株安でもリスク回避の円買い目立たず、ユーロ/円が3カ月ぶり高値
[東京 8日 ロイター] 8日の東京市場は株安/債券高。日本株の上昇がやや速かったとの見方が広がりつつあり、海外勢などが利食い売りや戻り売りを出した。株式市場では、株価の底上げが図られたとして割安感が薄れてきた、との声も出ている。
米企業決算の発表が本格化する時期だけに、いったん上昇が止まると売り物に押されやすくなる。ただ、米国の金融不安が一服していることから、悲観論は高まっていない。為替市場でもリスク回避の円買いは目立たず、逆に、きょうも機関投資家からのユーロ買いがみられ、ユーロ/円は一時3カ月ぶりの高値を付けた。
<割安感薄れる日本株、利食い先行>
株式市場では日経平均が反落、午後には一時200円超の下げとなった。海外勢が主力株を売った、という。前日までの上昇幅が大きかったことから、朝方からいったん利益確定の動きが先行した。寄り前の外資系証券の注文動向が大幅な売り越しになったことも投資家のマインドを低下
させた。米アルミ大手のアルコア(AA.N: 株価, 企業情報, レポート)が発表した第1・四半期決算が低調だったことで、これから本格化する米企業決算への警戒感も強まった。
立花証券執行役員の平野憲一氏は「基調としては依然買い戻しのエネルギーがおう盛だ。日銀総裁人事は決着がつきそうだが、これは政治の不透明感を嫌う海外投資家にとって、プラス評価となって作用する」という。ただ、「気がかりなのは日経平均全体で株価収益率(PER)が上昇してきた点。国内企業業績は2008年度減益が予想されている。PERが上昇すると、割安感が薄れてくる可能性がある」とみている。
株価の下落以上に利益が低下すれば、PERは上昇することになる。米国景気の悪化、円高、原油高など収益環境が悪化していることを考えれば、企業側の2009年3月期見通しは慎重にならざるを得ない。PERが投資尺度として効きにくくなる可能性もある。
一方で「最近の海外機関投資家の物色先は、唯一無二の技術を持っている企業や、株価純資産倍率(PBR)で1倍を割り込み解散価値を下回る株価になっている企業のようだ」(みずほインベスターズ証券投資情報部長の稲泉雄朗氏)という。
直近の東証1部上場企業のPBRは1.44倍と世界の主要市場では最低水準まで低下している。「経済がデフレ状態にある場合や、倒産リスクが高まっている状態でない限り、容認できない水準だ。日本株は短期的に不安定だが、長い目で見れば割安圏といえる。すでに長期運用を得意とする独立系のファンドは割安株の仕込み時期とみて買いを入れ始めている」(準大手証券ストラテジスト)との声も出ている。
市場では「短期的に株価を押し上げる材料には乏しいものの、5―6月にも減税や利下げ効果で米経済がいったん持ち直すとの期待感があり、売り込むのも難しい」(大手証券)とみている。
<円債先物買い上げられる、割高目立つ>
円債市場は午後に入り、先物中心に上げ幅を拡大。中心限月6月限は一時、前日終値より50銭超高い139円97銭まで買われ、8日の高値を更新した。株価の一段安を受けて、市場参加者からは「トレンドフォロワーからの先物買いが影響している」(邦銀)との声が出た。先物に比べると現物の動きは鈍く、「先物だけが高い」(外資系証券)というゆがみがみられた。
ただ、投資家からの現物買いは着実に入っているようで、中期ゾーンには年金勢や銀行勢の買いが入り5年債利回りが3.5bp低い0.780%に低下。長期債にも年金の買いが指摘され長期金利は一時1.315%まで低下した。
国内証券の債券担当者は「3月米雇用統計が予想外に悪くなったが、株価と債券がまちまちに反応したように市場のセンチメントは定まっていない。短期的には米連邦準備理事会(FRB)の金融機関救済策などの効果が出ていることで不安感が遠退いているが、一方で米国景気の悪化は回避できない。この深刻度合いをどの程度織り込むかが焦点だ」と話している。
リーマン・ブラザーズ証券、チーフJGBストラテジストの山下周氏は「足元では、信用不安一巡から、株価、金利、ドルが反発している。ただ、信用不安沈静化に伴う株高と収益力による株高では、持続性が違う。両者がタイミングとして重なれば、大幅な相場反発につながるのだが、雇用情勢からみる限り、景気悪化は消費減速を伴ってこれから本格化していくとみるのが自然だろう。その場合、景気悪化が再び信用不安につながっていくケースも想定され、淡々と債券を買う局面だ」という。
<ユーロ買い継続、利下げ後ズレ観測も>
為替市場では、来週に予定されている米金融機関の決算発表待ちで様子見ムードが強い中、ユーロ買いが引き続き目立った。本邦投資家などの買いに支えられ、ユーロ/円は一時3カ月ぶりの高値となる161.75円まで上昇。つれて、ユーロ/ドルもきょうの下値1.5694ドルから100ポイント程度上昇した。1.57ドル半ばにあった一段のユーロ買いを誘発するストップロスを狙い、アジア系ファンドやヘッジファンドが外銀を経由してまとまった買いを出したという。対ユーロでのドル売りが波及する形で、ドル/円も朝方の102円半ばから前半へ下落した。
グリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長が、最近のクレジット危機はここ50年で最悪などと発言したと一部で伝わったことがドル売り/ユーロ買いのきっかけになったとの声も聞かれた。また、ポールソン米財務長官が7日、住宅問題で「政府は大規模な介入を行わない」などと発言したことが市場では話題となっている。一部ではドル売りの一因になったとの見方もあった。
ある外銀関係者は、ユーロ買いについて「1.57ドルから下値ではユーロ買いオーダーが並んでいたので下値に不安がなく、ユーロは買いやすかった」と指摘。そのうえで「7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でドル安の懸念を共有しようとの姿勢が見込めないとして、ドルサポートを期待していた参加者から失望売りが出た」という。
バンク・オブ・アメリカのグローバル金利・為替・商品戦略部チーフエコノミスト、藤井知子氏は「G7直前の10日の欧州中央銀行(ECB)理事会後の声明がインフレ抑制優先の姿勢を示すとみており、欧州当局がユーロ高懸念をG7の場で表明するのは困難」と話している。バンク・オブ・アメリカはこれまで今年7月と9月の2回の利下げを予想していたが、ここにきて9月の1回のみの利下げ予想に変更しており、藤井氏は「当面の金利差期待はユーロ/米ドルにプラス材料」という。
(ロイター日本語ニュース 橋本 浩記者 編集:佐々木美和)
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