ECB、ユーロ高で介入圧力高まるものの当面は口先介入のみか
[フランクフルト 20日 ロイター] 対ドルで史上最高値を更新し続けているユーロ相場は、欧州中央銀行(ECB)に為替介入を促す水準に達しているが、ECBは今のところ口先介入にとどめる考えとみられている。
ECBと米連邦準備理事会(FRB)が経済における最優先事項に関する立場の違いを棚上げし、協調してドル安阻止に取り組むことを検討するには、ユーロが現在の1.54ドル付近から1.65ドルへと急伸する必要がある。
ドル下落が米国のインフレやユーロ圏の成長見通しだけでなく、世界の金融安定をも揺るがしかねない事態になれば、為替介入が現実的な選択肢になる。
為替介入するとすれば、日銀やイングランド銀行(英中銀)、スイス中銀の協力も必要になるが、今のところ各当局は、意表を突く動きは金融混乱を和らげるどころか深刻化させるだけとみているようだ。
ある主要7カ国筋は「市場は十分ボラタイル。われわれが予想外の行動をしてそれを助長する必要はない」と述べた。同筋は、昨秋の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が、声明の為替に関する文言を修正しなかったのはこうした主張があったためだ、としている。
一方、介入圧力がじわじわ高まっているとみる外為市場ウォッチャーは多い。
「介入が近づいているのは確実」とみるカリヨンの外為調査責任者、ミトゥル・コテチャ氏は、「為替市場のボラティリティは、最近数週間、とりわけここ数日で著しく高まっており、ドル暴落のリスクも出てきている」と指摘した。
それでも、コテチャ氏も他の通貨ストラテジストも、現段階でECBは介入の準備ができていないと考えている。
INGの為替戦略責任者、クリス・ターナー氏は「市場の状況について中銀の間で連絡を取り合っていても驚かない。しかし、われわれはユーロ高が1.60─1.65ドルまで進行するまで介入があるとは思わない」と話す。
ECBはとりあえず、ユーロ高への口先介入を強めるとみられている。口先介入で市場を制することができなければ、中銀の信認は傷つき、さらなる混乱をもたらす恐れがある。
タレット・プレボンのG7エコノミスト、レーナ・コミレバ氏は、口先介入が強まれば実際の介入が近づいていると見なすべきだが、実際は逆で、介入を迫られる状況を回避するための戦略だとみている。
<FRBとの立場の違い>
ユーロは今週に入って1.59ドル台で最高値を更新したほか、主要通貨バスケットに対する実効レートでも最高値を付けた。
ECBが記録的水準に高まったインフレを抑制するため政策金利を据え置く方針である一方で、FRBは景気支援に向け利下げしているため、ドルの下落は特に対ユーロできつくなっている。
しかし、ストラテジストの間では、介入がドル支援効果を持つためにはECBとFRBが現在の立場を放棄しなければならない、との意見が大勢。
バークレイズ・キャピタルの欧州担当チーフエコノミスト、ジュリアン・キャロウ氏は、それがECBが現段階で実際の介入より言葉による介入を志向する理由だと指摘。
「ECBのコメントは、市場の為替の動きに関する見方に対抗しようとしている。一方で、2つのリスクも示している」と述べる。
一例がビーニ・スマギ専務理事の18日の講演。専務理事は、市場は時にオーバーシュートし、世界経済に悪影響を与える可能性があるとの見解を示した。講演を受け、ドルは対ユーロで約2セント上昇した。
バンク・オブ・ニューヨーク・メロンの外為調査責任者、サイモン・デリック氏は、専務理事の発言はECBのユーロ高への懸念を反映しているとみており、「まさに介入前に出てくる言葉だ」と述べている。
<米国は動くか>
ただ、世界的な中銀の協調介入は、米国の協力抜きではあり得ない。
トリシェECB総裁は、米国が強いドル政策を維持する方針を示したと、繰り返し述べている。ECB理事会メンバーのメルシュ・ルクセンブルク中央銀行総裁は17日、ロイターに対し、ドルには「特別な責任」が付与されている、と述べた。
これらECB要人の発言について、バークレイズ・キャピタルのキャロウ氏は、ドル安によって中国などのアジア、中東の国・地域が事実上のドルペッグ制を放棄し、新たな混乱をもたらすのではないかというECBの懸念を反映している、と指摘する。
こうした懸念は、米財務省およびFRBをさらなるドル支援に突き動かす可能性がある重要な要素のひとつだ。
キャロウ氏は、FRBにとって最大の懸念は経済成長だとした上で、米国の姿勢が変わるためには、ドル相場の不安定さが米経済に与える悪影響の方がドル安による輸出へのプラス効果を上回っていると米政権が認識し始める必要があるとみているが、「そこに至るまでの道のりは長い」と述べている。
(ロイター日本語ニュース 原文執筆:David Milliken、翻訳:武藤 邦子)
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