世界経済の厳しさと市場混乱の長期化を意識させたG7、具体策は出ず
[東京 9日 ロイター] 7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は9日、世界経済がよりチャレンジングで不確実な環境に直面しているとし、経済の安定や成長確保のため、引き続き状況を監視し、個別あるいは協調して適切な行動を取ることを明記したG7声明を発表して閉幕した。
サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題を発端にした世界的な市場の混乱と世界経済の後退リスクに直面する中で開かれたG7は、声明に「協調」の文言が入ったものの、具体的な行動は明記されなかった。ポールソン米財務長官が世界的な金融市場の混乱は深刻で長引く公算が大きいと述べたことに示されるように、世界経済の先行きが厳しいとの認識だけが目立つ結果になった。
<イタリア財務相が前回G7より経済に対して悲観的と指摘>
9日夜の会見で、議長の額賀福志郎財務相は、今回のG7を受け、市場の不透明感が解消し、世界経済が復活することを確信すると述べた。
だが、イタリアのパドアスキオッパ財務相は、G7の経済に関する見解は前回会合よりかなり悲観的になったと指摘。ドラーギ・イタリア中央銀行総裁は、G7の中でのバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を明らかにした。同議長は、今回の混乱の発火点とも言える米住宅価格の動向について、下落の期間、危機の深刻さは分からないと述べ、現在の世界的な混乱の収束のメドが立ちにくいことを示唆したという。
<米財務長官は世界市場の混乱長期化に言及>
また、ポールソン米財務長官は会見で、世界的な金融市場の混乱は、深刻で長引く公算が大きいと指摘。米経済は下方リスクに直面しており、景気刺激策が必要だとの見解を示した。米経済の現状に関連し、住宅市場の調整やエネルギー価格の高騰、市場の混乱が成長の重しになっているとし、金融市場の大きな変動はリスクの再評価が行われる間は継続すると指摘した。
2007年10月にワシントンで開かれたG7では、夏にサブプライム問題によるグローバルマーケットの混乱が表面化していたものの、まだ声明では「力強い成長は5年目に入っている」「全体のファンダメンタルズは引き続き強力である」などと自信を示す言葉が示されていた。それだけに今回のG7声明や各国の財務相、中銀総裁から示されたリスク警戒型のコメントは、世界経済の置かれた環境が急変したことを端的に示すことになった。
<米は日欧の内需拡大策に期待感>
額賀財務相は、会議終了後の会見で、G7の間で認識を共有し、一致した見解を示したことは安定に向けたメッセージになると述べるとともに、サブプライム問題に関連し、各国がきちんと対応し、必要があれば協調することを確認したと述べた だが、声明を見ても具体的な対応には全く言及がない。声明では、G7は「経済の安定や成長を確保するため、引き続き注意深く状況を監視し、個別あるいは協調して適切な行動を取る」とするにとどまった。
ポールソン米財務長官は会見で「他の国に財政出動計画の策定は要請していない」と発言しながらも、「日本はじめ各国には、輸出より需要拡大に力点を置くことを希望する」とも述べ、各国が内需拡大に努力するようクギを刺した。
<日本は独自の対応を強調、欧州から冷めた声>
日本国内との関連では、額賀財務相が「金融不安・経済対策は、それぞれの事情にあった対策を打ち出すことが重要」と会見で述べ、日本が世界経済の不透明感を払しょくするために自発的に財政政策を打ち出したり、金融緩和政策を発動する状況にはないことをにじませた。
福井俊彦日銀総裁も「マクロ経済運営は、各国が問題を共有しながらそれぞれ適切に対応する」と述べ、直ちに協調して利下げに臨む考えはないことを示した。
欧州からも冷めた声が多かった。ドラーギ・イタリア中銀総裁は会見で「欧州では信用収縮は起きておらず、米国とは同じ状況にない」と述べ、シュタインブリュック独財務相は「ドイツで景気刺激策や成長見通しの改定が必要だとは思わない」と指摘した。
<世界経済の不確実性、声明で明記>
G7声明は、G7諸国の成長は短期的に幾分減速するが、新興国は底堅い成長を続けるとの見通しを示した。世界経済について「ファンダメンタルズは依然強いが、環境は前回会合よりチャレンジングで不確実性が増した」と指摘。サブプライム問題が発生し、世界の市場混乱の起点となった米国については「生産・雇用の伸びが著しく鈍化し、リスクはさらに下方に振れた」との厳しい認識を示した。
その上で世界経済全体について「世界的な経済・金融の動向を反映し、程度の差こそあれ短期的にはある程度、成長が減速する」との見通しを示した。
<為替はファンダメンタルズを反映するべき>
為替に関しては「為替レートは経済ファンダメンタルズを反映すべきとの考え方を再確認した。為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済成長にとって望ましくない。われわれは引き続き為替市場をよく注視し、適切に協力する」と明記。
中国人民元に関しては「実効為替レートのより速いペースでの増価を促すことが必要」とした。増価を促すとしたところが目新しいが、それ以外は、前回までの表現を踏襲した。
<金融機関の損失、即時かつ徹底的な開示促進を求める>
今後のサブプライム問題の収束のカギを握る金融機関の動向に関しては、金融機関による損失および金融仕組み商品の価格評価の即時かつ徹底的な開示の促進、銀行および他の金融機関のオフバランス機関へのエクスポージャーに対する理解と開示の改善、格付会社における潜在的な利益相反への対応と金融仕組み商品のリスクに対する投資家の理解促進に向けた格付関連情報の改善──などが重要であると明記した。
だが、損失を開示した後に来るであろうき損した資本の穴埋めに関しては、明確な方策を示すことはなかった。
<景気後退に陥らない確信あると米国が明言>
世界的な景気減速の震源地である米経済について、ポールソン財務長官は「住宅市場の落ち込みが最大のリスク」と述べ、サブプライム問題が火元であることを認めた。ただ、景気後退には陥らないと信じているとも明言。約1500億ドルに上る財政出動の政策パッケージやFRBの大幅な利下げの効果がいずれ出てくることに期待感を示した。
米経済がポールソン長官の期待通りに今年後半から回復に向かい、新興国の経済成長も手伝って世界経済が4%弱の成長を維持できれば、金融面での混乱を吸収できる構図が生まれる公算が大きい。
しかし、そうならないケースに直面した場合、G7がもはやかつての神通力を失いつつある中で、世界経済は混迷の度を深める可能性が高そうだ。
(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦)
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