液晶パネル市況が薄型TV3強の業績に影響も、09年はソニーに追い風
浜田 健太郎記者
[東京 4日 ロイター] 液晶パネルの市況動向が、シャープ、ソニー、松下電器産業の薄型テレビ国内3強の業績動向に影響を与えそうな雲行きだ。液晶テレビの中核部品である液晶パネルは、昨年5月から価格上昇が続き、パネル製造を手掛けるシャープの業績には追い風となった。
ただ、パネル需給は2009年には供給過剰により軟化するとみられ、シャープには試練となる一方、パネルを外部から調達するソニーに有利に働きそうだ。また、プラズマに加え液晶もパネルからテレビを一貫製造する垂直統合型を鮮明にした松下だが、プラズマ・液晶の両面作戦を選んだことで、経営資源の配分の面で難しい事業運営を迫られそうだ。
<シャープは外販戦略強化>
シャープは07年10─12月期の営業利益(519億円)が四半期ベースで過去最高となった。好調の主因はパネル価格の上昇だ。従来は5%程度だった液晶テレビの利益率は価格下落の影響で3%程度に低下したが、液晶パネルの外部販売の好調が同社全体の利益を押し上げた。
米調査会社ディスプレイサーチによると、液晶テレビの主力サイズである32型パネルは、2004年4月から07年4月まで一貫して価格下落が続いたが、07年5月から12月までは価格は逆に上昇した。他の画面サイズでも昨年5月までは概ね価格下落してきたが、昨年5月以降は値上がりするケースが多くみられた。ディスプレイサーチ上級副社長で日本事務所代表の田村喜男氏は、昨年の価格上昇の理由について「TFT(薄膜トランジスタ)液晶パネルの需給が、テレビ用・パソコン用を含めてタイトになった」と説明する。08年は液晶テレビの出荷台数が前年比3割増の1億台を突破するなど活況となる見込みで、田村氏は液晶パネルの需給動向のついて「08年前半まではタイトな状況が続く」(同)と予測する。
シャープは昨年7月末、世界最大となる液晶パネル工場を大阪・堺に建設する計画を発表したが、液晶テレビの世界販売シェアは06年、07年とも11%台(ディスプレイサーチ調べ)で伸び悩んでいる。自社の販売力だけでは埋めきれない巨大工場の生産能力を最大限に発揮するために選んだ戦略が「外部販売」の強化だ。
シャープは昨年12月、東芝(6502.T: 株価, ニュース, レポート)に液晶パネルを供給する提携を発表。今年2月にはソニーと提携し、堺工場を両社の共同出資会社(出資比率はシャープ66%・ソニー34%)で運営することで合意した。最近では、韓国LG電子(066570.KS: 株価, 企業情報, レポート)がシャープから液晶パネルを購入する計画を明らかにするなど、シャープの外販戦略は順調な滑り出しにみえる。
<パネル価格は08年後半に軟化も>
ただ、シャープに吹く追い風は時間とともに減速しそうだ。ディスプレイサーチの田村氏は、昨年価格上昇が続いた32型パネルは「2008年下半期のある時期には軟化する可能性が高い。08年第4・四半期(10─12月)は軟化の見込みで、2009年前半には供給過剰とみている」と予測。理由はパネルメーカーによる生産能力の拡大。ディスプレイサーチの調べでは、09年1─3月期から7─9月期にかけて、韓国LGディスプレー(034220.KS: 株価, 企業情報, レポート)(第8世代)、台湾の友達光電(AUオプトロニクス)(2409.TW: 株価, 企業情報, レポート)(第8世代)、シャープ(堺・第10世代)、韓国サムスン電子(005930.KS: 株価, 企業情報, レポート)(第8世代)などの新鋭工場が相次いで立ち上げる見込みだ。
<利益はテレビメーカーにシフト、ソニーに追い風>
この潮目の変化が有利に働きそうなのが、ソニーだ。JPモルガン証券アナリストの和泉美治氏は、パネルの需給動向の変化に伴い「利益はパネルメーカーからテレビメーカーにシフトしていく」と予測する。ソニーは08年3月期の液晶テレビ事業を赤字と予測しているが、和泉氏は09年3月期には黒字化する可能性が高いとみる。和泉氏は、薄型テレビ事業は今後、普及率が高まるにつれ、シェアが高いメーカーほど部品を安く購入できるメリットが出やすいと指摘しており、世界シェア2位(07年世界販売、ディスプレイサーチ調べ)のソニーはそうした条件を満たしているといえる。
ソニーは現在、サムスンとの合弁会社やサムスン本体、台湾メーカーからパネルを調達している。和泉氏は「サムスンは、パネル供給の顧客であるソニーをシャープに取られないようにするために、08年はパネル供給でいろいろ協力するのではないか」と指摘する。
一方、シャープについて和泉氏は「2010年3月期は厳しい年になる」とみる。「09年3月期は液晶関連の減価償却費はなだらかな伸びにとどまるが、2010年3月期に堺工場の減価償却が始まる。堺工場からのパネルでも、市場価格との見合いもあるのでソニーが高値で引き取ることはない」として、10年3月期は堺工場がシャープの収益にマイナスに寄与する可能性があるとしている。
<松下のプラズマ・液晶両面作戦、舵取りは難しさも>
松下電器産業(6752.T: 株価, ニュース, レポート)は、日立製作所(6501.T: 株価, ニュース, レポート)や東芝などとの共同出資で運営で運営してきた液晶パネルメーカー、IPSアルファテクノロジ(千葉県茂原市)を子会社化し、兵庫県姫路市に3000億円を投じて第8世代液晶パネル工場を建設する計画を発表。これまでのプラズマ重視路線から、液晶もパネルからテレビまで一貫して手掛ける垂直統合型を鮮明に打ち出した。
プラズマでは、垂直統合を生かしたコスト削減が奏功し、薄型テレビ市場における価格下落に耐えてきた松下だが、今後は、40型、50型といった大型サイズで、液晶テレビ陣営との戦いが激化する。和泉氏は「松下はプラズマが一定のシェアを守るためにも、値段を下げてくるだろう。当面は競争に耐えられるだろうが、(シャープの)第10世代工場の償却負担が軽くなった以降はどうか」と語り、液晶パネルの価格低下が進んだ場合に主力のプラズマは一段と厳しい状況に置かれる可能性を示唆する。その場合、松下はプラズマに見切りをつけ、液晶重視の路線を明確にするのか。プラズマと液晶の両面作戦を打ち出した松下だが、事業の舵取りは容易ではなさそうだ。
他方、3社の株価動向についてみると、そろって安値を付けた3月18日から直近までの戻り率は、松下が13.7%、シャープが13.2%、ソニーが11.5%となっている。液晶パネル市況の変化が各社の収益に与える影響は、現段階で株価にはまだ反映されていないようだ。
(ロイター日本語ニュース、浜田 健太郎記者 編集:布施 太郎)
© Thomson Reuters 2008 All rights reserved.
















