。それは中国人民元をめぐる認識だ。元安誘導とトランプ氏は批判するが、直近の中国は元安を懸念し、「止め」に入っている。写真は100元紙幣。2013年11月撮影(2017年 ロイター/Jason Lee/File Photo)

原因はドル高を誘発するトランプノミクスにあるが、トランプ氏の理解度は不明なまま。ねじれが一段と強まれば、世界経済の大きなリスクになりかねない。

<自由貿易で立場逆転する米中>

今年のダボス会議では、ある「ねじれ」が誰の目にも明らかだった。先進各国から国内の規制を鋭く批判され続けてきた中国の習近平主席が、「保護貿易主義や孤立主義は、だれの利益にもならない」と、自由貿易の利点を強調。国境税の新設を振りかざすトランプ氏と対照的な見解を表明した。

自由貿易の旗手だった米国のリーダーが「保護主義」の色彩を強め、共産党の一党支配を統治原理にする中国のトップが、自由貿易の利点をうたい上げる。この「ねじれ」は、2017年の世界経済でどのような波紋をもたらすのか──と考え込んでしまった。

<人民元安を敵視するトランプ氏>

しかし、米中間にはもっと本質的な「ねじれ」が存在する。トランプ氏は17日、ウォールストリートジャーナル紙とのインタビューの中で「(中国と)競争できない。なぜなら、ドルが強く、われわれは死にそうな目に遭っているからだ」と述べた。

人民元安は、中国当局が輸出促進のために誘導していると言わんばかりの発言と言える。

確かにこの10年を振り返ってみれば、かつてはそういう面があったと多くの有識者が指摘してきた。

ただ、足元では人民元の急落を防ごうと、中国当局は「元防衛」のために行動している。

<元安防衛に走る中国の本音>

年が明けたばかりの1月第1週には、オフショア人民元の香港銀行間取引金利(HIBOR)の翌日物金利が一時、100%を超える急上昇を見せた。

複数の市場筋は、元安を嫌った中国当局が投機筋の元安ポジションをけん制するため、きつめの金融調節を実行。その結果、翌日物金利が急上昇し、資金調達コストが上がって投機筋の元売りは勢いがなくなったという。

また、2016年11月末の中国保有の米国債残高は、前月比664億ドル減の1兆0493億ドルとなり、約6年ぶりの低水準を記録した。

中国からの資本流出が当局の想定を上回り、元安のテンポが急加速しかねないと懸念し、ドル売り/元買い介入を断続的に実施してきたからではないかとみられている。

足元ではさらに資金流出圧力が増し、元安圧力が強まっているとの見方が国際金融市場における多数説だ。

その中心的な原因が実は、トランプノミクスの経済効果への思惑だ。失業率が4%台まで低下し、ほぼ完全雇用の状況になっている中で、トランプ氏は大幅な法人、所得税減税の実施を表明。米国内における大規模なインフラ投資も公約の重要な位置を占めている。

<世界のマネーを吸い上げるトランプ政策>

マクロ経済的には、この政策はドル高を誘発する。ドル高に吸い寄せられ、マネーは米国へと集まりやすくなる。どこから来るかと言えば、新興国市場が主体と予想され、中でも中国からの資金流出が加速する「リスクシナリオ」が、一部のエコノミストの間でささやかれている。

中国からの過剰な資金流出が現実化すると、中国の実体経済を下押しし、中国経済に混乱が生まれるという懸念が強まるだろう。

そのことを中国当局が十分に意識しているからこそ、ドル売り/元買い介入をかなりの規模で実行している、というのが市場筋の読みだ。

つまり、足元では中国こそが急激な元安を望んでいないと私は考える。だが、トランプ氏は、中国こそが元安を誘導しているとみているのではないか。

直近における元下落圧力の高まりは、トランプノミクスが誘発しているとなると、この「ねじれ」は単なる認識ギャップにとどまらず、一段と大きな市場の歪みをもたらす。その現象が継続すれば、「パチン」と音がして、大きなショックを生み出しかねない。

マーケット関係者の中には、米国が国境税を新設した場合、中国経済を直撃して、世界的な景気後退リスクが高まると予想する声がある。

だが、より本質的には、強いドル政策によって、中国からの資本流出が加速し、今まで水面下で隠されていた経済的な矛盾が噴出する方が、より大きなショックを発生させかねないと危惧する。

米中間のマネーフローを推し量る様々なデータや現象を詳細にチェックすることが、今年の大きな課題になる提言したい。

●背景となるニュース

・中国人民銀の外貨取引、12月は3178億元相当の売り越し

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