Reuters logo
焦点:アジアの物価圧力、前月比でみれば上昇傾向
2012年4月10日 / 06:17 / 5年前

焦点:アジアの物価圧力、前月比でみれば上昇傾向

4月9日、アジアのインフレはどこから取り上げるかによって、落ち着いているようにも、高止まりしているようにも見える。中国の湖北省にあるスーパーマーケットで2月撮影(2012年 ロイター/Darley Shen)

[シンガポール 9日 ロイター] アジアのインフレはどこから取り上げるかによって、落ち着いているようにも、高止まりしているようにも見える。

中国の3月のインフレ率は引き続き政府目標の年率4%を下回り、鈍化傾向が続くように見える。韓国の物価も過去1年8か月で最低となった。しかしその他の先月の物価統計は、インフレ圧力の実質的な高まりと原材料価格の上昇を示している。

こうした不一致はインフレの測定方法に由来する。多くのアジア諸国のは主要物価指数が前年同月との比較で、前月比が一般的な欧米諸国と異なる。このことが問題を引き起こしている。

アジアのインフレが現在落ち着いて見えるのは、前年同月の数字が強かったためのベース効果による。昨年3月にはリビア紛争に伴う原油供給懸念で石油価格が急上昇したほか、豚肉などの供給不足が物価を押し上げた。

政策金利を調整する中央銀行は物価について、過去の動きではなく今後の方向性を知る必要がある。さもないとインフレ高進の警告サインを見逃して抑制が難しくなるリスクがある。

ノムラ(香港)のチーフ・アジア・エコノミスト、ロブ・サブバラマン氏は「前月比のデータの方がインフレの波動の足元の動きを測定しやすい。現時点で前年同月比の数字の深読みにはやや懐疑的だ」と話した。

ただ、どの統計にも限界はある。アジアの統計機関の多くは、中国の春節(旧正月)の日程移動などに関連する季節調整を行っていない。前年同月比ならばこの問題は解決するが、代わりにベース効果などの懸念が生じる。

季節調整は正確な作業が難しいことで知られる。エコノミストによると、米政府はこの冬の労働市場の季節変化を誤って算定し、このために失業率が異常に低くなった。

ノムラのサブバラマン氏は、年内にアジアのインフレ問題は深刻化すると予想している。コモディティ相場の上昇や金融緩和、労働市場の逼迫は、需要の増大につれてインフレが急上昇する見込みだという。

韓国銀行(中央銀行)とインドネシア中央銀行は今週、金融政策決定会合を開く。物価圧力は現在抑えられているが、インフレの脅威を警戒し、政策金利を据え置く見通しだ。

<矛盾するシグナル>

9日発表された中国の3月消費者物価指数(CPI)は、いかにデータが混乱を生じさせるかという典型的な事例だ。3月CPIは前年同月比3.6%の上昇で、ロイターのエコノミスト調査の予想中央値を下回った。一方、生産者物価指数(PPI)は同0.3%の上昇で、物価圧力上昇の可能性を示した。

中国は統計に季節調整をかけておらず、前月比の変化を克明に読み取ることは難しい。今年は春節が1月に当たったので、同月に食品や休暇がらみの項目が大きく値上がりし、2月にはそれがやや収まった。3月の数字の上昇は、2月に物価が収まったこととの関連が大きいともみられる。

3月のCPIが予想外に上昇した最大の要因は食品。ただ1年前とは違って主因は豚肉ではなく果物と野菜だった。

みずほ(シンガポール)のアジアエコノミスト、ビシュヌ・バラサン氏は、インフレが脅威として再浮上する兆しを用心していたが、9日の統計にその心配はなかったと語った。昨年は豚肉の値段が高止まりしていたが、豚を肥育するのはキャベツ栽培より時間が掛かる。

バラサン氏は「食品インフレの知識を基にすれば、心配する理由はない。燃料インフレの知識では、問題はありそうだが、まだ顕在化していない」と語った。ただ、中東の紛争によって原油価格がバレル当たり150ドル近くと2008年に付けた最高値近傍になれば、アジアのインフレに対する懸念は強まるという。

<アジアを侵食するもの>

日本を除くほとんどのアジア諸国では、CPI項目の約40%を食品とエネルギーが占める。つまりコモディティ相場を見ていればインフレが向かう方向が分かる。

コモディティ相場の動きは、前年同月比のデータが前月比のデータと食い違う仕組みを説明する材料にもなる。

コモディティ相場の幅広い指標であるトムソン・ロイター・ジェフリーズCRB指数.CRBは2011年3月半ばから2012年3月半ばにかけて15%も低下した。しかし今年2月半ばから3月半ばでは逆に1.5%上昇した。

インフレウオッチャーがもっと懸念しているのは、コモディティ相場の上昇が経済に浸透し、最終的に賃金を押し上げることだ。物価上昇が賃上げ要求になり、それが物価高に跳ね返る、賃金と物価のスパイラル的上昇は大きな懸念だ。

賃上げを主導しているのは中国。最新の5カ年経済計画では2015年まで毎年、最低賃金を15%上昇させることになっている。ライバルの輸出国はこれに追随しそうだ。競争力を失うことなく賃金を増やせると分かっているからだ。

バークレイズ(シンガポール)のエコノミスト、ラフル・バジョリア氏は、タイやマレーシアのほか、インドネシアの一部地域で賃上げが実施されるか、計画されていると指摘し、インフレ圧力が高まっているという見方を強めている。

バジョリア氏は「インフレの谷間は以前予想していたよりかなり浅くなりそうだ。(インフレ率の)ヘッドラインよりも深い部分を見て、物価の全体的な動きがやや不都合な状況に転じつつあることを理解すべきだ」と語った。(Emily Kaiser記者)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below