Reuters logo
日銀総裁会見、金融緩和の推進強調:識者はこうみる
2012年5月23日 / 08:37 / 5年前

日銀総裁会見、金融緩和の推進強調:識者はこうみる

[東京 23日 ロイター]  白川方明日銀総裁は金融政策決定会合後の会見で、日銀は強力な金融緩和を推進しているとし、この姿勢はまったく変わっていないと強調した。そのうえで、金融政策運営について、効果と副作用を点検して最適な政策を追求しているとし、「副作用があるから現在の緩和政策が適当でないということはまったくない」と語った。

5月23日、白川日銀総裁は金融政策決定会合後の会見で、日銀は強力な金融緩和を推進しているとし、この姿勢はまったく変わっていないと強調した。都内の日銀本店で撮影(2012年 ロイター/Toru Hanai)

ギリシャの政治問題などで再燃の懸念が高まっている欧州債務問題は、昨年末に比べればテール・リスクは低下しているとしたが、「もっとも強く意識すべきリスク要因」と指摘。日本への影響として、1)貿易、2)投資家のリスク回避姿勢の強まりによる円高の進行、3)欧州資金市場の不安定化、などを挙げた。とくに資金市場の動向がもっとも重要な鍵を握っているとしたが、現在は総じて安定していると語った。

また、日銀による国債買い入れオペで札割れが発生していることについて、強力な金融緩和の浸透や質への逃避の動きが背景にあると述べ、当座預金の付利の引き下げなどの対応はデメリットが大きいと指摘した。

市場関係者の見方は以下の通り。

●市場の期待にあえて反する姿勢、金融政策による円安支援見込みにくい

<ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト 村田雅志氏>

市場の期待にあえて反してこの時点では動く気がないことを非常にクリアに示したという印象。マーケットは外債購入までは行かなくても為替を意識した金融緩和を期待していた部分もあったものの、この点に関しては白川総裁は明確に消極的な姿勢を示した。あくまで為替ではなく物価を重視するとの姿勢を貫いた。中央銀行のロジックからすれば不自然なところはないが、マーケットの期待との齟齬(そご)が気になる。

今回の金融政策決定会合では、市場で追加緩和期待がくすぶっているなかでも、結果をいつもより早い午前中に出してしまい、しかも結果はそっけなく「現状維持」で、さらに声明文からは「強力に金融緩和を推進」の文言を外すなど細かいところで市場に釘を刺した。会見でも同じ姿勢を示した。総裁会見の内容は市場の予想通りだったので、特に大きな反応は示さなかったのだろう。

先行き、金融政策面での円安サポートは見込みにくくなってきている。むしろ、米連邦準備理事会(FRB)との差が今後は意識されるだろう。6月末にはツイストオペが終了するため、このタイミングでFRBが何か打ち出してくるだろうとの期待が出やすい局面でもある。日銀とFRBのマーケットに対する姿勢の違いがドル/円にも反映されるのではないか。中央銀行はマーケットを気にしないのが本来の筋論だが、かといって真正面から否定する必要もない。FRBはマーケットを自由に泳がせておきながらも自分たちの目指す方向にマーケットをうまく誘導する意味で長けている。

●欧州にリスク、臨時会合を含め緩和検討も

<第一生命経済研究所 主席エコノミスト 熊野英生氏>

日銀は今後いつ緩和に動いてもおかしくない、との予想を否定するものではなかった。欧州問題は最も意識すべきリスク要因となっている。ギリシャのユーロ圏離脱で急激な円高が進む場合を想定し、防衛策を念頭に置いているのではないか。6─7月にかけては臨時会合を含め、日銀の金融政策の動きから目が離せない。

●緩和姿勢が後退したように見せていない

<みずほインベスターズ証券 チーフマーケットエコノミスト 落合昂二氏>

強力な金融緩和を引き続き推進する姿勢を確認できた。緩和姿勢が後退したように見せていない。「付利などさらなる金利引き下げ、デメリット大きい」との発言については、ゼロ金利政策、量的緩和を過去実施したときに短期金融市場への副作用があり、その反省から譲れない姿勢を示したと受け止めている。

外債購入で「為替安定目的の政策は政府の介入で可能、是か非かは政府が判断」との発言からは、政府と日銀の合作で基金を設立し、円高をくい止めつつ資金を供給する議論が進む可能性が出てきたようだ。日銀の金融政策に手詰まり感がある中、方向性が変わる可能性について注意しておく必要がありそうだ。

●決め手を欠く、先走る緩和期待にけん制も

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券・債券ストラテジスト 稲留克俊氏>

白川方明日銀総裁は会見で、基金による国債の買い入れで札割れが生じたことについて、緩和効果が浸透していることが背景にあるとの認識を示すとともに、基金の残高を確実に積み上げる方針を明らかにした。オペ札割れが相次ぎ、基金の目標達成が危ぶまれる中で、ヘッドラインを見る限り具体的な積み上げ方法に対する言及を避けた。市場の一部に浮上していた超過準備の付利引き下げの思惑に対してデメリットが大きいとして、否定的な考えを示した。

さらに、決定会合の声明で「強力に金融緩和を推進する」の文言を「適切な政策運営に努めていく」との表現に変更した点について、強力な金融緩和の推進する姿勢は全く変わりはないとして、具体的な説明を避けた。

総裁会見の内容は、全体として市場が求めていた説明に対して、決め手を欠いた印象をぬぐえない。日銀は、展望リポートの中間評価や欧州情勢を踏まえて追加緩和に踏み切るだろうが、先走る市場の追加緩和期待をけん制する意図があったのかもしれない。

●市場の懸念に対しゼロ回答、極めてネガティブ

<BNPパリバ証券 日本株チーフストラテジスト 丸山俊氏>

注目していた会見だが、非常にがっかりした。極めてネガティブなものといえる。景気や金融面でのリスク要因をいくつも指摘しておきながら、市場は少なくとも今は安定している、とこれまでの金融緩和の効果を強調しているだけだ。市場は先をみているにもかかわらず、フォワードルッキングなものではなかった。少なくとも今後のリスク要因だ。

あすの株式市場への影響は、今晩の欧州連合(EU)非公式首脳会議次第だが、もう一段の売りになる可能性もある。日銀が市場の懸念に対して、ゼロ回答となり、フォワードルッキングなセーフティネットを張れなかったことで、下に抜けてしまう感じがある。この環境下で、日銀が当面、頼りにならないことが判明した。

米国には以前「グリーンスパン・プット」があり、今は「バーナンキ・プット」が存在する。しかし日本において「白川・プット」が存在するかというと、それは難しいようだ。

*内容を追加して再送します。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below