円高メリット関連株に注目、原油価格下落で見直し余地広がる
[東京 18日 ロイター] 急速にドル安/円高が進む中、株式市場では円高メリット関連株が注目されている。外需依存度が高い日本の産業構造を象徴するように、これまで輸出関連株を中心に厳しい株価下落を余儀なくされてきたが、ここ一両日は原料輸入に伴い円高で生じるプラス面を評価して買う動きが随所で見られるようになった。
原油価格が下落に転じ、関連銘柄の見直し余地が広がるとみる向きもいる。
18日の東京株式市場では、ドル安/円高の一服が好感され、日経平均は反発に転じた。輸出関連株を中心に買いが入ったが、その一方で動きの良さが目立つのが、円高進行が増益要因になると期待される円高メリット関連株。これらの中には、日経平均が1万2000円を一気に割り込む波乱相場においても、逆行高を演じた銘柄は少なくなかった。たとえば、原料調達のほぼ100%をドル建て輸入に頼っている大手鉄鋼株はその好例だろう。
モルガン・スタンレー証券のアナリスト、五老晴信氏はリポートの中で鉄鋼大手各社について「08年度にかけて輸入金額が大幅に拡大し、各社の輸入超過額は拡大(輸出超過額は縮小)する」と指摘。五老氏は、円高進行により主原料価格の値上げインパクトが減殺されることと、内外価格差の是正や適正エキストラ獲得を目指す鋼材値上げ交渉は別問題で、値上げ交渉に求められる努力は減殺されないとしているが、08年度に1円の円高が連結営業利益に与える影響としては、新日鉄(5401.T: 株価, ニュース, レポート)は30億円前後、神戸製鋼所(5406.T: 株価, ニュース, レポート)は15億円前後、いずれも輸出超過額の拡大でプラス要因になるという。これまで輸出超過だったJFEホールディングス(5411.T: 株価, ニュース, レポート)は輸入超過に転じて10億円前後のプラス、住友金属工業(5405.T: 株価, ニュース, レポート)はニュートラルになると試算している。
このほか、円高メリット関連株としては、紙パルプ、電力、空運、陸運、食品などの業界が注目されている。ある証券系調査機関によると、1円の円高が営業利益を押し上げる額は、王子製紙(3861.T: 株価, ニュース, レポート)が6億円、日本製紙グループ本社(3893.T: 株価, ニュース, レポート)が7億円、日本航空(9205.T: 株価, ニュース, レポート)が22億円、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)が140億円。
中には、輸入商社のようにメリットをフルに享受すると期待されて物色された銘柄もあった。17日、18日と連日買い優勢となった東陽テクニカ(8151.T: 株価, ニュース, レポート)は、計測器の輸入販売を主体とする業態が評価されている。同社では「08年9月期の前提としている為替レートは、ドル/円が120円。このところの円高は原価軽減要因になる」(経営企画室)としている。
円高メリット関連株の多くは、昨今の原油高などで厳しさが増す原料調達の価格面でプラスの効果が生じることが注目されている。18日の市場では、ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油相場で先物価格が急落したことを受け、原油安と円高でメリットが生じる点を材料に空運株が物色されたのが目を引いた。
この点について、みずほインベスターズ証券のシニアエコノミスト、櫻井宏氏は「10%の円高進行が20%の原油価格の上昇を相殺する」とした上で、「輸出の部分はこの効果が消えるが、紙パルプ、食品をはじめ国内でビジネスが完結する企業は、コストが軽減する意味で円高メリットを享受できる」と指摘していた。櫻井氏によると、「円高のデメリット、メリットに関してはタイムラグが生じ、08年度については上半期が輸出採算の悪化で収益環境が厳しくなり、下半期に円高メリットで前半のマイナス分を取り返すようなシナリオが描ける」という。
もっとも、円高メリットが評価されるには、国内の需要が大きく落ち込まないことが前提となる。円高メリット関連株として第一に注目された紙パルプ株について、野村証券の紙パ担当アナリスト、松本裕司氏は「昨年の年末あたりから、広告のチラシをはじめ需要そのものが落ち込んでいる。さらに、業界では増設が進んだことで調整シナリオを描いているが、これを輸出増でカバーしようとしているなど、円高メリットと言って強気になれる状態ではない」とコメントしていた。
東陽テクニカでも「原価低減のメリットがあっても、ユーザーからの値下げ圧力が出てくるほか、円高を背景に景況が悪化した場合、需要の落ち込みが心配になる」と指摘する。
円高メリットは、企業のコスト削減につながるプラス材料になるものの、肝心の国内需要が盛り上がらなければ、その効果は限定的となりそうだ。
(ロイター日本語ニュース 水野 文也)
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