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焦点:緊縮策で成長鈍化のユーロ圏、次の難関は膨大な民間債務
2012年2月23日 / 05:13 / 6年前

焦点:緊縮策で成長鈍化のユーロ圏、次の難関は膨大な民間債務

2月22日、 欧州においては、市場が釘付けになっているギリシャをはじめとするソブリン問題から目を離してみると、企業や家計が抱えるより大規模な債務問題への取り組みが極めて遅いことが、急速に心配の種になりつつある。写真は昨年12月撮影(2012年 ロイター/Tony Gentile)

[ロンドン 22日 ロイター] 欧州においては、市場が釘付けになっているギリシャをはじめとするソブリン問題から目を離してみると、企業や家計が抱えるより大規模な債務問題への取り組みが極めて遅いことが、急速に心配の種になりつつある。

財政緊縮によって経済成長が鈍化することが示唆されている中で、こうした債務の返済負担は増える一方で、不良債権の拡大につながる恐れがある。そうなれば銀行の損失負担能力と、銀行が政府支援を要請する必要が出てくるかどうかに注目が集まるだろう。

過剰債務は、ユーロ圏周縁国に限った話ではない。欧州連合(EU)欧州委員会は、マクロ経済不均衡の診断と是正への対応の一環として、民間債務の対国内総生産(GDP)比率でみた安全水準を160%以下と設定した。しかしデンマークやスウェーデン、オランダといった国でもいずれも同比率はこの安全水準を大きく上回っている。

オランダの場合、主因は住宅ローンの増加で、同国中央銀行のクノット総裁によると、税制優遇措置の影響で2000年以降は毎年7%強のペースでローン残高が増えたという。

欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーでもあるクノット総裁は最近の講演で「高水準の住宅ローン残高が、オランダ経済の一番もろい部分だというのが、わたしの見解だ」と述べた。

ある程度までは、借金というのは経済成長にとって有用であるばかりか不可欠なのだが、度が過ぎる場合もある。

欧州委は、民間債務の対GDP比率が安全とした160%を超えているのはEU加盟27カ国中で少なくとも15カ国に達するとしている。最も比率が大きいのはアイルランドの341%。

国際決済銀行(BIS)が最近発表した論文では、公的債務の対GDP比率が85%から95%に上がると、潜在成長率は0.1%ポイント以上押し下げられる可能性があると結論された。企業債務の場合は痛みを伴う同比率は90%近辺で経済への打撃はより軽微で、家計債務の同比率の節目は85%程度という。

この論文の著者グループを率いたBISのチーフエコノミスト、スティーブン・チェケッティ氏は「先進国が直面している債務問題は、われわれが想定していたよりも深刻であるという研究結果がはっきりと示されている」と指摘した。

<スペインの痛み>

では何をするべきなのか。BISの論文は「現在の努力は借り入れコストを引き上げ、潜在的な借り手が資金を調達しにくいようにする点に主眼が置かれている。恐らくわれわれはさらに進んで、債務返済に対する直接的な政府の補助金や各種優遇制度を縮減する必要がある。そしてつまるところ、唯一の解決策は貯蓄を積み上げることだ」としている。

欧州諸国で民間債務が憂うべき高水準にあるのに、市場の関心は、EUと国際通貨基金(IMF)の金融支援を受けたり、懲罰的な金利での借り入れに苦労しているような国の動向にどうしても集まってしまう。

スペインを例にしよう。同国の公的債務の対GDP比率は危機発生後に2倍になったとはいえ、まだ61%でしかない。一方で民間債務は対GDP比227%という膨大な水準だ。

ロンドンのコンサルティング会社ロンバード・ストリート・リサーチのエコノミスト、ジェイミー・ダンハウザー氏は、こうしたスペインの債務構成をみて、同国が放漫財政によってソブリン債務危機に見舞われていると考えるのは理屈に合わないとの見方をしている。

そうではなく投資家は、景気悪化につながる政策がスペイン企業に、さらに時間を置いて銀行に及ぼす影響を懸念しているので、高い国債利回りを要求しているのだ。

ダンハウザー氏は「経済成長こそ、民間債務残高を持続可能にする唯一の道であり、スペインが実行を迫られているすべての政策は短期的にGDPを圧迫すると市場はかなり合理的に判断している」と話した。

<債務圧縮はゆっくり>

銀行は不良債権の引当金を積んできているが、ダンハウザー氏はスペインの民間債務残高を「グロテスク」と表現する。

同氏は「市場は銀行に懸念を抱いている。そして最終的には政府が銀行の後ろ盾になるので、政府に対して心配することになる」と説明した。

もしスペインが景気後退に陥れば、同国より多額の債務を抱え、競争力に劣る隣国ポルトガルにも悪影響が及ぶだろう。

欧州委によると、ポルトガルの公的債務の対GDP比率が93%なのに比べて、民間債務は249%である上に企業債務は金融危機のピーク時と同じ水準のままだ。

またロンバード・ストリート・リサーチの計算では、ポルトガルの非金融企業の債務は、利払い前キャッシュフローの16倍とスペインの12倍より高く、企業の返済能力は限界に達している。

ダンハウザー氏は「このため、ポルトガルの銀行システムは、景気後退の深刻化に対して非常に大きな影響を受ける立場に置かれている」と話した。

ユーロ圏全体でみれば、より経済規模の大きな国の大半では企業が債務の圧縮を始めており、状況はやや明るい。

ブリュッセルのシンクタンク、ブリューゲルのギュントラム・ウォルフ氏とエリック・ルーシャー氏の研究によれば、ユーロ圏の企業の総資産に対する債務比率は2009年のピーク時から減少した。GDPに対する企業債務比率も09年末の81%から79%に低下したが、2000年までは60%だったことからすると、すべて解決したと言うのは時期尚早だ。

両氏はリポートで「非金融企業の債務が歴史的に見てなお高水準にあることは、まだ脆弱性が残っているという意味だ。借り入れコストが高いというシナリオにおいてはなおさらだ」と強調した。

(Alan Wheatley, Global Economics Correspondent)

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