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コラム:ユーロ圏再び混乱、イタリア人は「正気か」
2013年2月27日 / 07:18 / 5年前

コラム:ユーロ圏再び混乱、イタリア人は「正気か」

イタリア人は正気なのか──。ユーロ危機の再燃を招きかねないイタリア総選挙の結果を見て、金融市場やユーロ圏各国はこう思ったに違いない。イタリアの有権者の半数以上が、2人の「コメディアン」のどちらかに投票したからだ。

2月26日、ユーロ危機の再燃を招きかねないイタリア総選挙の結果を見て、投資家はすでに神経をとがらせつつある。写真はローマ市内で撮影した選挙ポスター(2013年 ロイター/Max Rossi)

1人は本物のコメディアンであり、市民団体「五つ星運動」率いるベッペ・グリッロ氏。そしてもう1人は、イタリアを崖っぷちに追い詰めたベルルスコーニ元首相だ。両者は反ユーロを掲げるポピュリストでもある。

だが、この「喜劇」はあっさりと「悲劇」に転じてしまう可能性もある。今回の選挙結果は、幾分昨年のギリシャにも重なるところがある。政治が膠着(こうちゃく)し、経済が縮小し、債務が膨らんでいる。欧州委員会は先週、2013年のイタリアの国内総生産(GDP)が、昨年に続いてマイナス成長になると予測した。公的債務残高は年末までに対GDP比128%に達する見込みだという。

ユーロ危機は、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が昨夏、単一通貨のユーロを守るためなら「何でもやる」と発言したことをきっかけに鎮静化の方向へと進んでいた。しかし、この重要な時にイタリアが制御不能な状態になれば、ECBの安全網も役には立たないだろう。

投資家はすでに神経をとがらせつつある。イタリアの10年物国債の利回りは26日午前、0.4ポイント上昇して4.7%となった。スペイン国債の利回りも、この影響を受ける形で0.2ポイント上昇し5.3%となった。ただいずれも「危険水域」とされる7%にはまだ余裕がある。

リスクは、ベルルスコーニ氏やグリッロ氏が首相になることではない。安定した政権を誰も樹立できないということが危険なのだ。今回の選挙は3つ巴の戦いとなった。まずベルルスコーニ氏率いる中道右派連合、グリッロ氏の「五つ星運動」、そしてベルサニ民主党党首が率いる中道左派連合だ。ベルルスコーニ氏の失態からイタリアを救ったモンティ首相の中道連合は、緊縮政策が世論に嫌われ4位に終わった。

イタリアの下院は、得票率が首位となった勢力に、自動的に過半数の議席が与えられる仕組みになっている。つまり、中道右派連合に僅差で勝利した中道左派連合のベルサニ氏に、まず首相となる機会が与えられることになる。

上院と下院は同じ権限を持っているが、上院でのシステムは異なっている。今回の選挙では上院で過半数を獲得した勢力はなかった。選挙前から予想されていたことではあるが、ベルサニ氏はモンティ首相の中道連合と連立を組んでも過半数には至らない状態だ。

では次に起こるのは何か。1つのシナリオは、ベルサニ氏とベルルスコーニ氏による左派と右派の大連立だ。しかし両者が掲げる政策は全く相入れないため、イタリアが瀬戸際まで追い込まれない限り、現実する可能性は低いだろう。また、そんな政府を一体誰が運営していくのかも見えない。モンティ首相がこれほど大敗しなければ、中道連合との連立も自然と浮上していただろうが、首相の信頼は崩れてしまった。

グリッロ氏はいかなる連立も組まないと明言している。したがって「五つ星運動」との連立は選択肢としては消える。一方でベルサニ氏は、ケースバイケースでグリッロ氏からの協力を得ながら政権を運営していく可能性にも触れたが、これでは極めて軟弱な政権が生まれることにもなりかねない。

もう1つ考えられるのは、ギリシャと同じように再選挙を実施することだ。だが、互いに協力したがらない3勢力が拮抗している状態を考えれば、再選挙が実施されたからと言ってこの行き詰まりが解消されるとは限らない。

一部の専門家は、選挙制度そのものを変えることが解決につながると指摘する。選挙制度改革が実現すれば、古びた政治階級を一掃でき、フィレンツェのマッテオ・レンツィ市長のような若手政治家や新たな政党が生まれる可能性もある。しかし、イタリア議会では何年にもわたってこの問題について議論を重ねているが結論は出ておらず、現状ではコンセンサスに至ることは難しいだろう。

そうこうしている間にも、投資家は自分の判断を下すことになる。ECBは無制限の国債購入を決定しているが、重要なのはイタリアがまだECBの支援をあてにできるかということだ。ECBの措置は非常に強力な特効薬ではあるが、そこには重要な但し書きがある。ECBの買い入れプログラム(OMT)の対象は、ユーロ圏諸国と改革案の合意に至った国に限るという条件だ。

安定した政府もないイタリアがそんな改革案で合意することは考えにくい。言い換えれば、ECBの安全網も完璧ではないということだ。投資家がこうした方向で思考を働かせ始めれば、国債利回りの急上昇や国外への資本逃避は免れないだろう。危機の想定が本物の危機を呼び込みかねない。

周辺国への悪影響は、いずれ自分の身にあだとなって返ってくることもある。他の国にはイタリアよりも安定した政府があるが、スペインやギリシャ、フランスでさえ、経済の縮小や債務拡大、そして緊縮策への世論の反発といった共通の問題を抱えている。景気後退が長引けば、大衆迎合主義(ポピュリズム)が台頭しやすくなる。

もちろん市場の恐怖感が増せば、イタリア人有権者も正気に戻り、再選挙という運びとなるだろう。これは昨年のギリシャと同じである。ただ、向こう数カ月は激しい混乱に見舞われ、良い結果が生まれるかどうかも定かではない。

(26日 ロイター)

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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