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焦点:中国版「ツイッター」、新指導部の自由化量るバロメーターに
2012年11月2日 / 03:11 / 5年前

焦点:中国版「ツイッター」、新指導部の自由化量るバロメーターに

11月1日、中国のネット空間は、自由化に対する新たな指導部のスタンスを推し量るためのバロメーターにもなりそうだ。写真は中国版「ツイッター」と呼ばれるミニブログ「微薄(ウェイボー)」を見る男性。上海で5月撮影(2012年 ロイター/Carlos Barria)

[上海 1日 ロイター] 中国指導部の世代交代を2週間以内に控え、同様の変化がネット上でも起きている。検閲に挑戦するユーザーと取り締まる政府当局。中国のネット空間は、自由化に対する新たな指導部のスタンスを推し量るためのバロメーターにもなりそうだ。

中国版「ツイッター」と呼ばれるミニブログ「微薄(ウェイボー)」は3年前の登場以来、3億人近いネットユーザーが韓国のメロドラマから中国の最新の政治的陰謀まで、何についても意見を述べることができる中国の「(うわさ話に花が咲く)オフィスの給湯室」となっている。

厳しい政治・社会的統制を維持することを包括的な目標とする一方、民衆の不満や怒りのはけ口を用意したい中国共産党の指導部にとっては、扱いに苦慮する厄介な代物となっている。

米ハーバード大学ケネディスクールのTony Saich教授(国際問題)は「新たな指導部が直面するであろう主要な課題の1つは、新たな統治メカニズムを通じて信頼性を築くことができるかだ」と指摘。「ネットで世界とつながっている都市部の中間所得層に彼らはどう対応するのか。そうした中間所得層が今後とも子どものように扱われる可能性は低くなるのではないか」と述べた。

解決法の1つは、問題の1つでもある。それが微薄だ。

10月26日、江西省の幹部らが広州発の民間航空機便の出発時刻に数時間遅れてやって来た際、ネット上では凄まじい批判の声があふれた。他の乗客はフライトが遅れたのが単に幹部らを乗せるためだったとして、激怒したためだ。

政府はネット上の怒りを検閲でシャットダウンすることなく、そのまま黙認。微薄では、ランクの低い政府幹部の健康状態や汚職、権力乱用といったゴシップが暴露されることがままある。

くしくも同じ日には、米ニューヨーク・タイムズ紙が温家宝首相の家族をめぐる財産について長文記事を掲載。本家ツイッター上で世界的な話題となったものの、微薄ではほとんど盛り上がらず、記事に関する投稿は直接的な言及であれ、ほのめかしであれ、すぐさま全てブロックされた。

微薄で一定の党批判認め、あるいは時には「流行トピック」にすることで、中国当局はネット上の自由な言論空間をめぐる幻想をつくりだすよう努力してきた。その一方で、それ以外のトピックについてはほのめかすことすら許さない。

中国のネット検閲状況を監視するウェブサイトを設立した中国在住の米国人、マーティン・ジョンソン氏(仮名)は「微薄を含め、ネット上のことは全て不規則に起きているのではない。大部分がまさに計画の一部なのだ」と指摘。「微薄が存在する理由は党が認めたからであり、党は微薄の利点を利用できると考えている」と解説する。

<腕時計もあだに>

Huazongを名乗るあるミニブロガーは、微薄上で「監視人の監視」を行っている。彼は2011年7月以降、給料にそぐわない高級腕時計を身に着けている政府幹部の写真を集め、ネット上で掲載している。

彼の手にかかった最近の「被害者」に陝西省安全監督局の楊達才局長がいる。微薄ユーザーらは、同局長の写真を掘り起し、10個以上の高級腕時計をそれぞれ異なる場面で身に着けていたことを突き止めた。これを受けて9月に楊達才氏は局長を解任された。

Huazong氏はロイターTVに対し、「これまでに数十人に及ぶ政府幹部の腕時計を暴露してきたが、直接的な脅迫を受けたことはない」と述べた。「政府幹部の中には、私になぜこんなことをしているのか尋ねるのもいるが、政府幹部の財産申告システムの確立を促すためだと答えている」と話す。

微薄ユーザーは、地方レベルの政府幹部に関する醜聞を掘り起こす自由はあるが、国のトップ指導層については、名前やニックネーム、名前をもじって作成した言葉もウェブサイト上ではブロックされ、発言を封じ込められている。

広州の中山大学でジャーナリズムを教えている張志安氏は「中国では、県(中国の行政単位では省、自治区、直轄市の下)レベルより下の政府幹部に関しては批判や調査報道が可能だが、トップ指導層を批判することはできない」と指摘する。

こうした状況は、中国の権力地図に由来する部分もある。検閲を指示するのは北京の中央政府であり、このことは微薄から何を削除するかをめぐり、省レベルの政府幹部は発言権が弱いことを意味している。

米カリフォルニア大学バークレー校の非常勤教授で、微薄上で当局に禁止されている言葉のリストを更新し続けるウェブサイト「チャイナ・デジタル・タイムズ」を設立したシャオ・チャン氏は「党書記は批判されても、北京まで行って『微薄上の私に関するすべてを削除してください』と言うのは難しい」と話す。

同氏は「地方レベルにとどまり、より高位の党指導部に及ぶ可能性がないならば、(検閲で)引っかかることはない。一方、党の正当性に対抗しているとみなした情報に検閲は素早い反応を示す」と述べた。

多くの専門家が言うように、平均的な微薄ユーザーが検閲に困ることはあまりない。業界のデータによると、ユーザーの大半が、微薄を政治・社会活動ではなく、娯楽のために利用している。

<党大会に向け規制強化>

トップ指導層をめぐる話題や、中国でタブーとなっている3つのT(天安門事件、台湾問題、チベット問題)は削除されているものの、微薄上には政治討論に関するコードが存在しており、以前よりも中国のネット上の自由度は高まっている。

11月8日に開幕する党大会では10年ぶりとなる最高指導者の交代が予定されるため、党大会に関する投稿は厳しく監視されている。

ネットユーザーは、政府の検閲を避けるため、今回の党大会の略称をもじった「斯巴達(si ba da)」といった暗号を利用。正規の略称「十八大(shi ba da)」は検閲に引っかかるため、例えばあるネットユーザーは「インターネットのスピードがだんだんと遅くなっているけど、これは『斯巴達』が近付いているから、もしくは世界の終りだから、かな」のように使っているといった具合だ。

専門家によると、重要な政治イベントが近付くと中央政府がネット監視を強めるため、ネットの速度が急激に遅くなるのはよくあることだという。

ただ、こうした当局とユーザー間のやり取りも、中国の安定や発展には極めて重要だと指摘する声もある。複数のネット業界幹部は、共産党が政策に関するリアルタイムの反応が得られ、民衆のムードを測ることができるためだと指摘する。

中国においてインターネットの一段の大幅な自由化が実現するかは誰にもわからないが、インタビューを行った業界の専門家の大半は、党大会後に検閲が幾分緩和されると見込んでいる。

緩和されたとしても、多分に政治的な理由からだというのが明白だとアナリストらはみている。新たな指導部は任期の当初に、言論の自由を含めた政治改革について、自身が保守派よりもオープンであるとのイメージを与えたいと考える可能性があるためだ。

微薄ユーザーらは、新指導部がネット上の自由にどれくらい寛容になったのかをすぐさま調べることになるに違いない。

( Melanie Lee記者;翻訳 川上健一;編集 宮崎亜巳)

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