春闘後の消費、景気けん引力不足との見方が大勢
[東京 12日 ロイター] 米景気減速の見通しが濃厚になる中で、景気をリードする主役として期待される個人消費の力強さに大きな期待はできないとの見方が民間エコノミストの間で台頭している。
福田康夫首相が御手洗冨士夫経団連会長に異例の賃上げ要請をして注目された春闘で、指標となる電機、自動車などの各企業の賃上げ回答が昨年と大差ない額にとどまったためだ。
外需や設備投資の弱まりが鮮明になった場合、消費が弱いままでは国内景気の調整感がさらに強まるリスクも出てきた。
今年度の業績が過去最高益を更新するとみられるトヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)では、賃金改善分を昨年と同じ1000円を回答。松下電器(6752.T: 株価, ニュース, レポート)、東芝(6502.T: 株価, ニュース, レポート)など電機大手の多くでも、賃上げは昨年と同じ1000円と回答した。
ほぼ昨年並みの結果となったことで「個人消費を刺激するほどのインパクトは無い」(住友商事総合研究所・シニアエコノミストの奥田壮一氏)、「今年の春闘は昨年度並みにとどまってしまったという事実は、先行きの消費について下振れリスクをもたらす」(ABNアムロ証券・エコノミストの西岡純子氏)など慎重な見方が多く出ている。
慎重な見方が多い背景として「消費者マインドが冷え込んでいれば、仮に賃金が上がっても、それが消費に回るとは限らない」(信金アセットマネジメント・投信エコノミストの宮嵜浩氏)という事情もある。奥田氏も「足元の株価下落など全体的な経済の環境を見ると、賃上げ分は貯蓄に回る可能性が高い」と指摘。三菱東京UFJ銀行・経済調査室調査役の高山真氏も「消費者マインド悪化が続いており、消費者の財布のヒモは固くなりそう」と予想した。内閣府が12日に発表した3月消費者態度指数は36.1となり、2003年3月(34.7)以来の低水準となっている。
今回の春闘では、トヨタが年間一時金253万円の要求に対し、満額回答したことが注目された。だが、宮嵜氏は業績好調なトヨタだけの特殊なケースと見る。
10─12月期の法人企業統計では、経常利益が2四半期連続で前年比マイナスに落ち込み、株価下落、急速な円高進行など、業績への陰りが強まるとみられる中、今後のボーナスは一段と厳しい数字になることも予想される。日本経団連によると、07年末の大手企業のボーナスも、前年比プラスを確保したものの、伸び率は0.9%にとどまり、06年末の2.4%増よりも鈍化している。
また、大手企業とは別に、中小企業の賃上げ率は、大手の数字よりもかなり見劣りすることが予想される。12月日銀短観での非製造業の業況判断DIは、大企業がプラス16だったのに対し、中小企業はマイナス12となり、28ポイントもの「格差」が存在する。東京商工リサーチによると、企業倒産による負債総額は1月、2月と2カ月連続で前年比増加となった。
中小企業は雇用の約7割を占めるだけに、消費への影響という点では無視できない。
こうした状況下、消費が景気のリード役となって、08年度政府見通しである実質国内総生産(GDP)の2%成長の達成は「高いハードル」(高山氏)とみられている。同氏は08年度実質成長率を1.3%程度と予想している。また民間エコノミスト30数人の予想を集計したESPフォーキャスト調査によると、08年度成長は1.6%程度と予想されている。
けん引役が不在とみられるなか、景気後退への懸念も徐々に強まっている。3月の同調査によると、今後1年以内に景気の転換点を迎える確率は42.2%となり、1月の33.3%、2月の39.1%から上昇しつつある。
(ロイター日本語ニュース 児玉 成夫記者、武田 晃子記者;編集 田巻 一彦)
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