日銀は機動的運営に政策転換、潜在成長並み見通しもリスク強調

2008年 04月 21日 19:42 JST
 
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 [東京  21日 ロイター] 日銀が30日に発表する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、今後2年間の景気について前向きな循環メカニズムは途切れないとしながらも、従来の成長拡大路線を修正し1%台半ばの潜在成長率近辺の緩やかな成長経路をメーンシナリオに想定するとみられる。

 ただ世界経済減速や金融市場不安定化など不確実性が相当高まっていることも強調、これに伴い、金融政策の方向性はこれまでの金利正常化一辺倒の路線から、上下両方向のリスクに対応できるよう緩和方向への対応も含めた機動的な政策運営方針に転換する可能性が高い。

 <潜在成長率並みの成長と不確実性の高まりがメーンシナリオに>

 世界経済の先行き不透明感が強まる中で、日銀は展望リポートにおける先行き2年間の見通しを立てづらい状況に直面している。複数の幹部は「足元は需給ギャップがほぼゼロとなる状態まで景気が減速し、不確実性も高まっており、メーンシナリオを策定するにも自信の程度はそれほど高くはない」と打ち明ける。 

 そうした状況で出した結論は「潜在成長率並みの緩やかな成長経路をたどる」というもの。国際通貨基金(IMF)が発表した世界経済見通しは、米国景気が今後2年間0.5─0.6%程度の低成長が続く「景気後退シナリオ」を明確にしたにもかかわらず、新興国経済はそれほど影響を受けず、世界経済全体で3%台後半の成長を見込んでいる。

 日銀内では「中国の過熱気味の成長持続から、世界経済はおそらく4%程度の成長を維持できる見通し。日本の輸出への影響も限定的」とのコンセンサスがあり、輸出、そして生産という景気波及メカニズムは維持できると見ている。また、国内経済減速の最大要因である建築基準法改正の影響や原材料高によるコスト高も、時間の経過とともに下押し圧力は減衰するとみているため、次第に景気減速が収まりつつあるとの見通しをたてている。

 このため、潜在成長率程度の1%台半ばから後半の緩やかな成長が続くとの見通しをメーンシナリオにすえるとみられる。

 一方、こうしたシナリオへの下ぶれリスクは相当高いという認識もコンセンサス。「国際金融市場の動揺は米当局のレポ市場へのテコ入れや証券会社への資金供与など一連の措置により小康状態を保っているが、市場機能自体が改善したわけではない」(複数の幹部)という。住宅市場の底入れが見えないために米景気の一層の悪化も予想される。これらが、どの程度日本に影響を与えるかは不確実な情勢。また、資源高に伴う物価上昇も景気にはマイナスと判断している。緩やかな成長軌道をメーンシナリオに据えるものの、「下振れリスクは相当高い」(多くの幹部)との認識も盛り込む見通しだ。

 <当面は緩和方向も含め政策対応、金利正常化への復帰余地も>

 こうした状況下、金融政策対応は利上げだけでなく、緩和方向への対応も可能な、上下両方向への対応に方針転換する見通し。従来の展望リポートでは「持続的成長軌道をたどるのであれば、金利水準は引き上げていく方向にある」と利上げ方針のみを明確にしていた。しかし日銀では、世界経済の一層の減速、あるいは減速せずに資源価格の一段の上昇が起きた場合、両方のケースで国内景気が悪化する可能性も念頭に置いている。その場合には企業金融への配慮など日銀としても「様々な道具立てで対応することが可能」(幹部)だとしている。また「0.5%というわずかな余地であっても無視はできない」(複数の幹部)など利下げも排除しない方針を打ち出している。 

 ただ、あくまでも今後2年間を視野に入れたメーンシナリオは、当面の景気減速後は緩やかな成長軌道へ回復していくというもの。したがって、金融政策もいずれ正常化路線へ復帰する余地は残しておきたい考えだ。

 白川方明総裁が「不確実性が急きょ晴れてくるというシナリオもありる」と指摘したように、金融機関の決算などに対する見方が楽観的となり「不確実性」さえ晴れれば、年後半以降は景気が持ち直すアップサイドリスクも捨てきれないとの声は日銀内にも根強い。さらに白川総裁は「(今は)下振れリスクを中心に米国経済を見てはいるが、常に複眼的に見る必要があるという意味において、やはり上方向のリスクも意識する必要がある」(9日の会見)とも指摘する。

 展望リポートには、金融政策運営に関し、当面の景気下ぶれリスクとその先の上ぶれリスクという両面に適切に取り組むことができる政策方針を盛り込むことになる見通しだ。

 (ロイター日本語ニュース 中川 泉)

 
 
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