FX規制特集:取引への影響は限定的、業界健全化へ
[東京 30日 ロイター] 外国為替証拠金取引(FX)で、少ない資金で大きな取引が可能になるレバレッジの最高倍率が8月1日から50倍に規制される。
既に対応済みとする業者が多いほか、規制対象となる高いレバレッジで取引を行う投資家は主流ではないとの調査結果もあり、影響は限定的とみる関係者が多い。むしろ、今回の規制によって高いレバレッジをセールストークにした過当競争が鎮火するなど、FX業界の健全化が進むとの見方が出ている。
FXは取扱業者に証拠金を預け、それを元手として通貨を売買する取引。その際の取引金額と証拠金の割合がレバレッジで、通常はこれを倍数で示す。たとえば、1万円を預けて10万円分の外貨を購入する場合のレバレッジは10倍となる。現在のドル/円のレートにおいてレバレッジ10倍で1万ドル(90万円弱)の取引を行うなら、9万円弱の証拠金で売買が可能だ。100倍であれば、ざっと1万円の少額で1万ドルの取引ができる。
ハイレバレッジで投資を行った場合、読み通りに相場が動くと、倍率が高ければ高いほど利益は大きくなるが、読みがはずれた場合は損失額も大きい。100倍であれば、現在のドル/円では、わずか1円の値動きで証拠金が吹き飛んでしまう計算となる。相場急変時にロスカット(損切り)がうまくできずに大金を失う投資家が後を絶たず、これを問題視する声が出て今回の規制につながった。金融庁では規制を導入する際に実施したパブリックコメントに対し、高いレバレッジの考え方として、1)顧客保護(ロスカット・ルールが十分に機能せず、顧客が不測の損害を被るおそれ)、2)業者のリスク管理(顧客の損失が証拠金を上回ることにより、業者の財務の健全性に影響が出るおそれ)、3)過当投機──の観点から問題があると示していた。
社団法人・金融先物取引業協会の調査によると、店頭金融先物取引の出来高(総取引金額)でFXは、07年度が694兆円、08年度が1769兆円、09年度が2093兆円と急拡大。高いレバレッジが投資家を虜(とりこ)にしているとの指摘もあり、規制によって市場が縮小すると懸念する声も出ているが、現時点で業界では大幅に取引が減少するとはみていない。
クリック証券が6月18日─20日、インターネットを利用してFX取引者(1年以内の取引経験があり、今後も取引継続の意向がある投資家)500人に対し実施した「第2回FXに関する実態調査」では、9割強が今後も取引を続けるとしたほか、レバレッジの利用についても71%が40倍以下で実施、41倍から60倍以下を含めると78%に達し、多くの投資家が現時点で規制対象とならない取引を行うとともに、100倍を超すレバレッジで行う投資家は少数派であることが示された。規制案を作成する際に調査を行ったとする金融庁の幹部も「ハイレバレッジでも投資家は証拠金が十分で、平均で10─20倍程度のレバレッジしかかけていないケースもあった。ギリギリでやっている一部の投資家はかなり影響を受けるかもしれないが、大部分は十分な証拠金、節度ある倍率で取引していたとみられる。大きな影響はないのではないか」と指摘する。
ただ、取引業者の多くが規制への対応は済んだとしているものの、ビジネス面では慎重な見方も出ている。ハイレバレッジ派は投資家全体でみれば少数でも、短期回転売買を行うがゆえに取引量が膨らむ。こうした投資家の取引が規制導入後に縮小すれば、取引業者にとっては利益の減少につながるリスクが生じる。FX事業が利益の約半分を占めるサイバーエージェント(4751.T: 株価, ニュース, レポート)では、2010年9月期第3・四半期(4─6月)にFX事業が四半期ベースで過去最高の営業利益を記録するとともに、第2四半期比で口座数が7.8%増、預かり資産が15.8%増と伸びを示したが、規制が導入される8月以降はまったく読めないとしている。
それでも「レバレッジが規制されたからと言って取引を止めてしまう投資家が多くなるとは想定していない」(サイバーエージェント・広報・IR室シニアマネージャーの宮川園子氏)という。既に50倍を超すポジションが持てないなど、規制への対応は完了したとする外為どっとコム・営業企画部の担当者は「今まで100倍で行っていた投資家が証拠金を2倍にして50倍で行うなど、理論的に同じ取引になるよう工夫するケースもあるようだ」と話す。個人投資家の間からも「レバレッジが何倍かというのは投資に関係なく、重要なのは資金管理や配分をきっちり行うことだと思っている」(「ミセスワタナベ」の1人として著名な池辺雪子氏)との声が出ていた。むしろ業界では「来年8月1日から25倍に引き下げられた際の影響が大きくなりそう。来週からの規制導入後の動きを見極め、来年以降の対処を考えたい」(外為どっとコム)との指摘もあるなど、足元よりも50倍の経過措置が終わった後に関心が向きそうだ。 続く...




















