福井日銀総裁の市場評価は69点、村上ファンド問題で傷

2008年 03月 7日 19:28 JST
 
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 [東京 7日 ロイター] 5年間の任期を3月19日に終える福井俊彦総裁が率いた日銀の実績を6人の債券ストラテジスト・エコノミストが採点したところ、100点満点中69点という平均点になった。デフレ脱却を目指した積極的対応に高い評価の声が出ている一方、最近の停滞感を強める景気に対する認識が実体とズレを生じているのではないかとの指摘も出ていた。

 村上ファンドへの投資問題がなければ、総裁再任もあったとする見方もあった。

 「福井日銀」の5年間を功績では「前例のない政策手段を駆使。結果として日本経済をデフレ・スパイラルの淵から救い、デフレ脱却の方向に導いた」(三菱UFJ証券・チーフ債券ストラテジストの石井純氏)との声が上がった。06年3月の量的緩和政策の解除にあたっては、長期金利の急上昇を回避して市場の混乱を最小限にとどめた手腕が評価された。

 一方、07年2月に無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%に引き上げて以降、1年以上にもわたり政策金利を据え置く状況が続いた。「生産自体が踊り場を迎えており、日銀が掲げる生産・所得・支出の好循環メカニズムが働いているとする景気判断が、正しかったのかどうかに課題を残す」(日興シティグループ証券・チーフストラテジストの佐野一彦氏)という。

 さらに金融政策運営以外では、村上ファンドへの投資問題が福井氏自身の信任を大きく傷つけた。東短リサーチ・チーフエコノミストの加藤出氏は「その問題さえなければ、おそらく今ごろは福井総裁再任という議論も起きていただろう」と話している。

 債券ストラテジスト・エコノミストの回答内容は以下のとおり(五十音順)。

 <三菱UFJ証券・チーフ債券ストラテジスト 石井純氏>

1)採点:40点(村上ファンド問題がなかった場合80点)

2)評価する実績:前例のない政策手段(量的緩和、時間軸、担保拡充など)を果断に駆使。結果として日本経済をデフレ・スパイラルの淵から救い、デフレ脱却の方向に導いた。

3)残した課題:デフレ脱却が道半ば。また、巨額な中長期国債買い切りオペの「根雪化」により金利機能を封殺してしまった結果、「財政規律の弛緩(しかん)」や「構造改革の停滞」といった副作用も慢性化させた。

 <みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

1)採点:60点

2)評価する実績:ゼロ金利解除の失敗による日銀の政治的地位低下を改善したのは功績。評価は分かれるが、国債買い切りオペの増額に手をつけず、財政と金融の関わりで疑義があるとのスタンスを維持、節度を持って対応した点も評価している。

3)残した課題:説明責任の軽視。不可解なタイミングでの利上げ決定もあった。利上げ効果が出てくるとみられる今後、景気が悪化している可能性があり、フォワードルッキングな金融政策が結果的に失敗に終わることに関する弁明もない。

 <東短リサーチ・チーフエコノミスト 加藤出氏>

1)採点:85点

2)評価する実績:政府サイドから反対の声も上がっていたなかで、金利のある世界に金融政策を戻したことは評価されていい。量的緩和政策の解除や利上げによって長期金利が急騰するなど大きな混乱もなく、総じてマーケットとのコミュニケーション能力は高かったのではないか。

3)残した課題:村上ファンド問題が残念で、それさえなければおそらく今ごろは福井総裁再任という議論も起きていただろう。また、2回目の利上げの際は市場とのコミュニケーションがギクシャクした。日銀はかなり長期にわたって政策変更を行っていなかったため、わかりにくい経済指標が出てきたときの対応に慣れていなかった。次の利上げは、だいぶ先になりそうなので目先の問題でないが、中期的な金融政策の方向性と短期的に経済指標が違う方向性を示した時の情報発信が課題。

 <第一生命経済研究所・主席エコノミスト 熊野英生氏>

1)採点:75点

2)評価する実績:今1つ効果がわからなかった量的緩和政策の解除に踏み切ったのは大きなプラス。任期後半には金利正常化という目標を目指したが、道半ばだ。

3)残した課題:ひとつは税収が上がってくるのを待ち政府債務の元本が減っていくような状態に戻していく財政政策の正常化の後押し。ふたつめは金利の正常化で、政策金利を中立水準である1%後半まで引き上げてもいいような体質を作ること。家計の購買力が増えた上での物価上昇を粘り強い金融緩和によって促していくことが必要だ。さらに経済の正常化に関しては、一部の企業部門だけが成長する不均等発展を覆し、需要の制約を生産性の上昇で跳ね返すことのできる経済状況を作ることで、日銀は直接的な行動はできなくともアイデアは出すというのが、望ましい政策協調なのではないか。

 <日興シティグループ証券・チーフストラテジスト 佐野一彦氏>

1)採点:75点

2)評価する実績:経済、市場環境に応じた金融政策運営、市場調節の迅速な変更について評価したい。金融政策運営に関しては市場に大きな混乱を与えずに遂行できた。外国人投資家の評価も高かった。

3)残した課題:市場との対話において、手掛かりを与えすぎたことで逆にギクシャクした。生産自体が踊り場を迎えており、日銀が掲げる「生産・所得・支出の好循環メカニズム」が働いているとする景気判断が正しかったのかどうかに課題を残す。

 <大和証券SMBC・チーフストラテジスト 末澤豪謙氏>

1)採点:80点

2)評価する実績:経済環境・金融システムの正常化に対応して、緩やかなペースで金融政策の正常化を進めた。

3)残した課題:政府・与党等との関係、距離感に関し不透明さが残った。

 (ロイター日本語ニュース 金融マーケットチーム)

 
 
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