トヨタの富士重への出資拡大、不足の技術者活用が狙い

2008年 04月 2日 19:19 JST
 
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 久保 信博記者 

 [東京 2日 ロイター] トヨタ自動車が富士重工業への出資拡大を決めた背景には、戦線の急拡大に人材の育成が追いつかないという事情がある。トヨタは富士重工の開発人員や生産技術者を活用することで、自動車の供給能力増強ペースを維持し、販売台数でほぼ並んだ米ゼネラル・モーターズを引き離す。

 富士重にとっても、トヨタが後ろ盾になることで、同社の先行きに対する投資家の不安を払しょくできるメリットがある。

 トヨタは創業から60年かけて年間販売台数を500万台に乗せたが、そこから900万台を突破するには10年程度しかかかっていない。年間60万台を販売する富士重クラスのメーカーが毎年誕生している計算で、トヨタは世界各地に次々と工場を建設して生産能力を増強してきた。2009年には自動車メーカー初の1000万台超えを計画し、開発や生産の効率化で対応しようとしているが、もはや「成長の速度に追いつけない状況にある」(HSBC証券・シニアアナリストの杉浦誠司氏)とみられている。

 特に不足しているのは、新車の開発技術者と工場を建設する生産技術者。トヨタは原点である中部地方から九州地方に進出して人材を確保したほか、東北地方を新たな生産拠点にして人材を取り込もうとしているが、自前でエンジニアを採用しても育成には時間がかかる。しかし、富士重工への出資比率を引き上げることで、富士重工の人材資源を活用できるようになる。UBS証券・シニアアナリストの吉田達生氏は「技術に定評のある富士重工の人材を、欲しいときだけに変動費的に借りてこられるのは大きい」と言う。

 関係強化のメリットは、富士重工にとっても大きい。軽自動車以外に有力な小型車がない同社にとって、日米欧で進む燃費規制強化の動きは中期的に懸念材料。足元で進む円高の影響も、400億円の営業利益しかない同社には大きなマイナス要因となりかねない。

 UBS証券の吉田氏は「富士重工は難問山積で、何かがはじければ株式市場で売り込まれる可能性がある。実際に富士重株をカラ売りしておきたいと考える市場参加者は少なからずいる」と言う。その上で「こうした課題をトヨタと一緒に解決していくことができる」と話す。たとえば小型車開発をトヨタ本体やトヨタグループのダイハツ工業(7262.T: 株価, ニュース, レポート)と進めれば、環境対応へのコスト負担が軽くなる。

 問題は、両社の企業文化が相いれるかどうか。国内証券のある自動車アナリストは「両社は車に対する哲学が根本的に違う。トヨタは80%の出来でよしとするが、富士重工は120%でないと納得しない」と指摘。「ダイムラーとクライスラーの例など、自動車メーカーの提携は文化摩擦のせいでうまくいかないケースが多い」と話す。

 (ロイター日本語ニュース 取材協力 林 藍子;編集 田巻 一彦)

 
 
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